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雲が出来るのってホントだったんだ……

雲があったのって、前の会場でのことだと聞いていたんですがねぇ……。


 「走らないでくださーい!」


 一人の男性が、大声を張り上げる。

 彼の言葉通り、ほとんどの者は走っていない。

 しかし、走っていないにしてもその動きは俊敏だった。


 「焦らないでー! 人の邪魔をしたら私たちが邪魔をしますよー!」


 この場合、いくら言っても聞き入れていないからといって黙ってはいけない。彼、彼らにとってこれは仕事であり、正当な報酬を受け取っているからこそ行っていることなのだ。

 だからといって、そんなことなど知ったこっちゃないと、汗をまき散らし走っているのか歩いているのかさえ区別がつかない速度で彼らは動く。

 この者たちの中に、手抜きをしているものなど存在しない。目は獲物を狙う野獣が如く、瞳の奥にはこの炎天下でありながらもそれ以上の熱を秘めた姿がある。

 ここは、戦場だった。





 「とかなんとか言ってみましたが、正直に言って……k」

 『アヤメ、それ以上は良くない。彼らは必死なんだ』

 「そうは言われましてもねぇ」


 もうなんていうか、怖いですよね。そこらの魔物なんて相手にもならないぐらいに、ここにいる人たちは全力ですよね。ほんと、怖いですよね。


 「はぁ。こんな暑い日によくこんなに人が集まったものですよ」

 『そこに欲しいものがあるからじゃないかな?』


 なんですか、その山があったから登るみたいなセリフは。


 「ほんと、仕事じゃなかったら関わりもしないものですよ、これ」


 年に二回、有志の人たちが自身の空想や想像や妄想や欲望を形にし、その形となったものを客かが買う祭り。

 有志といっても厳正な審査によって販売はされる。それでも人に好みがあれば、実際のところ売る人によって様々なことがある。

 沢山物販する人もいれば、ほんの少ししか売らない人もいる。

 数は有限だ。どんなに売る側が商品を揃えたところでいずれは商品がなくなる。だから、客たちは我先にと歩く。

 また、販売する側も人間だ。会計をとちる人もいれば、早い人もいる。客も同様であり、指定された金額をぴったしに払う人もいれば、売られている金額よりも遥かに高い金額で買うものもいる。その際に発生するおつりもまた、いろいろとあるのだ。

 そんな祭りを、私はギルドで請け負ったのではなく、直接便箋で一週間前に特別警備員的な位置づけで出るように言われた。何でも、暴動が起きた時の静止役としてらしいです。


 「はぁ。何でもかんでも魔法使いに頼めばいいとか思ってません? ここの町」

 『体よく扱われてるってことは確かだろうね』


 実際、いろんな雑事にも似た仕事は良く来るのだ。ええ、もう。そりゃあたくさん。

 もちろん、報酬はちゃんといただいている。それでも、納得のいかないことだってあるんです。そう、今目の前の光景だってね。


 「全身から汗を拭きだした人たちが、密集した場所でぶつかり合って、進んでいく……」

 『気温は高く、湿度は高い。蒸し風呂みたいだよね』

 「ポメちゃんの言う通りですね。何でしょう、ほら、こういうときってこういいたくありません?」

 『どんな?』

 「人がゴミのようだ、と」


 そう、偉い人が言ってました。そのあとにグラサン掛けてんのに目がダメになるんで、ネタとしか扱われなんですけど……。


 『アヤメのいた世界でそんなこと言う人もいたね』

 「おや、ご存知でしたか」

 『そりゃ、しばらくはあの世界にいたんだから』


 そういえばそうですねぇ。ポメちゃんがこんなのだと知らないときは、普通に飼ってましたからね。その時から私の言葉が分かっていたなら、テレビの声だってわかるもの道理か。


