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こういうお礼が一番厄介なんですよ

最早過ぎた祭りのお話。



 「いやぁ、先週は大変でしたね……」

 『そうかい? アレはあれで結構な催し物だったじゃないか』

 「いや、それはそれでいいんですけど、規模がおかしいでしょう、まさか疑似モンスター化させたカボチャ狩りって」


 実は先週、私の家からでもそれなりに離れた大きな町で、年に一度のお祭りがありました。

 なんでも、太陽に感謝する祭りだとか何とかで、カボチャを用いるらしいです。なんていうか、私の世界でいうハロウィンですね。

 それで、その町のまぁそれなりに偉い人とギルドでのお仕事で顔を知っておりまして、その方が招待状をわざわざこんな辺鄙な場所まで届けてくださったので、お言葉に甘えて言ったわけなんですよ。


 「確か、子供でも退治できるDランクカボチャが二百体、大人一人で退治できるのが五十体、そして大の大人十人で倒せるのが十体、更には町の人総出でも退治できるかわからない超巨大カボチャ通称スミスが一体、でしたっけ……。

  なんですか、スミスって。しかも町の人でも倒せないようなモンスターを召喚しないでくださいよ。よくあの町はあの祭りで軽症者二桁とか少ないんですかね(うち過半数は子供が転んで膝を擦りむいた程度。一番大きな怪我でも打撲)……?」

 『どうやらあの町には凄腕の魔法使いがいるようでね、祭りごとは大好きというか、率先して催すんだよ。あの祭り自体もただの感謝祭だったそうなんだけど、数十年前に魔法使いが開発した技術が街の人たちに大うけしたようで、それ以来ああいう形式なったそうだよ』

 「厄介ごとこの上ない……」

 『いいじゃないか。そのおかげで、町の人気者になれたんだから』

 「私はなりたくてなったんじゃないんですけどね」


 お茶を飲んで部屋のある場所に目をとどめると、そこにはカボチャをくりぬいて顔を模した、トロフィーが輝いている。あの祭りで最高ポイントを得た人に贈られる品だそうです。

 ええ、私があの祭りで優勝したからあのトロフィーがあるんですよね。

 あの、超巨大カボチャのスミスを単身・・で倒したから、受け取る羽目になったんですよね。

 いや、そもそも祭り自体には参加する予定は無かったんです。はい。

 ですがね、祭りの中盤になって、いきなり街を覆うかのようなカボチャのモンスターが出現ですよ。いくらなんでもやり過ぎだろうと思った私は走りましたよ。ええ、片手に釘バット持って。

 そしてそこからスミスとの大立ち回り。

 スミスの身体を支えている大量のツタたちが私に襲い掛かり、もうね、うねうねとした奴らにはこりごりな私は全力で避けました。あわよくば叩き千切りました。迫りくるツタを千切っては避け千切っては避け、と。

 やがてスミスの足元までやってきた息も絶え絶えの私は、うっぷんを吐き出すようにバットを振りかぶり、ホームラン。彼?スミスはお空の星になりました。

 で、そしたら町の人たち大歓喜。何でもここ数年はスミスを斃しきれていなかったそうで、いつも時間が来て終了してしまったそうで、それを斃した私はなぜかなぜやら、優勝者になってましたとさ。


 「わけわからない」

 『そうかい? なかなかにエンターテインメントとしては良かったじゃないか。それに、招待状を送った彼だって鼻が高いと喜んでいただろう?』

 「まぁ、そうですけどね」


 祭りが終わると、招待状をくださった人が喜んでいました。なんでも、町の有力者の方々は毎年推薦者を招待して、その人が得たポイントによって推薦した側も推薦枠として何かしらがいただけるようです。まぁ私には関係の無いものなのでいいんですけどね。

 で、その人が、お礼として後ほど送るということだったので、待っていたというわけなんですが――


 「おとどけものでーす!」


 丁度来たようですね。


 「はいはーい。ちょっとまってくださーいっと」

 「こちら、アヤメさんのお宅でよろしいですか?」

 「はいそうですよー」

 「ではこちら、配達の物ですのっ……でっ!」


 配達のお兄さんが、重そうな荷物を抱えて、扉の前に置きます。男性でさえ重く感じるというのは、相当な質量のモノがはいってるんですかね。


 「それじゃあ、こちらにサインを」

 「ああ、はいはい」


 最近は慣れた手つきで文字を書いていき、サインを終えると配達のお兄さんは一つ礼をして帰って行きました。

 はてさて、なにが入っているんでしょうかね。


 「む、なかなかに重い。≪重力軽減≫」


 やはりか弱い女性一人では重すぎるということで、さすがに魔法を使うことにしました。あんましこういったものに頼るのは良くないんですけど。


 『結構な重さがありそうだね』

 「一体なんでしょう?」

 『開けてみればわかるさ』

 「それもそうですね。よいしょ」


 紙の切れる良い音が響き渡り、封の解かれた箱に手を掛けます。結構緊張するものですね。何が入ってるんでしょう。


 「………………」

 『これはまた、大変そうだね』

 「一応、あなたもしばらくは食べるんですよー」

 『………………』


 箱の中身は、大量のカボチャでした。



しばらく、彼女の食生活は黄色一色だったとか……。


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