第十五章:海を繋ぐ
戦争終結から、8年後。
タイシは、妻のマリアと共に、リベラの港を訪れていた。
マリアは、タイシの5人の妻の一人。
元海賊だったが、現在はリベラの海運業に従事していた。
そして、妊娠8ヶ月。
お腹が大きく膨らんでいた。
マリアは、港に停泊している船を見た。
「タイシ」
「この港、ずいぶん変わったな」
タイシは、頷いた。
「ああ」
「7年前、ここは小さな漁港だった」
「今は、大陸最大級の貿易港だ」
港には、無数の船が停泊していた。
木造船、帆船、そして
ゴーレム船。
タイシが7年前に開発した、ゴーレムを動力とする船。
マリアは、ゴーレム船を指した。
「あれ、懐かしいな」
「7年前、お前と初めて会った時、乗ってた船だ」
タイシは、微笑んだ。
「あの時、君は海賊だった」
「私たちを襲おうとした」
マリアは、笑った。
「へへ、悪かったな」
「でも、お前に負けて、人生変わったよ」
「海賊から、まともな商人になった」
「そして、お前の妻になった」
マリアは、お腹を撫でた。
「もうすぐ、母親にもなる」
タイシは、マリアの肩を抱いた。
「マリア」
「君は、本当に変わったね」
マリアは、タイシを見た。
「タイシ」
「実は、相談がある」
タイシは、尋ねた。
「何?」
マリアは、真剣な表情になった。
「私、ゴーレム船の事業をやりたい」
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翌日。
リベラ王宮の会議室。
タイシ、マリア、そしてスミス商会の代表マイケル・スミスが集まっていた。
同席したのは、レイチェル、クリス、ヒューズ、アマンダ。
タイシが、説明を始めた。
「皆さん、本日お集まりいただいたのは」
「ゴーレム船の事業化についてです」
マイケルは、目を輝かせた。
「ゴーレム船!」
「あの、7年前にタイシ様が開発された!」
タイシは、頷いた。
「はい」
「当時、イースタン商業同盟への航海で使用しました」
「性能は実証済みです」
レイチェルが、資料を取り出した。
「ゴーレム船の仕様を確認させてください」
**【ゴーレム船(初期型)・仕様】**
**外観:**
- 全長:30メートル
- 全幅:8メートル
- 喫水:3メートル
**性能:**
- 最高速度:時速40km(通常の帆船の2倍)
- 航続距離:無制限(ゴーレムは疲れない)
- 積載量:100トン
- 乗員:20人
**動力:**
- 大型ゴーレムエンジン×2基
- 燃料不要(魔力で駆動)
**利点:**
- 風に左右されない
- 24時間航行可能
- 人件費削減(船員不要)
- 安全性が高い
**価格(推定):**
- 製造原価:5,000金貨
- 販売価格:8,000金貨
クリスが、言った。
「素晴らしい性能ですね」
「帆船の2倍の速度で、無制限に航行できる」
ヒューズが、補足した。
「人件費も大幅に削減できます」
「通常の帆船は、20人の船員が必要ですが」
「ゴーレム船なら、操縦士1人で十分です」
アマンダが、計算した。
「運航コストは、従来の10分の1です」
「投資回収期間は、2年」
マイケルは、興奮した。
「これは、革命的です!」
「タイシ様、スミス商会に販売させてください!」
タイシは、微笑んだ。
「もちろんです」
「それが、今日の目的です」
タイシは、続けた。
「スミス商会に、ゴーレム船の独占販売権を与えます」
「そして、各国に代理店を展開してください」
マイケルは、深く頭を下げた。
「ありがとうございます!」
「必ず成功させます!」
タイシは、マリアを見た。
「そして、マリア」
「君には、特別な役割がある」
マリアは、前に出た。
「マリアさん」
マイケルが、尋ねた。
「あなたも、この事業に参加されるのですか?」
マリアは、頷いた。
「ああ」
「私は、スミス商会の代理店になる」
「そして、ゴーレム船を改良した」
「ゴーレムフェリーを販売する」
マイケルは、驚いた。
「ゴーレムフェリー!?」
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**【ゴーレムフェリー・仕様】**
**外観:**
- 全長:50メートル(ゴーレム船の1.7倍)
- 全幅:12メートル
- 喫水:4メートル
- 3階建て構造
**性能:**
- 最高速度:時速50km
- 航続距離:無制限
- 積載量:300トン
- 乗客定員:500人
**設備:**
- 客室:200室
- 1等室:50室(個室、豪華)
- 2等室:100室(個室、標準)
- 3等室:50室(相部屋、格安)
- レストラン:3カ所(500人収容)
- ラウンジ:5カ所
- 展望デッキ
- 医務室
- ゴーレム警備:20体
**動力:**
- 超大型ゴーレムエンジン×4基
- 補助推進器×2基
**安全装備:**
- 救命ボート×20隻
- 緊急脱出用ゴーレム
- 魔法障壁発生装置
**価格:**
- 製造原価:3万金貨
- 販売価格:5万金貨
**運賃設定(例:リベラ→イースタン商業同盟):**
- 1等室:100金貨
