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この箱庭よりも大切な人に  作者: 蒼山
第二部 第六章
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レチタティーヴォ ~台風の目~ Ⅰ

挿絵(By みてみん)

 あれから三日はあっという間だった。

 クリスの体は不自由なく動けるようになり、多少の戦闘ならば可能だろう。

 だが大型竜相手となると不安で仕方が無い。

 重い気持ちを溜め息で誤魔化して、クリスは準備をして城へ向かった。

 それと、彼女にはもう一つ気になることがある。

 フォウが二日前から姿を見せなくなったのだ。

 確かにあの青年は色々な街を旅しているのだから去ること自体は不思議では無い。

 けれど一言も言わずに去ってしまうのは少々おかしい。

 何かがあったと考えるのが妥当だが、一体彼の身に何があったと言うのか。

 クリスやエリオットではあるまいし、彼が問題事を抱えていたという話をクリスは全く聞いていない。

 城ではいつもの馬車より少し大きめのものが待機していた。

 荷を持って乗り込むと、今日はヘアバンドに近い煌びやかな布で髪を巻いてポニーテールを飾っているエリオット。


「お待たせしちゃいました?」

「いや、まだ来てない奴がいるから問題無い」


 いつも通りヨシュアとガウェインは馬車の先頭で手綱を握っていた。

 つまり……新しい護衛がまだ来ていないと言うことになる。


「追加された人員は私の知っている人ですか?」

「覚えているかどうかは知らないけど、見たことはあるはずだぜ」


 とエリオットがそこまで言ったところで、後ろの馬車の戸が勢い良く開いた。


「お待たせしたッス!!」


 ぜぇぜぇと息を切らして現れたのは、茶色の長髪をうなじのところで一つに束ねている青年。

 黒い名残羽に三白眼、見覚えがあるもののどこで見たのかまでは思い出せず首を捻るクリスにエリオットが紹介した。


「お前のアシスト役として部隊を急遽転属させた、ガイア・ヴィドフニルだ。覚えてないか?」

「ヴィドフニル……レイアさんの、弟さん?」

「そうッス! あまり表で仕事してないんで会うこと無かったッスけど、一応軍に居るんスよ!」


 敬語が敬語になり切っていない口調の黒装束の青年が、元気良く馬車に乗り込んでくる。


「こいつの居場所は本来暗部で、扱う術もそういうものがメインなんだ。多分二人で組めばそう苦戦はしないだろ」

「特技は影縫い! 苦手な物は妹! よろしくッス!!」


 軽快な自己紹介を聞いていると、とても暗部の人間とは思えない朗らかさ。

 彼が差し出してきた手をぎゅっと握ってクリスは挨拶を交わした。

 ガイアが椅子に座ったのを小窓からヨシュアが確認し、間もなく馬車は走り出す。

 ガタガタと音を立てて揺れる車輪に相変わらずお尻が痛いと思いつつ、クリスは男二人の会話を聞いていた。


「この前また妹が荒ぶってたッスよ、今度は何したんスか王子はー」

「聞かないでくれよ、そこは……」


 楽しそうな二人を見ていてクリスにもようやくガイアのことが記憶に蘇ってくる。

 そういえば昔に北の滅びた村で出会ったのは彼だ。

 その時も同じように、位の差を感じつつもどこか仲が良さそうに見えた覚えがある。

 彼らの会話を流し聞き、クリスは腰からベルトで下げている長剣を抜いてその刀身を確かめる。

 先日以降クリスの手元ではなく城に預けられていたこの剣だが、また任務に就くということでクリスに返却された剣。

 竜の口の中で、今まで使っていた剣の代わりに突如現れた不思議な赤い刀身は、血の色のように鈍い赤だった。

 城側からは、調べたけれど特に異常の無い、けれどやたらと斬れる剣だ、と報告を受けている。


「何か不気味な色の剣ッスね、それ」


 クリスの手元に気付いたガイアが、エリオットとの会話を切って声を掛けてきた。


「そうですね……実際不気味ですよ。何でここにこうして存在しているのかも分からない剣ですから」

「ま、なるようになるさ」

「適当にやってどうにかなるのは王子だけッスからね! 周囲もそれでどうにかなると思わないで欲しいッス!」


 全くだ。

 彼は立場上、大抵のことはどうにかなってきたのだろうが、平民であるクリスはそうもいかないことばかりだった。

 ガイアの指摘に大きく頷いて、クリスはフォウのことに思考を戻す。


「どこに行っちゃったんでしょう……」


 全く見当の付かない、彼の消息。

 嫌な予感を振り払うように少女はその碧い瞳を閉じた。




 モルガナとの中間地点くらいにあたるリャーマに着くのは前回よりずっと早く、馬車から降りてはせっせと準備をし始める一同。

 リャーマの長との挨拶は滞りなく進み、ほっとしたところでしばらくの滞在場所となる洋館に荷を運んだ。

 リャーマはエリオットを泊められるような建物が無い、と言うことで彼の訪問が始まってから建てられた物らしく、とても綺麗で、そしてこの街にはあまり似合わない外観である。

