episode2-1【おいでませ大和】
【キャラ紹介】
名前:アレンダー・アルモード
年齢:17
性別:女
身長:156cm
体型:スレンダー
髪:黒髪のロングストレート
眼:燃えるような赤色
服装:黒のパーカー、ホットパンツ、黒のマフラー
趣味:写真、散歩、スポーツ全般
特技:運動、特に陸上競技。
好きなもの:子供、運動、家族
苦手なもの:甘い物、警察、刃物
備考:目つきが悪い
ロシア出身の女の子。
見た目によらず割と温厚で、客観的に物事を見る。
スマホに見知らぬアプリがあったので起動してみたら
ゲームの中に入ってしまった、とても不運なこの小説の主人公
【謁見!マカロニアの女王様!】
城。
???「あら、まぁ。
それではあなたは、地球からこのゲームの世界に入り込んでしまったプレイヤー様だと?
そのようなこともあるのですねぇ。」
商人に連れられ、街の中に入り、その中でも一際大きな建物……
というか明らかにお城といった風体の建物の中に通され、よく分からない大きな部屋に通され……
そしてその部屋に居たやけにおっとりしてそうな、それでいて高貴な雰囲気を漂わせる女性に
ここに行き着いた過程を話している……というのが、今の現状。
???「あら、そういえば自己紹介がまだでしたねぇ。
私はここマカロニア王国を統べる女王、マカローン・ホイップルと申します。
気軽に女王とお呼び下さい♪」
階級名で呼ばせるあたり全く気軽ではないが、そこは言及しないでおこう。
今はそれより、いくつか質問がしたい。現状把握のためにも。
「えっと……女王様、いくつか質問させていただきたいのですが―――」
女王「あらぁ!様付けなんていらないわぁ。敬語も使わなくて結構ですよ。
あなたもあまり敬語は得意な方じゃないのでしょう?」
「……えぇ、まぁ、育ちが悪いもんで。
じゃあ質問させてもらうけど、こういう事は過去にもあったのかな?」
ちょっと出鼻をくじかれつつ、挫けず質問を投げかける。
こういう事っていうのは、プレイヤーがこの世界に入り込む、といった現象のことだ。
女王「いいえぇ、今まではこんなことなかったんですけどねぇ……
アレンダーちゃんがト・ク・ベ・ツなのかな?なんてね、うふふ♪」
うわっ鬱陶しい。私の苦手なタイプだ。もう帰りたい。
いや帰れないから困ってるんだけどさ。
「…えっと、今まではなかったんだね?
じゃあ何か原因とか思い浮かぶかな?あとは、帰る方法とか。」
女王「原因……はちょっとすぐには思い浮かびませんねぇ。
ご存知の通り、本来貴方方の世界と私共の世界は、文字通り次元が違いますので~。」
確かに、と軽く頷く。
本来であれば私が住んでいる地球は所謂三次元の世界であり、
女王達ゲームの住人が住んでいる世界は、二次元の世界だ。
本来は交わらないはずの、次元違いの世界。
それが今はなぜか、交わり合ってる、ということになる。
…いや、正確には私が二次元の世界に入り込んでしまった、と言ったほうが正しいか。
人によっては羨む状況かもしれないけれど、当事者にとってはいい迷惑だ。
女王「…あるいは、貴方方の世界か…それともこちらの世界か…あるいは両方が、
次元を超え、お互いの世界に近づこうとしたのかもしれませんねぇ。
惹かれあうお互いの世界……あぁ、素晴らしいわぁ♪」
「………。」
まぁ最後の一言は無視するにしても、お互いの世界に近づこうとした…か。
誰が、何のために、どうやって。そういった疑問は浮かぶが……。
まぁ、それは今考えたところでわかるはずもなし……か。
「……で、もしそうだとしたら、私はどうやったら帰れるのかな。」
女王「う~ん、そうですねぇ……至極単純な話をすれば、
来た時と同じ状態になれば、帰ることも可能かと思いますねぇ。」
「同じ状態って……世界と世界が近づき合うってこと?
