第十六章:世界の実態
戦争終結から、13年後。
リベラ王宮の情報省。
タイシは、各国の詳細調査報告を受けていた。
情報省長官のエドガーが、分厚い報告書を置いた。
「タイシ様」
「世界各国の実態調査が完了しました」
「3年かけて、全ての国のデータを収集しました」
タイシは、報告書を手に取った。
「ご苦労様、エドガー」
「これで、世界の真の姿が分かる」
エドガーは、真剣な表情になった。
「タイシ様」
「結果は…厳しいものです」
「リベラ以外の国々は、まだ多くの問題を抱えています」
タイシは、頷いた。
「分かっている」
「だからこそ、調査したんだ」
「問題を知らなければ、解決できない」
タイシは、報告書を開いた。
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**【世界各国・詳細調査報告(戦争終結13年後)】**
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**【1. リベラ共和国】**
**人口:1,800万人**
**奴隷制度:**
- 奴隷数:0人
- 奴隷制度:完全廃止(13年前に廃止)
**経済:**
- GDP:70億金貨/年
- 一人当たりGDP:389金貨/年
**貧困率:**
- 貧困層(年収100金貨未満):0.5%(9万人)
- 低所得層(年収100-300金貨):8%(144万人)
- 中流層(年収300-1,000金貨):82%(1,476万人)
- 富裕層(年収1,000金貨以上):9.5%(171万人)
**食料事情:**
- 穀物生産:3,200万トン/年
- 必要量:1,440万トン/年
- 充足率:222%
- 備蓄率:250%(2.5年分)
- 余剰:1,760万トン(輸出)
**社会指標:**
- 識字率:99%
- 平均寿命:78歳
- 幸福度:98%
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**【2. グランディア帝国】**
**人口:2,500万人**
**奴隷制度:**
- 奴隷数:50万人(2%)
- 状況:13年前に奴隷制を廃止したが、一部地域で違法に継続
- 問題:貴族が秘密裏に奴隷を保持
**経済:**
- GDP:5億金貨/年
- 一人当たりGDP:20金貨/年
**貧困率:**
- 貧困層(年収10金貨未満):35%(875万人)
- 低所得層(年収10-50金貨):40%(1,000万人)
- 中流層(年収50-200金貨):20%(500万人)
- 富裕層(年収200金貨以上):5%(125万人)
**食料事情:**
- 穀物生産:1,200万トン/年
- 必要量:2,000万トン/年
- 充足率:60%
- 備蓄率:10%(1.2ヶ月分)
- 不足分:800万トン(リベラから輸入)
**社会問題:**
- 飢餓人口:700万人(28%)
- 識字率:45%
- 平均寿命:60歳
- 幸福度:35%
**改善状況:**
- 13年前と比較して改善はあるが、依然として深刻
- リベラの支援なしでは成立しない経済
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**【3. ノーザン王国】**
**人口:800万人**
**奴隷制度:**
- 奴隷数:80万人(10%)
- 状況:奴隷制度が合法
- 種類:戦争捕虜、犯罪者、債務奴隷
**経済:**
- GDP:4億金貨/年
- 一人当たりGDP:50金貨/年
**貧困率:**
- 貧困層(年収20金貨未満):25%(200万人)
- 低所得層(年収20-100金貨):45%(360万人)
- 中流層(年収100-300金貨):25%(200万人)
- 富裕層(年収300金貨以上):5%(40万人)
**食料事情:**
- 穀物生産:600万トン/年
- 必要量:640万トン/年
- 充足率:94%
- 備蓄率:30%(3.6ヶ月分)
- 不足分:40万トン(リベラから輸入)
**社会指標:**
- 飢餓人口:120万人(15%)
- 識字率:60%
- 平均寿命:65歳
- 幸福度:55%
**特徴:**
- 獣人族が主要民族
- 狩猟・牧畜が主産業
- リベラとの関係は良好
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**【4. サウザン連邦】**
**人口:1,200万人**
**奴隷制度:**
- 奴隷数:0人
- 状況:500年前に廃止
- エルフ族の価値観:奴隷制度は野蛮
**経済:**
- GDP:10億金貨/年
- 一人当たりGDP:83金貨/年
**貧困率:**
- 貧困層(年収30金貨未満):10%(120万人)
- 低所得層(年収30-150金貨):50%(600万人)
- 中流層(年収150-500金貨):35%(420万人)
- 富裕層(年収500金貨以上):5%(60万人)
**食料事情:**
- 穀物生産:1,100万トン/年
- 必要量:960万トン/年
- 充足率:115%
- 備蓄率:80%(9.6ヶ月分)
- 余剰:140万トン(輸出)
**社会指標:**
- 飢餓人口:80万人(6.7%)
- 識字率:85%
- 平均寿命:120歳(エルフの長寿)
- 幸福度:75%
**特徴:**
- エルフ族の国
- 農業と芸術が発達
- リベラに次ぐ豊かさ
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**【5. イースタン商業同盟】**