 「それでも、今のところ死人が出ていないことに私は驚いている」

 『何人かは倒れて運ばれてる人もいるらしいけど、今のところ目立った騒動も起きて内容だしね。そこら兵士以上に訓練されているんじゃないかな、彼らは』

 「言われてみれば……」


 僅かな隙間に体をすべり込ませて、目的地へと進むさまは本当にすごい。人の海を泳いでいるようにも錯覚を起こす。

 まぁそれより先に、暑さで幻覚視そうな人もいそうですけど。

 さてさて、一応魔法で暑さや湿度にも無関係ですが、一応見回って仕事してますアピールも大事ですからね。少々いろんな人の話で盗み聞きながら行きましょう。





 「こちらA班。目的の商品ブツは手に入れた。途中部数制限が入って時間を喰らったが、そっちはどうだ?」

 『こちらD班ですが、列が進みません。想定した通りここは会計が遅いので、もうしばらく掛かるかと』

 「そうか、了解した。ならばそちらが請け負う予定の方にこちらは向かう。水分補給を忘れるな」

 『了解です』





 「いやぁ、今回のここは素晴らしい作品を描きますなぁ」

 「この人wいつも原稿ギリギリですけどwwwその分我々を楽しませてくれますからなw」

 「ふひっ、ケモ耳ッ娘はジャスティス!!」

 「やっぱりようじょは最ッ高だぜっ!」





 「ふぅ……」

 「まさか、マサ×ヨシでくるとは思わなかったわ」

 「ええ、私としては物足りない感はあるけど、この濃厚なタッチだからこそ出来る芸術よね……」

 「┌(┌^o^)┐<ホモクレェ」

 「落ち着きなさイ。あと、四つン這いになるなハシタない!」





 うん、敢えて言うなら濃い。

 熱気がすごい。

 そして怖い。もう何回これ言ってんだろ。


 「人は熱心になればここまでくるんですねぇ」


 ふと、会場内を見上げる。

 そして、有り得ないものを見る。


 「く……も?」


 雲。

 にごった、少し黒ずんだ、雲。

 確かこの会場は通気性はいいはずだ。こんなに暑くても。

 今日は風が少ないね。でも、いやいくらなんでも……。


 「雲ですよねぇ」


 うん、わかってる。

 人の汗が蒸気になって、排気もされずに溜まってああなってるのを。

 いくらなんでも、おかしいでしょう? 雲ですよ、雲! なんですか、雨降るんですか!? 茶色い雨ですか!


 「あ、やばい。想像しただけでダメだ」


 衛生上あれはやばい。めっちゃやばい。ものっすごっくやばい。

 しかし、どうしましょう、あの雲。

 散らすんだった風を起こせばいいんですけど、正直釘バットないとそんな繊細な作業できませんし、それに風が強すぎると邪魔になって何が起こるかわからないですし。


 「んー」

 『どうしたんだい、そんなに悩んで?』

 「いえほら、あの雲……」

 『あー』


 ポメちゃんも、ようやく気付いたようで。

 ほんと、どうしましょうあれ。


 「もうあれですね。めんどくさいんで、ほっときましょう」


 ああいうのは、触れない方がいいんです。それに、あんなところに行くのだっていやですし。精神的に。

 うん、私は今そう決めました。知らん、私はあんな雲など知らん!


 「さ、警備にもどりましょー」

 『まぁ、アヤメがそういうならいいけどね』


 よくできたペットやな、ポメちゃん。まぁ、実際この世界に強制連行したのは許さない。絶対に。

 けども、やるしかないんですから、与えられたことはキチンとやることにしましょう。

 どうせ、明日もあるんですし……。

 ああ、ちょっと滅入ってきた。ほんと、私の仕事を増やさないでくださいね、みなさん?





 例年、夏は猛暑です。湿気がここに加わるとサウナです。よく死人が出ないなと思うぐらい暑いです。立ち止まっていても汗が滴り落ちるぐらいです。こういったことだけでなく、普段から水分補給などは欠かさないようにしてください。

 体調管理が、楽しむコツだと私は思います。

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