世の中嘘にも限度はある
うわぁ更新久々。
「……はっ!」
水から顔を出したかのような声を上げて、私は覚醒した。
いやはや、人間てこんな唐突に目が覚ませるものなんですね。
さっき寝付いたはずなんですけど、ほらもう窓からはこんなにも明るい光が。
やべぇ全然寝た気がしねぇ。でも気分はすっきりしてるから寝たんだよなぁ。そうだろうなぁ。
「はぁ、やれやれ」
いつも通りの朝ですか。まったくもっていつも通りの無機質な天井になんていうか、テレビにテーブルに六畳一間とか。
「は?」
テレビ? 無機質な天井? 六畳一間?
「ここはまさか……」
いくらなんでもそれはないでしょう? この部屋にこの家具にこの天井。見覚えどころか知っていますよええ、忘れる方がどうかしてますもの。
だってここは、
「私の部屋、ですと……」
そう。そう。そう。
ぐーぜん拾ったポメラニアン(人語を解すアンチクショウ)によって変なとこに飛ばされて、成り行きでとんでも魔法少女()にさせられ、それからは自分だけの新たな住処で悠々自適に暮らしていたはず。
でもしかし、ここは確かに私の部屋。そう、成人してから何年と過ごしてきた場所。記憶ではなく体が覚えているものですよ。
でもおかしい。私はこっちに戻ることなんてできないとポメちゃん(さっきのポメラニアン)に聞いた。だから、仕方なく魔法少女()になった。で、悠々自適な生活をしています。←今ここ
のはずだ。
「あるぇ?」
まさかとは思うけど、逆?
あっちが夢で、こっちが現実?
ポメちゃん(○獣)とは出会っておらず、昨日見た夢が実は全部そういった世界を作っていたと?
でも昨日の記憶ははっきりしてるしな……。とくにギルドマスターにちょっと飼育所の動物が逃げたから全部捕まえてきてくれ、とか無茶ぶり言われたことだって覚えてるし、飼育所の動物とかいいながら明らかに中にテンタクルとかワイバーンとかオランウータンとかいたんだけど……。あれ夢なのかぁ?
えそれ私凄いかわいそうな子みたいじゃないですか。現実逃避のために夢の中で新しい世界作っちゃうとか精神科いってきたらとか言われちゃうレベルじゃないですかやだぁ。
「まじでじま?」
試しにほっぺをつまむ。
うん、痛い。
げ ん じ つ。
「うがぁあああああああああ!!!」
「なんですかなんなんですか私あれですかやばいんですか日ごろのストレスからついに病んじゃったんですか疲れ溜まりすぎて別の世界に行きたいふへへぇとか言い出したんですかそして眠った自分の望んだものが魔法少女()ですか釘バットもって相手を殴打したり魔法()で依頼を解決したりだとか初日の出いいなぁとかおもったりこっちの世界じゃ私魔法少女だから花粉症なんてなくて最高だぁとかしいてたんですかええしてましたねだからですかあダカラじゃないですよ何言ってるんだ私はわぁああああああああああああああああああああ」
やばいよぉ、自分の痛さ加減で再起不能になりそうだよぉ。
現実みすえなきゃいけないのかぁ。というかこの時の私ってなにしてたっけ?仕事してたと思うけど何の仕事してたのかなんて記憶にございませんよ。どうするんですか。
「起きよ……」
もう、とりあえず起きよう。それからだ。あの世界のことは夢と言うことは私のあれも無いってことだ。これからは自分で動くしかないのか。
「って、うん?」
踏み込んだ場所、そこになんか歪みが見えたような。いや、気のせいかな?
さて、水を
「あらぁ?」
蛇口捻っても水でないどころか、水がない?
ますます、おかしい。
「これまさか」
次は椅子に触る。
でやっぱり、すり抜けか。
これはもしかしてもしかしなくても……
「ふんっ」
大きく足を振りかぶって、ドン!
『うわぁああ』
「おおっと」
「………………」
まさかまさかとは思ってたけど。
これ……
「君らさぁ、どういうことかなのか説明してくれるよね?」
声かけた矛先はもちろんあの二人。いや、性格には一人と一匹。
っこんな大がかりなもの作れるとしたらあいつしかいないだろうし。
「ほら出てきなさい、ポメちゃんにウィリー」
手をあげ拍子。
同時に、あの見覚えのある風景は霞の如く歪んで、一瞬にして今の私の現実が現れる。
「はぁ。まさか幻術とは」
「幻術ではない。これは対象が思い描いた場所を映し出すことのできる――」
「それを私で試すんじゃぁない!」
『でも、アヤメぐらいしか彼の実験道具には』
「ポメちゃんを実験動物にしますよ?」
『ごめんなさい』
満面の笑みで言ったことには効果があったみたいですね。
まったく、本気で一瞬焦ったじゃないですか。夢だろうと嘘だろうと、こういったのは勘弁してほしいですよ。
「もうあれですね、不貞寝しましょう」
それがいい。
そうしよう。
年に一度のこの日はだぁいたいネット巡回がはかどりますね。ネタを探して。今年は少ない方でしたが。
ウソをついてもいい日だとは言いますが、限度をわきまえましょう。名前の通り、フールな嘘が丁度いいんです。