 東の中では比較的王都に近いこともあってか、リャーマの待遇はモルガナとは違って良さそうだった。

 荷物を各部屋に運び終えたところで館にチャイムが鳴り響く。


「……行く」


 ヨシュアが玄関まで行ったので、クリス達は中央部分の広い部屋で一旦腰を落ち着けて彼の対応を待つ。

 何やらロビーで女性と話す声が聞こえた後、足音が二人分となって近づいてきて、室内に戻ってきたヨシュアの後ろからちょこっと金髪の女性が顔を覗かせた。


「メイド……だって」


 彼が短い紹介をして左手で示した先には、メイド服を着た金髪金瞳の女性。

 髪は後ろでおだんごにまとめているが、そんなことはどうでもいい。


「レクチェ……?」


 エリオットが先に彼女の名前を発した。

 そう、メイドとして長から派遣されてきた女性は、レクチェに瓜二つだったのだ。


「リズです。よろしくお願い致しますっ!」


 そう言ってぺこりと頭を下げるメイド。

 その澄んだ鈴の音のような声もとても聞き覚えがある、クリス達にとっては懐かしい……レクチェの声そのもの。

 エリオットとクリスは顔を見合わせて呆然とする。

 ガイアも見覚えがあるのだろう、どこかで見たような、と首を傾げていた。


「リズ……でいいのか?」

「はい! 酒場に住み込みで働いている者ですがこの度は王子のお世話を遣わさりぇま……」


 噛んだ。

 エリオットからの名前確認に、そこから頑張って自己紹介を始めようとして……全力で噛んだ。

 あまりに可愛く噛むものだから、エリオット以外の男性陣は揃いも揃って彼女にだらしない顔を向けている。

 このおっちょこちょいさがまたイイ、と言わんばかりに。

 真っ赤になって俯いてしまったリズに、ほんのりと顔を緩ませているヨシュアがぽんと肩を叩いて慰めた。


「大丈夫……」

「は、はい、すみませんっ」


 熱くなった頬を手で冷ますように両手で包んで、その仕草がまた可愛らしい。

 そしてその愛くるしさが凄く……レクチェに似ている。

 ヨシュアが彼女に軽く指示し、リズは気合を入れ直して仕事を始めた。

 クリスはエリオットに近づいてそっと耳打ちする。


「似過ぎてませんか?」

「……まぁな。けど確証は無いだろう。世の中はそっくりさんが三人居るって言うし」

「何か……彼女だと分かる物があればいいんですけどね……」


 けれど、彼女だと分かったからと言ってどうする?