そんなのいつ頃近づくか、とか分かるものなの?」
女王「うふふ、わかりませんわぁ♪
明日かもしれませんし、10年後かもしれませんし……
のんびり待つしかないですねぇ。」
じ、10年……流石にそれは勘弁願いたい。
帰ったら『行方不明の少女、10年振りに見つかる』とかニュースにされそうだ…。
「…え、えっと……他にはないのかな……」
女王「あらぁ、のんびり待つのはご不満ですか?ざぁんねん……。
そうですねぇ…例えば、大地が平坦ではないように、
同じ世界でも、場所によって二次元に近い場所、三次元に近い場所……
というのがあるかもしれませんねぇ。」
「…なるほど。つまり、この世界で最も三次元に近い場所を探し当てれば……」
女王「あるいは、帰れるかもしれませんねぇ。」
この世界中から、一番三次元に近い場所を探す……
それはきっととても長く、辛い旅になるだろう……
……でも、ただじっとして待ってるよりはいいよね。
私は行動派なんだ。
「…うん、オッケー。了解したよ。
じゃあ私はその場所を探すため、この世界を旅することにする。」
女王「あらぁ、思い切りが良いのですねぇ。
もう少しお話し相手になっていて欲しかったのだけれど…残念だわぁ。
……うふふ、でも、応援してますわ♪」
「ん、ありがとうね。
じゃあ早速準備しないと……」
女王「あら、あらあらあら、お待ちになって旅人さん♪」
踵を返した私を、女王が呼び止める。
振り返ると、女王はいつの間にか手に何かを持っていた。
女王「この世界に降り立ったPCは、まず私からの選別をお受け取りになるのが通例ですわ♪」
「……ん、じゃあ受け取っておこうかな。」
無邪気なその笑顔に小さく微笑みを返し、女王の前まで戻る。
そうして最初に渡されたのは、握りこぶし大の石。
「これは……?」
女王「これは魔探石といって、周囲の魔力を探知すると淡く光る石ですわぁ。
三次元に近い場所を探すなら、きっと役に立つと思いますよぉ♪」
「え、そうなの?」
女王「えぇ♪アレンダーちゃんは二次元と三次元の一番の違いってなんだと思いますかぁ?」
「……二次元には美男美女しかいない…?」
女王「あらあらぁ、アレンダーちゃんも凛々しくて格好いいわよぉ。
あら、女の子だから可愛い、のほうがいいかしらぁ?
まぁとりあえず今回はハ・ズ・レ♪正解は―――魔法があるかないか、ですわぁ。」
「魔法……」
ここに来る前に見た、行商人と化物の戦闘を思い出す。
そういえばあの時、行商人は手から炎を出してたっけ。あれが魔法……
「……あ、そうか!二次元には魔法があって、三次元には魔法がないということは…!」
女王「えぇ、その通り。三次元に近い場所は、きっと魔力が薄くなってるはずですわぁ。
それをこの石を使えば、見つけられるってわけですねぇ。」
「なるほど……これはすごく助かるな。ありがとう。」
女王「いえいえ♪さぁ、まだ選別はありますよぉ……アリエールゥ?」
???「はーいただいま!」
何だその綺麗になりそうな名前。
と思わずにはいられないけど、今は飲み込んでおく。
女王の呼びかけに現れたのは、手乗りサイズの小人……いや妖精だった。
女王「見知らぬ世界での旅は、心細いでしょう?
なのでしばらくはこの子を付き人として連れ歩くのはどうでしょう~。」
アリエール(以下アリ)「こう見えてけっこー役立ちますよ私?」
そう言ってアリエールと呼ばれた妖精は、フンスと胸を張る。
…なるほど。つまりこの子はあれか。ガイド係というやつか。
某緑の服の勇者の周りを飛んでる、あの妖精みたいな感じなんだろう。
「ん、よろしくアリエールさん。
まだこの世界のことよく知らないし、色々教えてくれると嬉しいな。」
アリ「えぇ、えぇ、もちろん!