**人口:1,500万人**
**奴隷制度:**
- 奴隷数:150万人(10%)
- 状況:奴隷制度が合法
- 種類:債務奴隷が大半(借金返済のため)
**経済:**
- GDP:15億金貨/年
- 一人当たりGDP:100金貨/年
**貧困率:**
- 貧困層(年収40金貨未満):20%(300万人)
- 低所得層(年収40-200金貨):45%(675万人)
- 中流層(年収200-600金貨):30%(450万人)
- 富裕層(年収600金貨以上):5%(75万人)
**食料事情:**
- 穀物生産:1,300万トン/年
- 必要量:1,200万トン/年
- 充足率:108%
- 備蓄率:50%(6ヶ月分)
- 余剰:100万トン(輸出)
**社会指標:**
- 飢餓人口:200万人(13.3%)
- 識字率:70%
- 平均寿命:68歳
- 幸福度:60%
**特徴:**
- ドワーフ族と人族の混合国
- 商業と鉱業が発達
- 経済的には豊かだが格差が大きい
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**【6. 魔族領】**
**人口:600万人**
**奴隷制度:**
- 奴隷数:0人
- 状況:魔族は奴隷制度を軽蔑
- 理由:魔族自身が差別されてきた歴史
**経済:**
- GDP:3億金貨/年
- 一人当たりGDP:50金貨/年
**貧困率:**
- 貧困層(年収20金貨未満):30%(180万人)
- 低所得層(年収20-100金貨):50%(300万人)
- 中流層(年収100-300金貨):18%(108万人)
- 富裕層(年収300金貨以上):2%(12万人)
**食料事情:**
- 穀物生産:400万トン/年
- 必要量:480万トン/年
- 充足率:83%
- 備蓄率:20%(2.4ヶ月分)
- 不足分:80万トン(リベラから輸入)
**社会指標:**
- 飢餓人口:150万人(25%)
- 識字率:80%
- 平均寿命:90歳(魔族の長寿)
- 幸福度:50%
**特徴:**
- 魔族、ダークエルフ、オーク等の混合
- 魔法技術は高度だが、農業が弱い
- リベラとの同盟で改善中
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**【世界全体・統計】**
**総人口:8,400万人**
**奴隷数:**
- 合計:280万人
- 全人口比:3.3%
- 内訳:
- リベラ:0人(0%)
- 帝国:50万人(2%)←違法
- ノーザン:80万人(10%)
- サウザン:0人(0%)
- イースタン:150万人(10%)
- 魔族領:0人(0%)
**貧困率(平均):**
- 貧困層:21.8%(1,831万人)
- 最良:リベラ 0.5%
- 最悪:帝国 35%
**食料充足率(平均):**
- 世界全体:98%
- リベラの余剰輸出で世界が成立
**国別食料充足率:**
- リベラ:222%
- サウザン:115%
- イースタン:108%
- 魔族領:83%
- ノーザン:94%
- 帝国:60%
**識字率(平均):**
- 世界全体:73%
- 最良:リベラ 99%
- 最悪:帝国 45%
**平均寿命(平均):**
- 世界全体:72歳
- 最良:サウザン 120歳
- 最悪:帝国 60歳
**幸福度(平均):**
- 世界全体:62%
- 最良:リベラ 98%
- 最悪:帝国 35%
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タイシは、報告書を読み終えた。
そして、深いため息をついた。
「エドガー」
「世界は、まだこんなに苦しんでいるのか」
エドガーは、頷いた。
「はい」
「特に、帝国の状況は深刻です」
「13年前、720万人の奴隷をリベラに移しましたが」
「貴族たちは秘密裏に50万人の奴隷を保持しています」
「貧困率35%、飢餓人口700万人」
「これは、人道的危機です」
タイシは、拳を握った。
「そして、ノーザンとイースタンにも」
「合わせて230万人の奴隷がいる」
「世界全体で280万人」
「これは、許されない」
リカルドが、言った。
「タイシ様」
「しかし、他国の内政に干渉することは」
「困難です」
タイシは、首を横に振った。
「いや」
「方法はある」
「経済的圧力だ」
タイシは、エドガーとリカルドを見た。
「リベラは、世界最大の食料輸出国だ」
「年間1,760万トンを輸出している」
「帝国は800万トン、魔族領は80万トン、ノーザンは40万トンを」
「全てリベラから輸入している」
「つまり、リベラがなければ、これらの国は飢える」
エドガーは、理解した。
「タイシ様」
「まさか…」
タイシは、頷いた。
「ああ」
「奴隷制度廃止を条件に、食料を輸出する」
「拒否すれば、輸出停止」
「これなら、内政干渉ではなく、貿易条件だ」
リカルドは、心配そうに言った。
「ですが、それは強硬策です」
「各国との関係が悪化する可能性があります」
タイシは、真剣な表情で答えた。
「それでも、やる」
「280万人の奴隷を見捨てることはできない」
「彼らも、人間だ」
「自由に生きる権利がある」
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1週間後。
リベラ王宮の大広間。
タイシは、各国の大使を召集していた。
出席者:
- 帝国大使:マルクス
- ノーザン大使:ガロン
