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お金稼ぎは最寄りのギルドへ


 あ。







 「はぁ。まさか金欠になるとは……」


 現在、私はとぼとぼ歩いています。

 なんでかですって?

 聞くも涙、語るも涙……。

 つい最近、薬を売ってお金にしてそれで当分の食糧を買い込んだんですけどね、全部台無しになりました……。

 あー、これだけで挫折しそうだなぁ。


 「仕方がありません、あまり好きではないですがギルドにお世話になりましょう」


 正直、行きたくないんですけど……。



 ――――――――――――



 「失礼しま~す」


 扉を開けると、鐘が扉についておりそれが来客の合図になります。

 そして、それだけで入ってきた人を一斉に視線がジロッ、て。恐いです、皆さん怖いですから。

 このギルドには男性が多く所属していますが、もちろん女性だっています。あ、私は所属してませんよ?

 で、いまだに強面な人たちが私をにらんでいるわけで。


 「………………」


 おもむろに席に座っていた皆さんが立ち上がります。


 「ひっ」


 いや、もちろん怖いですよ。なにせこんなに多くの男性ににらまれて、しかもいきなり立ち上がって近づいてきてそして……。


 「おひさしぶりでっ! 姐さん!」 「いやぁ、この前来たのはいつでしたっけ、姐さん!」 「ひゃっはああああ!!!」 「はぁはぁ、アヤメちゃんはぁはぁ……」 「今日はどんな御用で!?」 「なに言ってんだよ! もちろん、今回はコイツの噂を聞いてきたんですよねっ!」 「姐さんはすごいなー、あこがれちゃうなー」 「アヤメちゃん可愛いよアヤメちゃん」 「prprprprprprprpr」


 おい、なんか中間と最後二人、変態が混じってるぞ。いいのか、これで。

 というより、皆さんどうして私のこと姐さんって呼ぶんですか……。いや、私は強制してませんよ! 無実無実! 勝手にこの人たちが言い始めたんですからっ!


 「い、いや、その……」


 それよりも、ギルドの人たちに囲まれて身動きが取れません。というより皆さん酒臭いです。


 「おめぇえええら静かにして道開けねぇえええええか!」


 突然の咆哮。

 その野太い声によって私の周りにいた方たちは一斉に体をはねさせると、モーゼのアレみたいに私の正面を開けていきます。そしてその先には、熊とかでも見間違えそうなほどに大きな体をし、隻眼で鼻下に見事なお髭を蓄えたお方がいました。眼光が鋭い。

 そして、その人は私のところまで歩いてきます。

 うわぁ、下から人を見上げるのって、見上げる側からしたら恐怖ですよ。だって上から睨みつけられるんですから。当社比三倍はくだらないんじゃないですか?


 「え、えとあのぉ」

 「すんませんでしたアヤメさん!」


 でっかいおじさんがいきなり土下座。

 いや、どういうことですか。


 「うちの奴らはアヤメさんが来るなりこんなことしてしまって。オレが代表で謝ります!」

 「そ、そんなことねぇよおじき!」 「そうだぜ、もとはと言えば俺たちが悪かったんだ!」 「謝るのは俺たちさ!」 「アヤメちゃんはぁはぁ」 「お前らぁ、オヤジにだけ謝らせるんじゃねぇ! 俺たちもやんぞ!」 「おう!」

 「「「すんませんでしたっ!!!」」」 「アヤメちゃんに見下されて蔑んだ目で見られるとか、興奮しますデュフフ」


 現在、私を除いて全員が土下座してます。私に向かって。わけがわからないよ。あと、さっきから変態がいるのはどうにかしてくれませんかねぇ?


 「い、いや、別に謝らなくてもいいですからっ! 私別に直接的な迷惑は被ってませんから! ほら、皆さん顔上げてください!」

 「い、いいんですか、アヤメさん……」

 「大丈夫ですから」

 「ありがとうございます! 俺たちを許して下さって! ほら、お前らも礼を言え!」

 「「「ありがとうございますっ!!!」」」


 どうしてこうなったんでしょう……。



 ――――――――――――



 それから、しばらくして元の状態に戻してから私は先ほど最初に土下座してきたオヤジさんと話しています。


 「それで、今日はいったいどのようなご用件で?」

 「あ、はあ。お恥ずかしながら金銭的に現在困ってまして、何かクエストなどがあると思ってきたんですけど……」

 「そぉでしたか! アヤメさんなら遠慮なさらずにいつでも来てください! それで、金銭的にクエストでしたね。それなら、コイツはいかがでしょう?」

 「おや、これは?」


 オヤジさんがテーブルに出したのは一枚の手配書。それも、モンスターのやつですね。結構な金額です。


 「近々出没したヤツでしてね。近くの町の田畑や、うちのギルドでも被害者がそれなりに出ているんですよ。それで、つい最近そいつに懸賞金がかかりまして。それで、アヤメさんなら出来るんではないかと思い……どうですか?」