妖精一の賢者と呼ばれた私が、手取り足取り腰取りお教え致しましょう!」
「……いや、手足だけでいいけど。」
どうしよう、クーリングオフしようかな。この妖精。
「うふふ、ちなみに選別の返品は受け付けておりませんわぁ♪
では最後にこちらがこの世界の通貨、Gになりますわ。
1000Gをお渡ししますので、ぜひ旅の準備にお役立てください♪」
「へぇ……これがお金……」
女王から巾着袋を受け取り、中の通貨を手に取る。
大きさは直径4cmくらいだろうか。所謂コインと同じ形をしている。
色は二色、金色と銀色だ。金色の方は表面に50、銀色の方は1と掘られている。
重さも若干金色の方が重いし、おそらくこの掘られている数字は貨幣価値だろう。
単位は50と1しかないのかな。だとしたら大金を持ち歩くのは辛そうだ。
「……ん、ありがとう。助かるよ。
……それじゃあ…」
女王「えぇ♪
…それではこれより、あなたの長い長い旅が始まります。
それはとても険しく、時に辛く、時に厳しいものとなるでしょうが…
それでも貴方が希望の光を失わず、確かな意志を持って前に進んでいけるよう、
私はここで願い、そして祈りを捧げましょう………
―――頑張ってくださいね♪」
「…えぇ、数々の助言、ありがとうございました。女王様。」
アリ「それでは女王様!私、行ってまいります!」
別れの挨拶とともに、踵を返す。
―――絶対に地球に帰ってやるという、確かな決意を胸に秘めて。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【城下街で旅の準備を!】
「うーん……旅と言ったらまず野宿用のテントだろ……あ、保存食もあった方がいいよなぁ…
あとは防寒用にマントと、火を起こすために火口箱と…あ、それに水筒だな。うん。」
城下をアリエールさんとぶらぶら歩きながら、旅をするために必要なものを思い浮かべる。
昔ネットでちょっとだけ齧ったアウトドアの知識が活きてるのか、割とポンポン頭に浮かぶ。
やっぱりインドアよりアウトドアだな。今回のでそれがよくわかった。アウトドアすごい。
アリ「アレンダーさん!アレンダーさーん!」
「そんな耳元で叫ばなくても聞こえてるよ……何?」
そうやって色々な物を思い浮かべながら歩いていると、不意にアリエールさんが呼びかけてくる。
いや、呼びかけてというか、もう鼓膜を破る勢いだったけど。
アリ「…何?じゃありませんよ!クールな反応なんか返しちゃって!
それでクールビューティのつもりですか!その蔑んだ目たまらないです!」
「……要件を先に言ってくれる?」
アリ「はっそうでした。アレンダーさんさっきから色々必要な物を呟いてますが、
大事な物を忘れてますよ!とっても大事な物を!」
「…大事な物?」
アリ「そうです!この世界を生きる上で絶対に必要なものであり、
これ無しで旅に出るなんて正気の沙汰じゃないとまで言われる必需品……
……武器と防具です!」
店員「いらっしゃいませー。」
アリ「というわけでやってきました武器屋さん!
さぁ!ここでアレンダーさんにぴったりの武具を探しましょう!」
「いやというわけでじゃなくて……なんか気付いたら移動してたんだけど…」
アリ「魔法です!ル○ラです!そういうことにしておいてください!」
「そういうことって……いや、まぁ、いいや。うん。」
これ以上踏み込むと面倒くさそうだし。
それより武器……武器、か……
アリ「何がいいですアレンダーさん?やっぱり私的には小柄な女性が大剣とか大斧とかを
ブンブン振り回すのにロマンというかそういうものを感じてしまいますね!」
「刃物は嫌だ。」
アリ「えぇーっ!イイじゃないですか刃物!戦い終わったあとに刀身をペロペロ舐める
少女とかもう最高にエロティックじゃないですか!!
まぁ私からしたら女性がなにか舐めてるってだけでもう妄想がいろいろ捗ってですね」
「…刃物は、嫌だ。」
腹の底から出るような、強い嫌悪を伴った声で再び呟く。
……刃物には、良い思い出がない。
アリ「……むぅ、わかりました!では刃物は無しで!