- イースタン大使:ドワイト
タイシは、壇上に立った。
「本日、皆様をお呼びしたのは」
「重要な提案があるからです」
3人の大使が、緊張した。
タイシは、続けた。
「リベラ共和国は、本日より」
「奴隷制度を持つ国への食料輸出を」
「段階的に停止します」
3人が、驚愕した。
「何ですと!?」
タイシは、冷静に説明した。
「ただし、条件があります」
「奴隷制度を完全に廃止した国には」
「従来通り、食料を輸出します」
「それどころか、輸出量を増やし」
「価格も引き下げます」
帝国大使マルクスが、抗議した。
「タイシ様!」
「それは、内政干渉です!」
「我が国の制度に口を出すとは!」
タイシは、冷ややかに答えた。
「いいえ」
「これは、貿易条件です」
「リベラは、奴隷制度を支持する国とは」
「取引したくないだけです」
ノーザン大使ガロンが、言った。
「だが、我が国は奴隷がいなければ」
「経済が成立しません!」
「奴隷労働は、重要な労働力です!」
タイシは、首を横に振った。
「それは、間違いです」
「13年前、帝国は720万人の奴隷を失いました」
「ですが、経済は崩壊しませんでした」
「それどころか、改善しました」
「奴隷制度は、経済成長を阻害するのです」
イースタン大使ドワイトが、尋ねた。
「では、タイシ様」
「奴隷を解放したとして」
「彼らをどうすればいいのですか?」
「150万人もの元奴隷を、どう養うのですか?」
タイシは、答えた。
「リベラが支援します」
「帝国の時と同じように」
「元奴隷たちに、土地と住居を提供します」
「農業技術を教えます」
「ゴーレム農機を提供します」
「そして、1年間の食料と種を無償で提供します」
タイシは、続けた。
「さらに、リベラは」
「奴隷制度を廃止した国に対して」
「10年間、無利子融資を行います」
「金額は、GDP の20%まで」
「これで、経済的混乱を最小限にできます」
3人の大使は、黙り込んだ。
タイシは、最後通告をした。
「期限は、1年です」
「1年以内に奴隷制度を廃止した国には」
「上記の支援を行います」
「廃止しない国には、食料輸出を停止します」
「以上です」
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6ヶ月後。
イースタン商業同盟が、奴隷制度廃止を宣言した。
「イースタン商業同盟は、本日より」
「奴隷制度を完全に廃止します」
「全ての奴隷、150万人を解放します」
リベラは、即座に支援を開始した。
元奴隷たちに、土地と住居を提供。
農業技術を教える。
ゴーレム農機を提供。
1年間の食料と種を無償提供。
そして、イースタンのGDP 15億金貨の20%、3億金貨を無利子融資。
イースタンの経済は、混乱することなく移行した。
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9ヶ月後。
ノーザン王国も、奴隷制度廃止を宣言した。
「ノーザン王国は、奴隷制度を廃止します」
「80万人の奴隷を、全て解放します」
リベラは、同様の支援を開始。
ノーザンのGDP 4億金貨の20%、8,000万金貨を無利子融資。
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11ヶ月後。
グランディア帝国も、ついに決断した。
「帝国は、違法に保持していた50万人の奴隷を」
「全て解放します」
「そして、奴隷制度の完全廃止を、法律で明記します」
リベラは、帝国にも支援を実施。
帝国のGDP 5億金貨の20%、1億金貨を無利子融資。
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1年後。
世界から、奴隷制度が完全に消滅した。
**【世界の奴隷数】**
- 13年前:720万人(帝国のみ)
- 1年前:280万人(帝国50万、ノーザン80万、イースタン150万)
- 現在:**0人**
タイシは、王宮のバルコニーに立っていた。
手には、最新の報告書。
「世界の奴隷数:0人」
タイシは、涙を流した。
「ついに…」
「ついに、達成した」
「世界から、奴隷制度が消えた」
エドガーが、タイシの隣に立った。
「タイシ様」
「おめでとうございます」
「あなたは、280万人を救いました」
タイシは、首を横に振った。
「いや、まだだ」
「奴隷制度は廃止されたが」
「貧困は残っている」
「帝国の貧困率は、まだ35%だ」
「世界の貧困率は、22%」
「1,800万人が、貧困に苦しんでいる」
タイシは、拳を握った。
「次は、貧困を無くす」
「全ての人が、幸せに暮らせる世界を作る」
「それが、私の使命だ」
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**【世界・最新データ(14年後)】**
**奴隷数:0人**(完全廃止達成)
**貧困率(平均):21.8%**
- リベラ:0.5%
- サウザン:10%
- イースタン:20%
- ノーザン:25%
- 魔族領:30%
- 帝国:35%
**食料充足率(平均):98%**
- リベラの輸出で世界が成立
**識字率(平均):73%**
**平均寿命(平均):72歳**
**幸福度(平均):62%**
**タイシの次の目標:**
- 世界の貧困率を10%以下に
- 世界の食料充足率を120%に
- 世界の識字率を90%以上に
- 世界の幸福度を80%以上に
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