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この箱庭よりも大切な人に  作者: 蒼山
第三部 第八章
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晴れた霧 ~浮かび上がる秘色の道~ Ⅰ

挿絵(By みてみん)


「どうしようかしらねぇ」


 東雲色の髪の、豪華なドレス姿の女性が、その服装に似つかわしくない暑い南の地で佇んでいる。

 それは他でも無い、数刻前にあの隠し部屋から抜け出したハイエルフ、ルフィーナであった。

 彼女は以前レクチェに使った、座標を指定しない空間転移の魔術を使って無理やりあの地から逃げてこの場に居る。

 飛んだ地から近かったクリスの故郷であるムスペルに足を踏み入れ、すぐ様エリオットのところに向かいたいところを、まずは一旦時間を置く。

 すぐに動くのは、危険すぎるからだ。

 その為にはどこか宿を取る必要があった。

 持てる限り持って来た衣類や装飾品を全部質に入れて現金に換え、一ヶ月は持ちそうな金額が入った袋を手に、空気の乾いた街並みを見ながら歩く。

 服も着替えなければ暑くてやっていられない。

 そうは思うが今着ているドレスは一番のお気に入りなので着替えるのも何となく勿体無いとも思う。

 道往く人が、南では珍しいエルフ……ましてやその暑苦しい服装に度々振り返っては彼女の後姿を見つめていた。

 そんな周囲の視線を受け流しながら、ようやく宿を取ったルフィーナは今後の策を練る。


 エリオットとクリス、どちらに会いに行けばいいか。


 勿論本当ならばエリオットに直接話しておきたいのだが、どう考えても既に網を張られていることは間違いない。

 ならばクリスか。

 しかしこちらも網が張られていると考えたほうがいい。

 そして、正直クリスは今どこに居るのか、ルフィーナには分からなかった。

 身寄りの無いあの少女だ、エルヴァンの城内で一緒に暮らしている可能性もあるし、エリオットから近しい者に預けられている可能性も高い。

 となるとシヴァンフォードかヴィドフニル家。


「んんんんんん……」


 羽扇子でぱたぱたと自分の顔を仰ぎながら、宿の室内で眉を顰め悩み続ける赤瞳のエルフ。

 こんなことならばあの四つ目の青年に色々話を聞いておくんだった、と後悔しながら足りない情報で考えてみる。


 エリオット側に網を張る場合、既に『終わっている』であろう彼とまともに戦えるくらいの戦力を置かねばならない。

 となるとフィクサーやセオリーだけでは足りないから、他にどれくらい居るのかは知らないが複数で待ち伏せしている可能性があった。

 クリスは……精霊武器があろうともあの二人に勝てるとは思えないので、こちらに割かれる戦力は少ないと考えられる。


 自分が助太刀して勝機が出そうなのはどちらか。

 クリス側にフィクサーが回ってきていれば間違いなく勝てる。

 そうは思うのだが、そうなる確証は無い。

 セオリーでも二対一ならば勝てそうな気はするが、あの男、何をするか分からない。

 エリオット側ならばどうだろう。

 フィクサーだろうがセオリーだろうが多分今の彼ならばきっと勝てると予想出来るが、他の戦力が未知数。

 自分のネックレスを奪ってわざわざ身につけているという女の存在がさっぱり分からないのだ。

 ならば……やはり先に会うのはクリスか。


「でもあの子どこに居るのかしら」


 ぼそっと独りごちるルフィーナは、仰いでいた手を止めて天井を見つめる。

 城で暮らしているという想像が、正直あの少女とは結びつかない。

 エリオットもそこまで近くにクリスを置いておくとは思えないし、やはり誰かに預けているほうがしっくりくる。

 エリオットの幼馴染としてルフィーナが知り得ているシヴァンフォードかヴィドフニル家。