 もし彼女だったとしても、そうならばまた記憶が無いことになる。

 以前のようにここの教会に連れていけばどうにかなるだろうか。

 いや、この街に住んでいるのだから教会に足を踏み入れていないとは考えにくい。

 やはりレクチェでは無い、他人の空似なのか……


「王子ー、俺めっちゃ好みですあの子ー」


 ガウェインがぴこぴこと獣耳を動かして、空気を全く読まずに色めき立っている。

 獣人の瞳は少し離れて作業をしているリズのお尻に釘付けだった。

 そこへヨシュアらしからぬ暴言が彼に飛ぶ。


「……死ね」

「え、ヨシュアさん今俺に死ねって言った!? 何で!?」

「お前ら、あの子にちょっかい出したらクビだからな」


 予め釘を刺すエリオット。

 たまには頼もしいことをしてくれる……とクリスが思ったのも束の間、


「お、王子もああいう子が好みなんですか?」


 恐る恐る尋ねるガウェインに、


「あぁ。今夜部屋に呼ぶからお前ら夜間の護衛はいいぞ」


 とんでもないことをのたまう彼。

 ぶん殴ってやろうと腕を振り上げたが、そこでエリオットは小さくクリスにだけ聞こえるような声で言う。


「……目立った胸のほくろの位置くらい覚えてるから、脱がせてレクチェかどうか確認するだけだ」


 振り上げた腕を、クリスは容赦なく王子の頭にめり込ませた。




 そして殴られた頭をさすりながらも公務に戻るエリオット。

 いつも通りヨシュアが筆記をしていき、クリスかガウェインが大体交代で護衛に着く。

 そこへ今回はガイアが身を隠した上で周囲への警戒に当たっていた。

 エリオットがクリスに……多分わざとだろう、先に休みを寄越したのでクリスは自然な流れでリズと二人、洋館に残る形となる。

 部屋の掃除をし、料理を作るリズ。

 クリスが見ているからというのもあるかも知れないが、手を休ませずにテキパキとこなしていた。


「少しは休んでもいいんですよ? こちらへどうぞ」


 リズに声を掛けると、彼女はややほっとした表情でその言葉を受け入れる。


「ありがとうございますっ」


 ずっと気張っていたのだろう。

 クリスと自分の分の紅茶を入れて、ようやく一息つけると言った様子でソファに腰掛けるリズ。

 自然に近づくことが出来て、クリスは彼女がレクチェだと確信をした。


「……っ」


 この限りなく嫌悪に近い感情が渦巻いてくる感覚。

 何もされていないはずなのに、本能が彼女を敵と見做している。

 エリオットに確かめさせるまでも無い、レクチェ以外に有り得ない。

 生きていた……今までつかえていた蟠りの一つが解けたような気持ちになるクリス。

 それと同時にいくつも浮かび上がる疑問。


「リズさんは、酒場に住み込みで働いている、と言っていましたね」


 突然声を掛けられ、ビクッと肩を震わせるリズ。


「は、はい! 記憶も無く近くの森で倒れていたところを保護してくれたのが、酒場の息子さんだったんです。それから良くして貰っています」


 以前にクリス達がレクチェを見つけた時と大体似たような状況だった。

 違うのは、見つけた場所と、見つけた人間。

 それが違うだけでこうも普通の生活を送れるようになるのか、とクリスは少し悲しくなる。

 セオリーはレクチェの今の居場所を把握していないから彼女をこうやって放置しているのか、それともまた記憶が無くなった彼女など不必要なのか。

 同じように東で姿を見かけたルフィーナ……よく分からないけれど、もしかしてルフィーナはレクチェを近くで見守っているから出てこないのか、と全く根拠の無いことを少女は思った。


「それはどれくらい前の話ですか?」

「え、えぇと……もう四年以上です、ね。最初は記憶も無くて戸惑ったけれど、彼のおかげで随分この生活に慣れました」


 そう話したリズの表情は、ほんのりはにかんでいる。


「彼、って言うのは酒場の息子さんのことですか?」

「あ、そうです! ごめんなさいこんなこと話して……どうでもいいですよねっ」


 クリスは、リズがレクチェだとしても記憶を戻さない方が彼女にとって幸せな気がしてきた。

 エリオットにどう言うべきか悩む。


「いえ、私はリズさんのこといっぱい聞きたいです。こういう立場なもので女性の友達が少ないんですよ」

「分かりました! 私お喋りは大好きなんで、いっぱい喋っちゃいます!」


 パァッと表情を明るくさせ、リズは色々な話をクリスにする。

 酒場のお客さんがいい人達ばかりなこと。

 お世話になっているご主人と奥さんは喧嘩ばかりするのに、仕事が終わった後は必ず笑顔で二人で夜食を食べていること。

 リズのことを一番に考えてくれている、とっても優しくて格好良い酒場の息子さんのこと。

 自分達と旅していた時よりずっと幸せそうな彼女の語る今を、クリスは複雑な心境で聞いていた。

 ……そして彼女はまさかのマシンガントークで、エリオット達が戻ってくるまで本当にずーーーっと喋っていたのである。

 途中で止まっていた料理の下ごしらえは、夜になり彼らが帰宅したところで慌てて再開させたのだった。


「うおー、やっぱり可愛いー」

「ガウェイン……うざい……」


 ヨシュアとガウェインは室内に入ってきているが、基本隠密行動なガイアはまだ周囲の見張りをしているらしく、洋館の中には入ってこない。

 クリスはエリオットに、待っていた間に仕入れた情報を端的に伝えた。


「……彼女はレクチェさんで間違いないと思います」

「何でだ?」

「レクチェさんの時と同じ不快感を彼女に感じるからです」

「なるほどな」


 それだけで把握した彼は、話を聞くなりソファをスッと立ち上がる。

 クリスは嫌な予感がして彼を引き止めるようにその腕を引くが、エリオットは怖い顔をして手を振り払った。


「ちょ、ちょっとエリオットさん!!」


 止めるにも関わらず、ずんずんと歩いていく先は、キッチンで作業をしているリズの方向。

 やはり言うべきではなかったか、と今更クリスが後悔しても遅い。

 彼は火を使っている彼女の右手首をがしっと掴んで上に上げた。


「いっ……」


 突然の事で目を丸くするリズ。

 そんな彼女にエリオットは怒声を浴びせる。


「また記憶を失くしました、で済む問題じゃ無いんだよ! 俺があれからどれだけ気が狂うような思いをして来たと……ッ!!」


 そう言って彼女をキッチンから引きずってきて部屋の中央のソファにどさりと投げ倒し、怯えているものの抵抗することも敵わないリズの鼻先直前にまで顔を近づけて睨み付けた。