- 2等室:50金貨
- 3等室:20金貨
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マイケルは、仕様を見て、唸った。
「これは…客船ですね」
マリアは、頷いた。
「そうだ」
「貨物じゃなく、人を運ぶ」
「リベラと各国を結ぶ、定期航路を作る」
レイチェルが、言った。
「素晴らしいアイデアです」
「現在、大陸間の移動は非常に困難です」
「陸路は、時間がかかる」
「海路は、危険が多い」
「ゴーレムフェリーなら、安全で快適に移動できます」
クリスが、補足した。
「特に、リベラと魔族領の航路は需要が高いでしょう」
「陸路だと、1ヶ月かかります」
「ゴーレムフェリーなら、1週間です」
ヒューズが、計算した。
「定員500人、1航海1週間」
「年間26航海可能」
「1航海の収入を平均30金貨×500人=1万5,000金貨とすると」
「年間収入39万金貨」
アマンダが、続けた。
「運航コストは、年間10万金貨」
「純利益29万金貨」
「投資回収期間は、2年弱」
マイケルは、興奮した。
「これは、大事業です!」
「タイシ様、マリアさん」
「スミス商会が、全力で支援します!」
タイシは、微笑んだ。
「ありがとうございます」
「では、事業計画を詰めましょう」
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**【ゴーレム船・ゴーレムフェリー事業計画】**
**フェーズ1:生産体制の確立(1年目)**
**ゴーレム船(貨物船):**
- 年間生産:100隻
- 販売価格:8,000金貨/隻
- 目標販売数:100隻/年
- 販売額:8,000万金貨/年
**ゴーレムフェリー(客船):**
- 年間生産:20隻
- 販売価格:5万金貨/隻
- 目標販売数:20隻/年
- 販売額:1,000万金貨/年
**合計販売額:9,000万金貨/年**
**フェーズ2:代理店展開(2年目)**
**代理店設置予定地:**
- リベラ本土:本店
- ノーザン王国:2店舗
- サウザン連邦:3店舗
- イースタン商業同盟:3店舗
- 魔族領:2店舗
- グランディア帝国:2店舗
- 合計:13店舗
**各店舗の役割:**
- ゴーレム船・フェリーの販売
- 保守・メンテナンス
- 航路情報提供
- チケット販売
**フェーズ3:定期航路開設(3年目)**
**主要航路:**
**1. リベラ→イースタン商業同盟**
- 距離:2,000km
- 所要時間:40時間(1日16時間)
- 頻度:週2便
- 使用船:ゴーレムフェリー×6隻
**2. リベラ→魔族領**
- 距離:3,000km
- 所要時間:60時間(2.5日)
- 頻度:週1便
- 使用船:ゴーレムフェリー×4隻
**3. リベラ→サウザン連邦**
- 距離:1,500km
- 所要時間:30時間(1.25日)
- 頻度:週3便
- 使用船:ゴーレムフェリー×8隻
**4. リベラ→ノーザン王国**
- 距離:1,000km
- 所要時間:20時間(1日未満)
- 頻度:週5便
- 使用船:ゴーレムフェリー×10隻
**合計使用船:28隻**
**年間乗客数予測:**
- 28隻×26航海×500人=36万4,000人/年
**年間運賃収入:**
- 平均運賃30金貨×36万4,000人=1,092万金貨/年
**フェーズ4:世界運航(5年目)**
**新規航路:**
- 帝国→イースタン商業同盟
- サウザン連邦→魔族領
- ノーザン王国→サウザン連邦
- 環大陸航路(全ての国を周回)
**総使用船:100隻**
**年間乗客数予測:**
- 100隻×26航海×500人=130万人/年
**年間運賃収入:**
- 平均運賃30金貨×130万人=3,900万金貨/年
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3ヶ月後。
第一号ゴーレムフェリー「リベラ号」が完成した。
リベラの造船所。
タイシ、マリア、マイケル、そして5,000人の見学者が集まっていた。
全長50メートルの巨大な船。
3階建ての豪華な構造。
船体には、「LIBERA」の文字。
マリアが、感慨深げに言った。
「タイシ」
「この船、すげえな」
「7年前、お前が作ったゴーレム船の10倍はでかい」
タイシは、微笑んだ。
「ああ」
「君のアイデアを形にした」
「客船として、世界を繋ぐ」
マリアは、涙ぐんだ。
「ありがとう、タイシ」
「海賊だった私に、こんなチャンスをくれて」
タイシは、マリアを抱きしめた。
「君は、もう海賊じゃない」
「立派な事業家だ」
マリアは、笑った。
「へへ、そうだな」
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1週間後。
リベラ号の処女航海。
航路は、リベラ→イースタン商業同盟。
乗客は、500人。
マリアが、船長として指揮を執っていた。
