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険しきを冒す者たち  作者: 村松 柊榎
第二章︰絶海の遺跡群
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第10話︰深層探索

~方解石の迷宮・第18層~



「よし、3ヶ月前の地図だったから心配だったけど、問題なくここまで来れたな。」


手にした地図のスクロールを確認し、そこが階層の終点、第19階層への階段である事を確信する。

今、俺たちは方解石の迷宮の深層探索に挑んでいる。メンバーは俺、アレス、ミラ、アイク、そしてシズクだ。


「なぁノアル、なんで3ヶ月前の地図だと心配なんだ?」


アイクが純粋な疑問をぶつけてくる。そういえば、こいつは深層探索の経験がまだあまり無かったな。


「迷宮ってのは一定以上の深層からは時間経過で構造が変化していくんだよ。迷宮にもよるけど、だいたい半年で深層の地図は完全に意味を無くすって言われてるんだ。」

「なるほどな。だから、この先の地図は無かったのか。」


理解が早いな。


「そうだ。半年以内でここの19層をマッピングした冒険者は居なかったらしい。」


つまり、ここからは地図無し、罠に気を付けながら、手探りで探索していく事となる。


「さて、19階層の攻略作戦の再確認だ。アレス、例のモノは持ってきたな。」

「もちろんだよ。」


アレスは腰のポーチから宝石の振子のような物を取り出す。


「これが例のか!本物を見るのは初めてだぜ!」


アイクが目を輝かせて見ているソレは、一定以上のランクの冒険者がギルドに申請すれば貸し出せる、深層探索用アイテム「応晶振子(ディテクターペンデュラム)」。迷宮に生成される罠の類を探知できる、迷宮深層の必需品だ。


「アレスがコレを持って先頭を歩く。次いで俺、ミラ、アイク、シズクの順でアレスの足跡をなぞって進んでいく、いいな。」


「「「「了解!」」」」


~方解石の迷宮・第19層~



すた、すた、すた、


先頭を歩くアレスが、1歩ずつ、丁寧に迷宮を進んでいく。

彼の靴に施された魔法により、その足跡は仄かに光を放つ。それをなぞるように、続く俺たちも1歩ずつ、迷宮を進んでいく。


アレスが立ち止まり、後続を右手で静止する。


「反応あり、2時遠方。」


左手に持った応晶振子(ディテクターペンデュラム)が光り、反応のある方角に向かって揺れる。


「罠か?」

「いや、反応が動いてる。多分魔物だね。こっちに向かってるよ。」

「よし。全員構えろ、迎え撃つぞ。」


仲間たちに指示を出しつつ、俺も槍を構える。


そして、数十本先の角から、ヤツは現れた。


迷宮の壁面と同じ、光沢のある真っ白な石ような質感の身体。

というか、石そのものの身体。


ソレは、二足歩行の巨大な石そのものだった。


方解岩兵(カルサイトゴーレム)、やはり出たか。」


この迷宮の第19階層を代表する、非常に危険度の高い魔物。動きこそ鈍いが、その石の身体は方解竜(カルサイトドラゴン)の鱗並みの硬度を誇り、まともな攻撃を通さない。


「手筈通りいくぞ、やれるな、シズク!」

「当然よ、ウチの本当の力、見せてあげるんだから!」


隣で剣を構えたシズクがそう返す。



~冒険者クラン「バベルブリゲード」仮拠点~



時は、3日前に遡る。


そこには、バベルブリゲードの主戦力となる5人が集まっていた。


「第19層の探索?なんだって急に。」


ノアルに呼ばれて集まったウチらが聞かされたのは、方解石の迷宮、その第19階層の探索計画である。


「急って事もないさ。元々考えていた事ではあるんだ。そして、第19層の探索に必要な最後のピースが手に入った。」

「あぁ、なるほどね。」


ノアルの言葉に、アレスだけが納得した顔で頷いている。アイザックやミラは首を傾げている辺り、新参のウチだけが理解できない何かでは無いらしい。


「どういう事よ、ノアル。」


だから、素直に聞いてみる。


「あの迷宮の第19階層には、方解岩兵(カルサイトゴーレム)っていう厄介な魔物そこら中にがいるんだ。」

方解岩兵(カルサイトゴーレム)?第10層までに出現する魔物はひと通り調べたけど、そんな名前は見なかったわね。って事は。」

「そう、深層のみに現れるタイプの魔物だ。第16層以降でしか確認されていない。」


そういうタイプの魔物は厄介な性質を持つ事が多い。


「こいつの身体はとんでもなく硬い。以前17層で戦った時は、俺の《(ファイナル)撃穿(ぺネトレイション)》くらいしか有効打が無かった。あの技は発動に時間がかかるし、魔力の消費も激しい。あんなのが何体も出てくる階層なんて、俺たちだけじゃ手が付けられない、そう思っていた。」


なるほど、話が見えてきた。


「それを、ウチに斬れって?どうしてウチがそんな事出来ると思うのよ。」

「出来るだろ?」


当然のように言ってくる。


「何度か一緒に戦ってる時、もしかしたら、と思ってたが、確信したのは方解竜(カルサイトドラゴン)に付けられた傷跡を見た時だ。あれを成したお前なら、方解岩兵(カルサイトゴーレム)くらい斬れるさ。」



~方解石の迷宮・第19層~



ガシャン、ガシャン、と地面を揺らしながら、方解岩兵(カルサイトゴーレム)がウチらに向かってくる。


「こっちだ!」


キーン、とアレスが剣先で床を叩き、甲高い音を鳴らす。その音の波に、仄かに魔力を感じる。


誘響剣(レイジベイション)》、護剣士の技の1つ。知性の低い魔物に対して有効な、魔物の敵意を引き付ける技だ。


誘響剣(レイジベイション)》の魔力を受けた方解岩兵(カルサイトゴーレム)が、アレスに向かって一直進に突進していく。


方解岩兵の白き巨腕が、アレスへと振り下ろされる。


それを、彼は剣を斜めに構え、受け流す。


〝奴の攻撃は凄まじい威力だが、とても大振りだ。攻撃の直後は大きな隙がある、そこを狙え〟


確かに、分かりやすい大きな隙だ。

魔力を込めた刀を構え、隙を晒した敵の懐へ飛び込む。


「《月剣撃(クレセントスラッシュ)》」


その一撃は、三日月型の魔力の残光を残しながら、方解岩兵の胴体を真っ二つに斬った。


~~~~~~~~~~


「お前と相性のいい相手だとは思ってたが、まさか一撃とはな。俺たちの出番が無かったぜ。」

「スゲーなシズク!前にアイツと戦った時は、オレの剣は全然効かなかったのによ。」

「僕も驚いたよ。シズク、キミが居てくれればこの階層は攻略したも同然さ!」

「シズクさん、すごい。」


方解岩兵を倒したウチの元に、仲間たちが駆けよってくる。


仲間、か。


「ふふん♪これくらい余裕よ!ウチを誰だと思ってるのかしらっ!」


こんな風に、仲間の為に刀を振るうのも、悪くないかなって。

そんな事を、久しぶりに思った気がする。

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