「王子!?」

「エリオットさん!!」


 驚くクリス達をよそに彼は更に続ける。


「記憶が戻るまでお前は俺の監視下だ、この街の長にも話をつける。逃げようだなんて思うなよ」


 エリオットは低い声色でそこまで言って彼女から離れ、二階の寝室へと上がって行ってしまった。

 記憶が無い今、リズにとっては恐怖でしか無かっただろう。

 慌ててクリスが駆け寄ると彼女は涙目で問いかける。


「王子様は……私の過去を、知っているの?」


 隠し通せそうにないと思ったクリスは諦めて口を開いた。


「はい。かつてリズさんと私達は、共に旅をしていたんです」


 クリス以外の三名が、目を見開く。


「四年前の王都で起きた大規模な原因不明の殺傷事件は知ってますね?」

「通称スプリガン、だろう……知ってる……俺もその場に居た……」

「聞いたことはあるけど、俺その頃まだ田舎に居たしなぁ」


 クリスの問いにヨシュアとガウェインがそれぞれ回答をするが、リズだけは不安そうな目でクリスに訴えかけていた。


「四年前、ですか……?」


 四年前というキーワードに反応する彼女。

 それもそのはず、彼女はそれ以前の記憶が無いのだから、嫌でも連想してしまうだろう。


「えぇ、スプリガンの際にリズさんは私達の目の前から姿を消しました。当時の呼び名はレクチェと言います」

「王子そういや最初にそんな名前を呟いてたなぁ、何で急に果物? って思ったんだけど」


 北方の出である狼の獣人ガウェインには比較的馴染みのある果実の名前だ。

 今思えば本当に安直なネーミングである。

 クリスは重い気持ちを溜め息で吐き出すように紛らわし、またリズに話しかけた。


「あそこまでエリオットさんが怒る理由は私には分かりませんが……多分リズさんに聞きたいことがあったのだと思います」


 クリスの心当たりは、レクチェが直すはずだったニールの力による水晶の件くらいしか思い浮かばない。

 もうどうにかなったことだし、それだけであんな責め立てるように怒るとは思えないけれど、そこは本人に聞けばいいことだとクリスは判断する。

 それに、いくらなんでもあんな言い方は無いとも思う。

 リズは涙目にはなっているが、それをじっと目元に溜めて泣くのを堪えている。

 けれど膝に置かれた両手はスカートを強く握り締めていて、内心とても辛いということがよく伝わってきた。

 ふと、その手を見てクリスはあることを思い出し、彼女にさり気なく聞いてみる。


「あの……リズさん。森で気が付いた時、左手の薬指に指輪が填まっていませんでしたか?」


 以前、彼女の記憶を戻すきっかけとなったと思われるあの指輪。

 あれからレクチェは外している様子も無かった。

 が、それが今彼女の指には填まっていないのだ。

 彼女はハッとした表情をクリスに向け、震える声で言う。


「その指輪を知っている、と言うことは本当に私はそのレクチェという人なんですね……」

「……それはつまり填まっていた、と」


 そこへガウェインがソファの後ろからぴょこんと体を出して、口を挟んできた。


「何! それまさか王子がリズさんにプレゼントした指輪とか!?」

「ち、違いますよ!」


挿絵(By みてみん)


 確かにこの流れだとそう思えなくも無いけれど。

 ガウェインは自分の予想が外れて少し残念そうにしたが、それでもまだ言い足りないらしくまた話し出す。


「俺達に手出すなって言ったり、夜部屋に呼ぶって言ったり、どう考えてもそういう仲っぽいのに……」

「確かに……変……」

「そこは、少なくとも知り合いに似ていたから、純粋にちょっかい出されたくないと思ったのでしょう。あと夜部屋に呼ぶ件は、リズさんがレクチェさんであるかどうか確かめる為に、服を脱がして胸のほくろの位置を確認するとか言ってました。それは私が怒りましたけど」


 彼らの疑問を打ち消すべく丁寧に説明をしたが、そこで更に彼らはヒートアップ。


「胸のほくろ!? やっぱりそういう仲だろそれって!!」


 ……何故彼がレクチェの胸のほくろの位置まで知っているのかなんて、そんなしょーもないことを説明するのがだるくなってきたクリス。

 ぎゃあぎゃあ騒ぐ彼らを一旦置いて、リズをまずは安心させてやらなくてはいけない。


「とにかく、私としてはリズさんが無理に記憶を取り戻す必要は無いと思っています」


 クリスの言葉に顔を上げたリズの金色の瞳から、振り落とされるように涙がこぼれる。

 また泣き出したわけではなく、先程まで溜めていた涙が一筋落ちたのだ。


「どうして、ですか?」


 彼女の問いに、クリスは少し悔しく思いながらも本音を告げる。


「……以前の貴方より、今の貴方のほうが幸せそうに見えるからです」


 それを聞いてリズは俯き、今度は本格的に泣いてしまった。

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