第1話:険しきを冒す者たち
~方解石の迷宮・第7層~
「グア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ」
大きく開けた空間に、竜の咆哮が響き渡る。人の背丈の数倍もの体躯を誇る赤い竜に挑まんとするのは、4人の冒険者たち。
「アレス、正面は任せるぞ、俺とアイクはそれぞれ側面から攻撃、ミラは障壁の準備だ!」
軽装の槍使いの男が指示を出し、3人の仲間達がそれぞれ動き出す。
「はっ!!」
アレスと呼ばれた、鎧を着た剣士の男は、竜の正面に立ち、爪の一撃をその剣で受け止める。その隙に、指示を出した槍使いが側面から槍を構えて高速で突っ込む。
「《槍突撃》」
側面からの突然の衝撃に体勢を崩した竜に、さらに逆側面からの追撃が襲う。
「《剣撃》」
追撃を放ったのは、アイクと呼ばれた軽装の剣士の男。
強力な攻撃を2発もくらい、大きくよろめいた竜に、槍使いと2人の剣士は更なる追撃を試みるが、
「グア゛ア゛ア゛ア゛!」
苦しそうな咆哮と共に大きな翼を広げ、その風圧で冒険者たちを押しのけながら空へと退避する。
「逃がすかっ、《穿撃》!」
槍使いが槍に魔力を込めて中空の竜に向けて突き出す。穂先から放たれた光の槍は一直線に竜の右翼を貫き、それによって竜は再び地に落ちる。
「今だっ!」
前衛3人はそれぞれの武器に魔力を込めながら、墜落した竜の元へ走り出す。
「《槍撃》」
誰よりも速く竜の元に駆けた槍使いの一撃が、反撃せんとする竜の腕撃を弾き、その腕をかち上げる。
「《剣撃》」
鎧の剣士が、がら空きになった正面から竜の頭部を斬りつける。
「『付与:火炎』、《炎剣撃》」
続いて軽装の剣士が魔法で炎を纏わせた剣で斬りかかる。
「グガア゛ア゛ッ!」
《炎剣撃》をモロにくらい、竜は苦しげな声を上げながら大きく仰け反る。
「っしゃぁ、行けるぞ!」
軽装の剣士が今が好機と追撃にかかるが、
「まてアイク、下がれ!」
「お、おう。」
槍使いの指示ですぐに後退する。
その直後、竜が口からの放った炎が、さっきまで軽装の剣士のいた場所を焼き払った。
「た、助かったぜマスター。アイツ、ブレスまで使えんのかよ!」
「まだだ、第2射がくるぞ!全員ミラの近くまで退避!」
「「了解」」
そうして3人は竜と距離を取る。竜の口内に火属性の魔力が集中していく。さっきの一撃より強力なブレスがくることは明らかで、
「ミラ、頼んだ!」
「うん、『障壁反射』」
後衛で魔法を準備していた魔法使いの女が、鏡のような壁を展開する。
そして、竜のブレスが再び放たれる。
槍使いの男が、その深く槍を構える。
先のブレスとは桁違いの炎が冒険者たちへと迫り来る。
槍の穂先、その一点に槍使いの魔力が注がれていく。
竜のブレスが障壁に阻まれる。
やがて、その槍の穂先は碧く輝きはじめる。
竜は障壁ごと焼き尽くさんと、さらなる魔力をブレスに注ぎ込み、炎はますます激しくなっていく。しかし、その障壁は破られない。
そして、竜が限界までブレスを吐きった瞬間、障壁が解かれ、
「障壁、解除。今です、ノアルさん!」
「行け、ノアル!」
「やっちまえ、マスターっ!」
「はぁぁぁぁっ、《終穿撃》っ!!」
突き出した穂先から極大の光の槍が放たれ、竜の胸を貫いた。
世界には、多くの危険が存在している。辺境の街道には獣や盗賊が出没し、魔力資源の豊かな土地には魔物が湧き出す迷宮がある。そんな危険な場所でしか手に入らない素材を手に入れたり、そんな危険が人々に害をなさぬよう排除したりする事を生業とする者たちがいる。
人々は、彼らをこう呼ぶ。
険しきを冒す者、「冒険者」と。