 この辺りはきっと彼が安心して、家出するほど追いかけた女の妹であるクリスを渡せると思った。

 エリオットとクリスの仲は悪いが、ローズの妹である以上悪い扱いはしないはず。

 そしてクリスは女の子であるからして……


「とりあえずヴィドフニル家の方に行ってみようかしら」


 まさかのまさか、ルフィーナの脳内で全く見当違いの目的地が決まる。

 ヴィドフニル家とはつまり、レイアの実家だ。

 これはフィクサー達も予測しようが無い。

 フィクサーからどんなに話を聞いていようともルフィーナとエリオット……いや、男女の思考は違うのだ、と思わされるこの結果。

 四年前のエリオットは『クリスは女だから女に預けよう』だなんて細やかな気遣いを彼女にすることは無かったのだ。

 しかも全然関係の無いことだがルフィーナはあの二人がお互いに想い合う仲になっているなどとは微塵も思っていない。

 離れていた四年余りの歳月はハイエルフであるルフィーナにとって短くとも、彼らにとっては大きな変化が訪れるほど長いものなのだろう。

 結果としてフィクサー達を出し抜くこととなるルフィーナだった。


   ◇◇◇   ◇◇◇


 場所は変わり、エルヴァンの城内。

 第三王子の部屋に、今現在は彼の専属護衛であるレイアが訪れている。

 エリオットとフォウは第一王子の部屋を調べたその後日、王妃の侍女も調べていた。

 だがこちらはシロ。

 流石は王妃といったところか、一切ビフレストの存在を周囲に洩らすこと無く行動し続けていたその手際にエリオットは震撼させられる。

 フォウが見る限り、侍女はそれらしきものを全く目撃していないような反応だというのだから。

 そしてレイアがエリオットに次なる報告をしてきた。


「執事によると、エマヌエル様がご帰還なされたそうです」


 ようやく帰ってきたのか、とエリオットは自室の椅子にゆったり座っていた体を彼女に向け、


「そうか、じゃあお会い出来るかどうか確認を……」

「それが……あちらからエリオット様を呼んでおります」


 レイアの目をしっかりと見る。

 彼女の琥珀の瞳にも疑惑の色が滲んでいて、きっとエリオットと同じ不安を抱いているのだと思われた。

 しかし、そこで踏みとどまるような末弟ではない。


「誘いにのってやるか」


 何年ぶりかも分からない長兄との対面。

 この時期に呼び出すということは、エリオットが既に色々知っていることも把握した上での行動だろう。

 そして、この呼び出しで完全に自分がクロだと宣言しているようなもの。

 もはや隠す気も無いらしい。

 立ち上がって軽く身支度を整える手が微かに震える。

 レイアに背を向けているエリオットの表情は、明らかに強張っていた。

 気を強く持とうと唇を意識してグッと噤んでから、彼はレイアに向き直って彼女を安心させるべく笑顔を作って言った。


「行こうか」




 城内の北の塔の最上階、位置的に幽閉されているかのようなエマヌエルの部屋の前までレイアとフォウと共に行くと、老執事が深々と頭を下げてからエリオットに告げる。


「エリオット様、その、恐縮ですが……エマヌエル様の部屋にペットを持ち込むのは……」

「え」


 だんだん頭に乗っていようが肩に居ようが違和感が無くなっているねずみの存在を指摘され、エリオットは変な声が出てしまった。

 自身の肩を見ると、確かに白いねずみが乗っている。


「おい、ペットは入室禁止らしいぞ」


 そう声掛けると白いねずみはくるりと回ってその身を人型へと変化させ、


「これでいいかいお爺さん?」


 聞き取り難い小さな声で執事に問いかけた。


「……!! 獣人だったのですね、失礼致しました!」


 何が楽しいのか、エマヌエルに会う時まで着いて来るダイン。

 ビフレストとの対立に参加出来ないのならばせめて見届けたい、という気持ちも分からないでも無いが、同じ精霊でありながらニールとは随分性格が違うものだ。