となると鈍器とか弓とかですかねー。
店員さん!武器の素振りオッケーですかー?」
私の心情が伝わったのだろうか。
アリエールさんは、刃物以外で私が使えそうな武器を見繕ってくれた。
アリ「あそこの柱に向かって打ち付けるくらいなら言いそうです!
じゃあまずは……この巨大ハンマーで!」
そう言ってアリエールさんが指さしたのは、私の身の丈の二倍はあろうかという鉄の槌。
私はその槌の柄に手を掛ける。
アリ「はっはっは、まぁ流石に女性にあんな重そうな武器は無理でしょう!
ただ私が力むアレンダーさんのそのいじらしいお顔を拝見したかっただけなので
無理せず違う武器に……」
ひょいっ
アリ「……ひょいっ?」
「………持てたけど。」
アリ「……えっ!?嘘!?持てた!?そんな馬鹿でかいのを!?」
「そんな重いとは思わないけど……まぁ片手で持つのはさすがに厳しいけどさ。」
アリ「え、えぇぇ……えぇぇ……アレンダーさんまさかの怪力キャラ……
人は見掛けによらないものですね……くぅ、いじらしいお顔を見たかった……」
「……で、このハンマーは君に振り下ろせばいいのかな。」
アリ「あちらの柱でお願いします!」
何やら邪な顔でブツブツ悔しがる妖精にそう脅しをかけつつ。
指を指された柱に、思いっきり槌を振るってみる。
バキッ
ドスーン
「……バキ?ドスーン?」
なんか聞きなれない音が響いたような……
そう思ってキョロキョロすると…私の真後ろに、槌の先端部分が落ちて…
というより自重でちょっとだけ地面に埋まっていた。
手元の槌を見ると、そこには柄だけになった哀れな姿が。
アリ「………。」
「……‥。」
アリ「……やっ!ややややややだなー!店員さん!
この武器耐久度あと1しかなかったですよー!
素振りしたら壊れちゃいました!」
店員「えぇ?そんなはずはないんだがなぁ……」
アリ「か、管理はちゃんとしなきゃダメだぞ☆
さささぁアレンダーさん!気を取り直して次はこちらの長弓で!」
「あ、あぁ……」
ちょっと困惑しつつ、指さされた長弓を手に取る。
弓は扱ったことないけど……たしかこうやって弦を引いて……
耐久度30/30 → 18/30
アリ「あっ……ちょっ………」
「んー…もうちょっと引いたほうがいいよな…よいしょっと……」
耐久度18/30 → 1/30
アリ「いやー!ちょっとまってアレンダーさん!
ストップ!ストーップ!」
「んっ……何?」
アリ「弓はやめときましょう!アレンダーさんには弓以外で似合う武器がきっとあります!」
なんか超焦った様子でそう説得してくるアリエールさん。
…?なんかまずいことでもあったのかな…?
まぁとりあえずは言う事を聞いて、私は弓を置いた。
そうしてまたアリエールさんが指差す武器を手に取り、素振りして、
手に取り、素振りして……というのをしばらく続けて……
ようやく私の武器が決定した。
アリ「アレンダーさん……」
「うん。」
アリ「…あなたに、武器は、いらない………!」
「……うん?」
アリ「その怪力があればモンスターなんて殴り飛ばせちゃいますから……!
だからもう武器を手に持つのはやめましょう……!」
「えっでもちょっと待っt」
アリ「いいえもう決定!決定です!さぁ次は防具ですよ!
早く店を出るんです!お邪魔しましたー!」
店員「おや、結局何も買っていかないのかい……ってなんじゃこら!?
試用品の武器の耐久度が、全部1に……!?」
アリ「お邪魔しましたーーーー!!!」
店員「おい!こら!ちょっと待てええええええええ!!!」
店員さんの怒声を背中に受けながら、アリエールさんに引っ張られ外に出る。
……もしかしてこれ、私が悪い?
