Trick no Treat
久々の更新ですが特にこれといったこともないという……。
「もう終わりましたよ」
「え?」
「だから、もう終わりましたよ」
「……君は、何を言っているんだい、アヤメ?」
「ですから、あなたのその準備は全て無駄だったということですよ」
「そん、な……ばかなッ!?」
「何度でもいいます、いいですか。豊穣祭は――ハロウィンはもう終わったんですよ、4日前に」
「コンナハズデハー!!」
そして、一人の魔法使いは引きこもりでありながら飛び出していきました。
まぁただたんに自室のベッドにでも飛び込んだんでしょうね。
さて、いきなりこんな会話で何を言っているこいつらは、とか思ったりなんたりかんたりとした人もいるでしょうし、よくわかる解説をしていきましょうかね。
先ほどウィリーと話していた通り、4日前には豊穣祭があったわけですね。で、去年の出来事を覚えていてくださる方がいればいいんですが、そのときにトンデモ大好きなウィリーが擬似モンスターを作成、そしてそれを使ったお祭りをしたわけです。
追うわ追われるは脱げるわ脱げるは、悲鳴に歓声、ともかくカオスでしたわ。
で、そんなこんなで今年も豊穣祭は行われるということで、彼はがんばっていたわけですね。
ええ、なんでも2ヶ月前から作り始めて、去年よりも面白くしてやろうとか画策していたみたいです。
そんなこんなで、豊穣祭も近づいてきたころ、彼のほうも準備は整って行ってはいたみたいなんですが……事件は起きたんですね。
「まぁ、大したことでもないただのお間抜けなんですが」
彼、よりにもよって豊穣祭前日にメインとなるボスモンスターになんだか納得がいかなかったらしく、そこから急遽作り直し。それも、設計図から何から全部ですよ。いくら魔法使いとしての力があるとはいえ、アレ一体を作り上げるのには最低でも三日は必要なんですから(この話は去年に彼から聞きました)。
まぁ研究者気質といいますか、職人気質というのが正しいのでしょうか、そのときには既にハロウィンのことについてはかーんぜんに頭からほっぽって、連日連夜のさぎょうサギョウ作業。そんなこたーしたらたとえドーピングしてても倒れますわ。
完成すると同時に気が抜けて寝てしまったんでしょうね。
で、時間は戻ってきて、ついさっき私が倒れている彼を殴り起こし(もちろんバットで)、完成したボスを街に繰り出させようとしたところで、真実を伝えてあげたのでした。
「確かに、今回のボスは強そうでしたけど……正直戦いたくないなぁ」
見た目は強そうなんですよ。それは、彼ががんばって作っただけあってわかります。ただ、ただですね……。
「首から上がかぼちゃで下が海パンの筋肉もりもりマッチョマンの変態はなぁ……」
嫌ですよ、設計図には『動くと迸る熱い汗とか書いてあるし。完全に被害が甚大なことになってたでしょう、これ。
だからまぁそういう意味では、良かったのかもしれないですね、彼がハロウィン忘れてくれて。
「けど、どうするんだろ、コレ」
そんなことを思いながら、私はこの変態を見上げるのでした。
『おのれぇ、次こそは、次こそはやってやるぞ、Trick or Treat を!』
お願いですから、それだけは勘弁してください、ほんとに。
ちなみに、私はそのハロウィン当日に仲が良いんでしょう女性の集団の中できのことたけのこの戦争が起きそうなのを横目で見ていただけでした まる