 執事がゆっくりとドアを開けると、先日入った時よりも椅子が増えていた。

 エリオット達を迎える準備は万全ということだろう。

 室内で白磁のテーブルに肘を突き待ち構えていた男は、幼い頃に急に失われた視力により視点が合わなくなった瞳を隠す為の黒い目隠しが目立つ。

 エリオットの数年前の記憶とほぼ変わらない外見の長兄が、堂々とそこに居た。


「久しぶりだな」


 エリオットとは顔も似ているが、声も似ている。

 だが、エリオットが普段出さない威圧感を第一王子は消さずに放ったまま。

 エリオットの後ろに居るレイアとフォウが気を張る。

 ダインはきょろきょろと辺りを見回して何か探しているようだが、そちらはエリオットはスルーした。


「お久しぶりです」


 右腕を胸に置き、丁寧に頭を下げてから、その流れでエリオットはいつも通り直球を投げかける。


「で、モルガナの第一施設を壊した張本人が私に何の御用でしょうか」


 けれど、


「もう少し怯えを隠して言わないと意味が無いぞ、そういう台詞は」


 出会い頭の舌戦は、エリオットの負けだった。

 目の見えない兄に、心の内を見事に読まれている。

 顔には出ていないが、心臓の鼓動までは誤魔化しようが無く、兄の言う通りエリオットは心の底では怯えていた。

 一切ハッタリが通用しそうに無い目の前の人物に、頬に流れる一筋の汗。

 昔とは違う。

 自分は実力的に、この男に負けるわけが無い。

 なのに怖くて……そして悲しい。

 指摘されたことで抑えきれなくなった感情が、その次の言葉をエリオットに出させてはくれなかった。

 そこへ彼の後ろから足音が響き、そのまま彼の横を通り過ぎる。

 それはレイアだった。

 彼女はエリオットより前に進み出て、エマヌエルに問いかける。


「エマヌエル様、エリオット様に着席して頂いても構いませんか?」

「ん? あぁ、そのつもりで椅子を用意させたんだ。三人とも座っていい」


 エリオットの硬直を解こうとするように彼の背中に触れて押し、椅子までエスコートする、紳士のようなレイア。

 気持ちは有り難いが、その行為によってエリオットには自分の情けなさが更に圧し掛かってきていた。

 しかも、座らせてもらっても未だにその唇は動かない。

 聞きたいことは山ほどあったにも関わらずだ。

 エリオットがここまで萎縮するのは、多分親兄姉相手のみ。

 クリスが幼い頃の体験による恐怖を払拭出来ずにいたように、エリオットとてそれは同じ。

 深く刻まれてしまったものを消すのは容易なことでは無いのだ。

 エリオットは正面に対峙している、自分とよく似た特徴の男をちらりと見る。

 すると、その相手から余裕綽々の表情を向けられた。


「そう怯えなくともお前に危害など加えるつもりは無いぞ」


 くく、と笑いながら兄は弟に言う。

 別に危害が加わりそうだから怯えているわけでは無いエリオットは、そんな風に言われたところで恐怖を打ち消すことなど出来そうに無かった。

 だが少しだけ和らげて貰った雰囲気に、どうにか口を開くことが出来るようになる。


「ではまず、用件をお聞かせください」


 辛うじて出た言葉がこれか、とエリオットは自分自身に笑いそうだった。


「なに、簡単なことだ。一旦モルガナへの攻め手は中断させろと言いたかっただけなんだよ」

「それは私個人でしょうか、それとも軍でしょうか?」

「後者だ」


 自分は第一施設を襲って跡形も無く消しておきながら、軍には動くなと。

 矛盾し過ぎていて目的が見えない。

 素直に了承の言葉が出てこないエリオットの正面から、更に言葉が投げかけられる。


「不思議なようだな。第二や第三施設も本当ならばさっさと潰しておきたいんだが……やはり第一までが限界だったのさ。軍を動かしても無駄に被害が拡大するのが予想出来ていてそれは避けたい。で、お前にそれを止めておいて欲しい」