アリ「はぁ…はぁ…や、やってきました防具店……
さぁ、ここでアレンダーさんにぴったりの防具ゲホォッ!」
「だ、大丈夫?とりあえず少し休みなよ…」
アリ「い、いえ、大丈夫、大丈夫です。
ていうかアレンダーさんこそなんで平気そうなんですか…」
「わたしはまぁ、陸上経験あるし、あの程度だったらそんな疲れないから…」
アリ「な、なんという鉄人……いやしかし陸上をやるアレンダーさん…
きっと夏場はたくさん汗かいて服の中とかすごいムレムレで…
汗と少女のむせ返るような匂いが……」
「…アリエールさん?おーい?」
アリ「うっはーテンション上がってキタァァァァァァ!!
さぁアレンダーさん!防具選びましょう防具!」
「…?お、おう……。」
なんか一人でブツブツつぶやいたと思ったら急に元気になりだした。
妖精っていうのはみんなこういうもんなのかな……
アリ「うーん、しかし格闘を武器にする以上、防具もあまり動きを阻害しない、
軽量のものの方が良さそうですねー。」
「まぁ、そうだね。金属鎧とかはちょっと……
布製のがあればいいんだけど。」
アリ「くぅ…日差しに照りつけられてムレにムレるアレンダーさんの金属鎧の
中に入り込んでひたすら深呼吸したかった……!」
「……ど変態……」
アリ「あぁ!もっと罵って!
…っとご褒美はここまでにしまして……
布鎧……魔法使い用の物ばかりですねぇ。」
「ほんとに変態だな……
ていうか装備って、えっと…ジョブ?によって着れたり着れなかったりするの?」
アリ「いえいえ、基本的にどのジョブでも全ての武器、防具を装備することが可能です。
ですが、装備する武器や防具によってそれぞれ補正がつくのですよ。」
「補正……?」
アリ「えぇ、例えば武器で言えば、槌や大剣、斧はSTR…筋力に補正が付き、
短剣や弓はDEX…器用さに、杖や本などはINT…魔法力にそれぞれ補正が付きます。
ちなみに格闘の場合は攻撃速度に補正が付きますねー。」
「あぁなるほど、例えば前衛職をやるなら杖よりも剣の方が向いてるし、
逆もまた然り……ってことだね。」
アリ「そのとおり!そして防具の場合、金属鎧はダメージ減少率が高く、
革鎧の場合は地形の影響を受けにくく、布鎧の場合は魔法抵抗力が高まる…といった感じですね。
ちなみに行動速度にも補正がかかり、布鎧>革鎧>金属鎧の順に早く動けます。」
「うーん、前衛に出るんだったらダメージが減少できる金属鎧のほうがいいし、
逆に後ろにいるんだったら物理攻撃よりも魔法攻撃の方が飛んでくるだろうから、
布鎧の方がいいって感じか……地形の影響っていうのは?」
アリ「足場の悪い場所…つり橋の上や、毒沼。あとは砂漠や氷河など、
そういった場所ではその地形に応じた影響を受けるのです。
革鎧はそういった地形に上手く対処ができるので、影響を受けにくい、という事ですね。」
「ふむふむ……うーん、話を聞く限りだと革鎧が一番合ってるのかなぁ。
でも行動速度は速いほうがいいよなぁ……うーん……」
アリ「鎧の行動速度補正は馬鹿になりませんからねー。
それに布鎧はごくたまーに回避率上昇の効果を持つものがありますから、
前衛の使用に全く向かないというわけではないです。
魔法抵抗力の上昇だって前衛でも十分嬉しいですしねー。」
「んー……じゃあ、この店に回避率上昇効果のついた布鎧があったら買う感じで…
無かったら革鎧にしようかな。」
アリ「了解です!ではアリエール!ちょっくら探してまいります!」
「ん、お願いするよ。」
そう言って、ビュンと店内を飛び去る妖精を見送った。
~アリエール鑑定中~
アリ「アレンダーさん!アレンダーさんアレンダーさーーーん!!!」
「……おかえり、とりあえず耳元で叫ぶのやめてもらえるかな。」
暫くの後、帰ってきて私の名前を叫ぶ妖精を耳から引き剥がす。
キーンとする。耳が痛い。
アリ「ありました!ありましたよー!」
「…回避率上がるやつ?」
アリ「そう!そのとおり!こっちです!」
なんかやけにテンションが上がった様子で、アリエールさんは私を引っ張る。
回避率上昇ってそんなにレアなもんなのか……?
