一話から触手って……
「いぃいいいやぁああああああああ!!!」
現在、私の身体は宙ぶらりんです。
どうやって? それはもう、なんかこう、細くて長くてうねっとしてて時々ネチョっとしてるアレです。ファンタジー的にいうなら触手に片足掴まれてます。
わぁお。いくら慣れてるからって表面では叫んでますが心の中はびっくりするくらいクールですね。一応いろいろとヤバいんですけどね。どうしましょう。
幸い腕とかは掴まれてませんし、私の唯一の武器もあるわけですから今のところは平気なんですけどね。
「あ……」
下、というより今私は上下逆さまなわけですから上を見ている感覚なんですが、ちょっとピンチかも。
なんていうか、私の真下にポッカリと口を広げた植物さんが。まぁ普通の植物ではないですけどね。で、どうやらこの足を掴んでる触手さんが私を放したら開いているお口へ真っ逆さまのゴールイン、という図なわけでして……。
「ひゃぁ!」
タイミングを見計らっていたかのように足を放されました。
私とお口までの距離は大体二~三メートル。頭から落ちてます。
ヤバい、冗談じゃなくて死んじゃうかも。
「こんのっ!」
かといってむざむざと喰われるわけにもいきませんからもちろん足掻きます。この右手に持った武器で。
「えぇい!」
私が持ってるの。これ、武器としては大変ビックリな武器に。ただまぁ、なぜか私の武器としてこれが出てきてしまったわけで、替えも利かないのでこれなんですが……釘バットです。
なんですか! 文句有りますか!? 私別に不良じゃありませんよっ! 普通の……ふ・つ・う・の! 女子高生! 普通の女子高生ですよ! 二度行ったのは大事なことだからです! 元が付きますけどね……。
まぁそれはおいおいでいいでしょう。とりあえずは私を喰おうとしているこの触手系植物です。このなんか返り血みたいの再現してるのか少し赤黒くなってる釘バットで空中からでぶん殴ります。
で、見事に開いている口の外っ側をひっぱたけたようで、植物は横転し私の視界には地面が急接近。
とりあえず顔面入ったら死ぬんで空中前転して足から着地。
「あぁー、死ぬかと思った~」
さすがに冷や汗が出てました。まぁ毎回こんなんですけどね。
先ほど殴った触手植物さんですが……おや、まだ悶えてますね、チャンス。
「せぇの」
私、これでも人より運動能力は超越してる方らしいので四~五メートルぐらいの距離なら一息いらずの勢い余るぐらいで行けますんで、その勢いはそのまま利用してっと。
「おりゃー!」
よし、ジャストミート! 芯をとらえた!
めり込むようにして釘バットが触手植物を殴り、音速に近い速度で空へと飛んでいきます。
アニメとかマンガとかならこう、SEに『キラン』とかつきそうな勢いで。
でも、とりあえずはこれでおしまいです。
敵は排除できたので武器である釘バットは消して、乱れた服装も元に戻して……よし。
『どうやら倒せたみたいだね』
「まぁ、一応」
とつぜん、頭の中に声が響く。ちょっと高めの中性的な声。
これもまた私にとっては慣れてることなので普通に返す。
『じゃあそろそろ結界も切れるだろうから、帰ってきたら?』
「言われなくてもしますって」
とりあえず、帰るとしよう。
そして、帰ったらさっさと風呂に入って寝てしまおう。
そのほうが明日には響かない。
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