「はぁ……」


 ここまで言われてもまだその裏にある意図が掴めない。

 掴めないだろうと思っているからここまで言っているのかも知れないが。


「俺にはお前のような発言力は無いからな」


 エマヌエルがそこまで言ったところで、エリオットの右後ろで座っているフォウが少しだけカタリと椅子を揺らした。

 何かの合図でもしているのか、とエリオットが振り返ると、そこには青褐の髪の下に陰り険しい顔を見せているフォウ。

 そこでエマヌエルが急に席を立って、腰から短剣を抜き、躊躇うことなくフォウに向かって投げつけた。

 だがその剣はエマヌエルとほぼ同時に動いたレイアの剣によって弾かれる。


「次に同じことをするのならば斬ると申しましたが!?」


 レイアは一度既にエマヌエルに対して進言している。

 故に、この件に関して彼女はもう逆らうことを躊躇いはしない。

 声を荒げるレイアに、飄逸な声色で返答する第一王子。

 

「そこに居るのは城内の従者では無いだろう?」

「臨時とはいえ、既に雇用しております」

「……そうか、なら分かった。瞬きの速度からして多分男だと思うが、ソイツは今すぐこの部屋を出て行け」


 フォウの退席を促すエマヌエルに、エリオットがその意図を問う。


「理由をお教え頂けますか兄上」

「俺と同じものを感じるからだ」


 目の見えないエマヌエルが、むしろ見えすぎているフォウに同じものを感じると言う。

 どういうことなのか。

 エリオットは気付けば立って、兄から距離を取っていた。

 続いてフォウが、


「やり方は違えど、心が読めるって部分だと思うよ。で、この人俺に心を読まれたくないんでしょ」


 エマヌエルの代弁をする。

 先程まで不敵な笑みを浮かべていた緑髪の盲人の顔は、既に口元を歪ませている。

 フォウの言うことが正しいならば、やはりエマヌエルは何かを企んでいるのだろう。

 そして、フォウがこの場で嘘を吐く必要は無い。

 覚悟を決めねばならぬ時がきた、エリオットはそう思う。


「何を考えているのか仰ってください。でなければ……」

「俺を殺す、か? そうだな、お前に殺されるのならそれも悪くない」

「……え?」

「だがそれだと……俺はいいがミスラが困りそうだ」


 エマヌエルの口から出た、もう一人のビフレストの名前。

 自分が死ぬとあのビフレストが困る、と彼は言う。

 一体何が目的なのか。

 結局先程の問いは流された為、敢えて同じ意味の言葉を投げ掛ける。


「もう一度聞きます。何が目的なのでしょうか?」


 目隠しのおかげで目を合わせることの叶わない長兄。

 彼は再度椅子に座り直してから溜め息混じりに言い放った。


「そこの男が居ては嘘も吐けないからなぁ。いいだろう、教えてやる」


 そこでしばしの沈黙が流れる。

 実際は数秒だったのだが、それ以上に感じられる時。

 そして、


「俺はお前が不幸になって欲しいだけなんだよ」


 フォウに聞かずとも分かるくらいの悪意がそこにはあった。

 誰も返事をしない。

 エリオットを嫌っているのは分かるが、それでビフレスト側についているというのならば、彼のエリオットに対する負の感情は、自身を盲目にした神よりも恨み深いものだということになる。

