表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/21

勘違いされる発言には気をつけましょう


 世の中には、言葉が足らないことで誤解や間違いが生じ、その状態が続いてしまうことでいろいろと厄介なことが起こります。


 「私は、君が欲しい!」


 こういった言葉はいけませんねー。それっぽい人が聞いたりしたら確実に勘違いしますねー。

 で、それを今私目の前で言われてるんですけどねー。

 返答は決まってますね。


 「はぁ?」


 ええ、それはもう疑問符をたっぷり込めて、一般的な感受性を持っている人が聞いたら確実にガン垂れてるんじゃないかって勘違いするほどには顔とか口調が歪んでますね。

 とりあえず、話を続けましょう。


 「何おっしゃってんですか?」

 「君が欲しい!」

 「バカなんですか?」

 「私自身は天才だと自負しているっ!」

 「殺しますよ?」

 「はっはっはっ! 殺れるものならやって――」

 「フンッ!」

 「みぐろっ!?」


 今の会話、ジャスト二秒で終了します。

 ああ、だいじょぶですよ死んでませんよ。

 ちゃんと魔法で殴った時の痛みはありませんから。その代わりとして、地面に叩きつけられた痛みは消してませんがね……(ゲス顔)


 「ま、まさか本当にするとは……」


 四肢を痙攣させながら、面を上げて私を見上げています。

 なんていうか、死に掛けの虫を思い出しましたね、いま。


 「あなたが変なことを言うからですよー?」

 「うん? 私は今何かおかしなことを言ったのか?」

 「とりあえず、一部の言葉を抜かして言うのは良くないです」


 特に自覚症状がないというのはあらゆる場面で厄介ごとを起こす起因となります。

 彼は衝撃が引いたのか、立ち上がって埃を落としますが、やっぱしぶといですね。ちっ。


 「そうか。うむ。わかった。とりあえず脱いでくれ」

 「はいアウトー」

 「なんでっ!?」


 もうイッ、パツ! せいっ!

 あ、ちょっと頭が床にめり込んだ。


 「い、いくら私でも何度もぶつけられると痛いものは痛いんだぞ! ほらっ、たんこぶが出来たじゃないか!」

 「はぁ……。もういいですから。採血、するならさっさとやりましょう?」

 「う、うむ……」


 つまりは、さっきまでのあの言葉はこういうことです。


 ――『私は、君(の血)が欲しい!』

 ――『君(の血)が欲しい!』

 ――『とりあえず(血を抜くために)脱いでくれ』


 こんな感じになります。

 なんで脱ぐのかは甚だ疑問なんですが、私の見立てでは上着を脱いで袖を捲りやすいようにしてくれということなんでしょうね。

 で、この目の前にいる人は、私と同じ魔法使いです。

 名前はウィリー・バッテン。ウィリーと私は呼んでますね。

 この人の魔法使いとしての特性というか特徴は『研究』。主に医療や魔法を利用した技術に精通しています。こういうタイプは基本的にマッドな感じが多いんですが、どう何がアレなのか一般的な思想の持ち主ですね。ほら、毎年行っている街で行われているお祭り関連は彼の技術が惜しみなく現れている場だったりしますね。疑似モンスターとか。

 魔法使いというだけあって何かに縛られるということはありません。ただ、彼は浮世離れしておらず、研究に関しては刺激が常に必要なので街に住んでいるというわけです。

 まぁ、悪い人ではないんです。ただ、言葉が足りないんです。そう、天然なぐらい。自覚症状がないんです。


 「それにしても、私の血ぃ診る必要ってあります?」

 「そうだな、君は異世界から来ただろう? だからこそ、こういったことは重要なのだよ」

 「ほぉー」

 「特に、魔法使いだからと云っても油断すれば風邪はひく。精神的な病にもなる。その精神的病から肉体に影響を及ぼし、最悪自分の身を壊すこともある。だからこそ、こういったことは大事なのだよ」

 「それ、実体験があるんですか?」

 「私は無いよ。ただ、時折生まれた魔法使いの者にあるのだよ、先天性であろうと後天性であろうと。特にいえるのは、後天性で努力もせずになってしまった魔法使いというのは、大きな割合で迫害を受ける。同じ町や村で住む者たちよりも、まず家族にね。私はこれでも現存している魔法使いの方々の中では二番目に長く魔法使いをやっているのだよ?」

 「で、私が一番若い魔法使い?」

 「そうだね。確認できているうちではそうさ」


 それにしても、知りませんでしたよウィリーが二番目に魔法使い歴長いなんて。見た目十代後半から二十代前半ですよ? 信じられるわけないでしょう。あんなんで。タイヤみたいな名前して。

 さておくならば、一番古参の魔法使いさん。彼女は私会ったことないです。まず、消息も掴めていません。ポメちゃん曰く、生きてはいるそうです。ただ、自由奔放すぎてどこかにいるかまではわからない。彼女自身まず殺しても死なないそうですし、死んでも死なないそうです。


 「うん、一応健康状態は良好だ。じゃ、(血を)抜くからしばらくそこに待機ね」

 「わかりましたよー」


 彼自身中々に手慣れているだけあり、痛みも感じさせずに針を腕に入れると、血を抜いていきます。うーん、なんかかゆいような、何とも言えない感じ。

 ただまぁ、血を採取している部分が静脈らしいので、黒いですねぇ。一瞬自分の血がこんなに汚いのかと思いましたよ。生活態度治す必要あるのかと一瞬打診しかけましたよ。

 それで十分、何事もなく終了。


 「終わったよ。結果は今度知らせるから、今日はご苦労様」

 「はいはい、失礼しますよー」

 「ではなー。あ、ちゃんと水分は摂取するように。あと、今日は出来る限り運動は控えたまえよー」


 さぁて、抜かれた分だけ肉でも食って補給しますかー。

 丁度お腹減ってきましたしね。


 「ちょっと賞金制の食事処でも行きますか」






 結果、二軒の店から泣いて謝られました。



献血いきました。案外楽しかったです。

緊張するとべらべらしゃべりますがそれが顕著に表れていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