そうテンションの高さに疑問を抱いていた私だったが、その疑問は次の瞬間、
まるっと氷解することになった。
「……なにこれ。」
アリ「布鎧です!」
「…この砂漠の踊り子みたいなのが?」
アリ「はい!正真正銘!回避率上昇エンチャント付きの!布鎧です!」
「………。」
私の目の前にあったのは、アラビアン宜しくなやけに露出度の高い…というか扇情的な衣装。
確かに布鎧の特性的に防御力は考えなくて言いといっても、これはあんまりではないかと思う。
「……こんなの着て歩いてたら、私ただの痴女なんだけど。」
アリ「いやいやいやいや!いいじゃないですか!絶対似合いますって!
そのクールな美少女フェイスが恥辱に濡れて赤く染まる様や……」
「おい頬撫でるな。殺すぞ。」
アリ「この慎ましやかなお胸が、わずか一枚の布であわや見えるか見えないかという
瀬戸際を彷徨う様や……」
「おい胸に飛び込んでくるな。殺すぞ。」
アリ「このスベスベもちもちの太ももが股布から覗くエロティック!ギガントエロス!
その欲情を唆る光景!考えるだけであぁ……もう……どうにかなっちゃいそう!!」
「おいっばっ太ももに頬ずりするな!殺すぞ!」
アリ「うへへ、そんなこと言わず……あ、ホットパンツの隙間からなにかピンク色のものg」
「おらぁっ!!」
ガシッグググググッ
アリ「いやー!鷲掴みはやめて!出ちゃう!中身でちゃいますから!
妖精に有るまじきグロテスクな光景見せちゃいますから!」
「二度と、私に、触れるな。OK?」
アリ「お、オーケーオーケー。触れない。妖精嘘ツカナイ。
……あ、アレンダーさんの吐息が熱くて私ちょっと興奮しt」
「ふんっ!」
アリ「いやああああああああああああああ!!!」
その日、マカロニア中に妖精の絶叫が木霊した。
アリ「うぅ……ひどい目にあいました……。」
「自業自得だろ。結局あの鎧買う羽目になったし……」
アリ「まぁまぁ、大変お値打ちな品でしたからねー。
それに先程も言ったとおり、アバターは日常用と戦闘用で手軽に
切り替えることができますので、あの鎧を着るのは戦闘時だけで大丈夫なのですよ。」
「ホントだったら戦闘の時ですら着たくないけどな……。
まぁ無事に旅を進めるためには仕方ない……。」
アリ「そうそう、背に腹は代えられないのです。
それより、もうそろそろ買い物は済んだんじゃないですか?」
「ん……あぁ、そうだね。さっきのランタンと油で全部だな。
ということは……。」
アリ「えぇ!ついに始まりますよ!私と!アレンダーさんの!
どきどき!二人だけの☆淫らな旅が!」
「じゃあ私行くから。ばいばい、またいつか。」
アリ「あぁ!おいてかないで!放置プレーなんてドキドキしちゃう!
…あっ歩調早めないで!ごめんなさい!置いていかないでええええ!!!」
……こうして、私の旅は始まった。
やけに五月蝿い、そして頭の中がピンク色の、旅の相棒を連れて。
つづく
【キャラ紹介】
名前:アリエール
年齢:ヒミツ
性別:女
身長:20cm
体型:妖精の中では良い方
髪:明るい緑色のショートツインテール
眼:大自然の緑色
服装:木の蔓の意匠が施されたクロース
趣味:美少女と一緒に入浴、美少女の衣類の中に潜る
特技:セクハラ、妄想、移動魔法
好きなもの:美少女、美女、プリン
苦手なもの:爬虫類、アレンダーさんの握りつぶし
備考:セクハラ大魔神
マカロニアのユニークNPCの妖精。
元々はPCの旅を助けるヘルプ要員。
黙っていれば美少女なのに、言動がすべてを台無しにする残念妖精。
現在アレンダーの寝込みを襲う作戦を画策中。