 エリオットは、一体何故ここまで恨まれなくてはいけないのか分からなかった。

 それに、会話の端々から分かる通り、エマヌエルがミスラというビフレストに関係しているのは確定だ。

 しかもエリオットが不幸になることを望む彼がミスラの目的に加担するということは、ミスラの目的はエリオットが不幸になるようなもの、ということになる。


「兄上が死ねば、あのビフレストは困る……と仰いましたね」


 先程までエリオットの胸に圧し掛かっていた重圧は、兄の悪意によって逆に除けられていた。

 ……好いて貰う必要も、好いてくれるかも知れないという希望さえも無くなった相手に、遠慮も何も必要無いのだから。

 元々、今のエリオットにとってエマヌエルなど、心で打ち勝ちさえすれば取るに足らない相手だ。

 この男を殺す必要性が出来た。

 殺してもいいと思えるくらいの感情も芽生えた。

 ならば、もはや何も躊躇う必要など、無い――


「エリオット様!」


 主の殺意を感じたレイアが、その後に起こるであろうことを止めようとする。

 だがその彼女を、行動ではなく言葉で止めたのはフォウ。


「無駄だよ」


 彼がそう言った時、いや、レイアが叫んだ時……既にエリオットの魔力は太く鋭い錘となり、エマヌエルの腹を突いていた。

 攻撃のモーションは一切無く、誰も止めることは出来ない。

 一般人のように魔力で魔法を使うために腕を振ることすらせず、ただ足元から這わせた魔力を実兄へと向けただけ。

 エマヌエルは音には敏感だが、魔力が這う際に、そもそも音など発しない。

 例え目の見える誰かであったとしても、その攻撃は避けられないし止められないものだったであろう。

 錘となってエマヌエルを突いたエリオットの魔力は、その直後に霧散して消える。

 フォウはエマヌエルの死期を最初から見取っていたのか、動じることなく座っていた。

 エリオットも、自分がしたこと、その結果を静かに見つめている。

 驚きを隠せないのはレイアだけ。

 レイアに治療魔術は使えない。

 エマヌエルも、予め魔術紋様を用意していなければ使えない。


「な、何てことを……」


 どうすることも出来ないレイアの唇からは、それ以上の言葉は出なかった。

 出せなかった、というほうが正しいだろう。


「やった、な……」


 腹に開いた穴に手を当てながら、エマヌエルが言う。


「俺はお前、の、弱さを知っているから、な……」

「何を……」

「一生……背負えば、いい……ッ!」


 最期に彼は、自身の両眼帯を乱暴に剥ぎ取り、その目を見開いた。

 光を失った瞳は焦点が合っていない。

 にも関わらず何故それをエリオットに見せるように向けたのか。

 彼の意図は分からないが、そこにはやはり悪意が満ちていることだけは確かだった。

 血を吐き零し、エマヌエルはもう一言で、その命の幕を下ろす。


「お前に殺されて、俺は、幸せだよ……」


 大事な者にとどめをさしてもらえて、という意味では無い。

 憎い相手の心にこびり付く、重くどす黒い血糊となれたことへの喜び。

 エマヌエルは、心を音で聞くが故に知っているのだ。

 エリオットがどんなに口で、顔で、平然としていても、弱さが無いわけでは無いことを。

 平然としているふりをしているだけなのだ、と。

 血の臭い、色が、少しずつ広がっていく。

 戦闘が不得手にも関わらず、フォウはそれらをまるで慣れているかのように気に留めていなかった。

 平気な顔をして惨状に近づき、崩れ落ちた遺体の瞼を閉じさせている。

 本来フォウのしたことを先にしそうなはずのレイアは、呆然とエマヌエルの遺体を見つめていた。


「どう、するのですか」


 エリオットの目的としてエマヌエルを殺すことは当然の流れだったかも知れないが、大問題になることだろう。

 外にエマヌエルの従者が居る状態で隠蔽は難しい。

 元々半幽閉状態の第一王子の為、城外にまで事実は及ばずとも、城内の者はこの事実を知る。

 とはいえ、エマヌエルの凶行は城内に広まっている事実であり、従者でエリオットを心から咎めるような者は居ないかも知れない。

 王と王妃もきっとエリオットを庇おうと策すると思われる。

 だが、エリオットにはそれとは別の敵も居た。

 彼が王になることを快く思わない者達が。

 エマヌエルを殺したことでどこまで追求を受けるかは分からないが、この一件によって揚げ足をとられ、エリオットの立場が不安定になる可能性は高い。


「いい。俺は隠すつもりなんて無い。役立たずの殺人鬼を始末しただけだって言ってやるさ」

「貴方は、それに耐えられるのですか」


 エマヌエルが言い遺した意味は、レイアも知っている。

 この王子は精神的にも強いが、それは決してダメージが無いわけではなく、ただ耐えているだけだということを。

 エリオットは、レイアの問いの意味、そしてエマヌエルの言葉の意味を全てまとめて答えた。


「耐えられない、わけが無い」

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