 「そうですね……。これって、いったいどうしたら倒した証拠になります?」

 「一応、証拠となりうる体の一部でも持ってきてくださればよいでしょう。欲を言うなら、生け捕りですかね。ですが、これを聞くということは……!」

 「わかりました。請けましょう」

 「おおおおおお! ありがとうございます! 何人かを案内につけますので、少々お待ちを。おいお前ら!」


 ということで、なんだか大きなモンスターさんを今回は倒すことになりましたとさ。



 ――――――――――――



 「こちらですっ、姐さん!」


 現在私が連れて来られたのは森の中でも深い場所。

 あまりに木が生い茂っているために日の光が地面までほとんど届かず辺りは視界が悪いですし、地表から姿を見せている木の根などは下手をすればひっかけて転んでしまいますね。


 「お二人ともありがとうございます。ここからは私一人で大丈夫ですので何か起こる前に帰った方がいいかと思います」

 「そ、そうですか。わかりました、姐さんのご迷惑にならないよう、すぐにズラかりますんで」

 「はい、お願いします」

 「それでは、失礼します!」


 そういうとお二人さんは走ってもと来た道を戻っていきます。しばらくそれを見届けたら二人の姿も見えなくなったので、これで探索が出来ます。


 「さて。とりあえずは――」


 ――ぶもおおおおおおおおおおおおおおおお!!!


 ん、何かすごい唸り声を上げながら地面を蹴る音が……。


 「って、きたぁ!」


 ものすごい速さでこちらに突っ込んできた黒い影を私は咄嗟に回避します。

 標的に当たらなかった影は止まることなく大きな木にぶつかります。


 「うそでしょぉ」


 なんと、ぶつかった衝撃で木が折れました。一応、太さ的には私が三人くらいで輪になってどうにかするぐらいなんですけどねぇ。

 で、ぶつかったことで止まったその影を私は凝視します。

 うーん、あれは……イノシシですかね?

 くるっと振り返った姿は立派な牙を生やし、一般的に知られるイノシシの何倍もの大きさです。それも、なにを興奮しているのか標的は見事に私らしく、足を地面に叩きつけて勢いを溜めてやがります。


 「きたぁ!」


 タメを終えて突っ込んできたイノシシ。ですがイノシシは基本的に直線距離ですので、私は横に逃げるのではなく上に逃げました。跳び箱的な要領で。

 で、それがさらに怒らせたようで。


 「うーん、なかなかにあれを止めるのは難しいし、仕方ない」


 私は自分の武器である釘バットを取り出します。ああ、何度見ても……慣れてきてしまいましたねぇ。残念なことに。

 さて、あとはどうやって叩きましょうか。一応仕留めても牙をもちかえればいいんでしょうけど、せっかくなんですしねぇ。


 「今日は牡丹鍋ですかね」


 多分、今の私笑ってるんでしょうね。鍋は久しぶりですし。


 「それじゃあ、大地の力よ樹木の力よ、私に力を貸してくださいなっ」


 そうやって自然に呼びかけると、突如イノシシの動きが止まります。どうやら、イノシシさんのいる足場陥没して、そこに木の根が巻きついたんでしょう。哀れ。

 とりあえずは、殺さない方向でいきますので眠って貰いましょう。


 「内部衝撃浸透。外装損傷無効。

  せぇ、の!」


 ――ぴぎいいいいいいいいいいいいいいいい!!!



 ―――――――――――――



 「いやぁ、さすが姐さんですね! まさか傷無しで捕まえるなんて!」

 「ええ、まぁ。それよりも……」

 「わかってますって! それじゃあこちらが、報酬の金になります」

 「はぁどうも……。ってそうではなくてですね?」

 「おーしお前らぁ! こいつを運ぶぞー! 手伝いやがれぇ!」

 「「「おすっ!」」」

 「いえ、だから、その……ああ……」


 牡丹鍋……。



夏だからこその鍋もいいですよね。

敵なしの強さは戦闘シーンを安易に終わらせてくれます。過度な期待をさせたりしたらすいません……。

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