「出航!」
ゴーレムエンジンが、唸った。
リベラ号が、ゆっくりと港を離れた。
乗客たちは、デッキで手を振っていた。
「さらば、リベラ!」
「行ってきます!」
船が、沖に出た。
速度が上がる。
時速50キロメートル。
通常の帆船の2.5倍。
船内は、快適だった。
1等室の乗客が、窓から海を眺めていた。
「素晴らしい!」
「揺れも少ない!」
2等室の乗客が、レストランで食事をしていた。
「この料理、美味しい!」
「船の上とは思えない!」
3等室の乗客が、ラウンジで休んでいた。
「20金貨で、この快適さ!」
「信じられない!」
40時間後。
リベラ号は、イースタン商業同盟の港に到着した。
乗客たちは、大満足だった。
「また乗りたい!」
「次は1等室に乗る!」
イースタンの港には、5,000人の見物人が集まっていた。
「これが、噂のゴーレムフェリーか!」
「すごい!」
マリアは、タラップを降りた。
そして、港で待っていたイースタンの商業代表に挨拶した。
「ヴィクター・グレイ様」
「お久しぶりです」
ヴィクターは、笑った。
「マリア船長!」
「素晴らしい船だ!」
「我がイースタンにも、代理店を作ってくれ!」
マリアは、頷いた。
「もちろんです」
「スミス商会が、すぐに対応します」
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1年後。
ゴーレム船・ゴーレムフェリー事業は、大成功していた。
**【事業実績(1年目)】**
**ゴーレム船(貨物船)販売:**
- 販売隻数:120隻(目標100隻を超過)
- 販売額:9,600万金貨
- 主な購入者:
- リベラ商人:50隻
- イースタン商人:30隻
- サウザン商人:20隻
- その他:20隻
**ゴーレムフェリー(客船)販売:**
- 販売隻数:25隻(目標20隻を超過)
- 販売額:1,250万金貨
- 主な購入者:
- マリア海運:10隻(自社運航)
- イースタン:8隻
- サウザン:5隻
- 魔族領:2隻
**合計販売額:1億850万金貨**
**スミス商会の収益:**
- 手数料(10%):1,085万金貨
**マリア海運の収益:**
- フェリー運航収入:1,200万金貨/年
- 代理店手数料:500万金貨/年
- 合計:1,700万金貨/年
**代理店展開:**
- 設置済み:13店舗
- 従業員:500人
**定期航路:**
- 開設済み:4航路(リベラ→イースタン、魔族領、サウザン、ノーザン)
- 年間乗客数:40万人
- 顧客満足度:98%
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2年後。
リベラ王宮の会議室。
タイシは、マリアと共に、最新の事業報告を受けていた。
マリアは、すでに出産を終えており、娘を抱いていた。
娘の名前は、「マリナ」。
海を意味する名前。
マイケルが、報告した。
「タイシ様、マリア様」
「ゴーレムフェリー事業は、大陸を変えています」
レイチェルが、資料を見せた。
「2年間で、延べ100万人が利用しました」
「これは、大陸史上最大の人の移動です」
クリスが、補足した。
「特に、異人種間の交流が増えています」
「人族がエルフの国を訪れ」
「獣人が魔族領を訪れる」
「これまでなかったことです」
ヒューズが、言った。
「さらに、経済効果も絶大です」
「観光業が、各国で急成長しています」
アマンダが、計算結果を示した。
「ゴーレムフェリーによる経済波及効果」
「年間5億金貨と推定されます」
タイシは、驚いた。
「5億金貨!?」
マイケルは、頷いた。
「はい」
「人の移動が、経済を活性化させています」
「リベラだけでなく、大陸全体が豊かになっています」
マリアは、娘のマリナを見た。
「タイシ」
「この子が大きくなる頃には」
「世界中を、自由に旅できるようになる」
「それって、素敵だよな」
タイシは、微笑んだ。
「ああ」
「それが、私の夢だ」
「全ての人が、幸せに暮らせる世界」
「国境も、人種も、関係ない」
「みんなが繋がる世界」
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5年後。
ゴーレムフェリーは、世界中を運航していた。
合計100隻。
4つの主要航路に加え、10以上の新規航路が開設されていた。
**【主要航路一覧(5年後)】**
1. リベラ→イースタン商業同盟(週5便)
2. リベラ→魔族領(週3便)
3. リベラ→サウザン連邦(週7便)
4. リベラ→ノーザン王国(週10便)
5. イースタン→魔族領(週2便)
6. サウザン→ノーザン(週5便)
7. 帝国→イースタン(週3便)
8. 環大陸航路(月2便、全ての国を周回)
**年間乗客数:130万人**
**年間運賃収入:3,900万金貨**
**経済波及効果:年間10億金貨**
マリアの娘、マリナは5歳になっていた。
マリアとマリナは、リベラ号のデッキに立っていた。
マリナが、海を見て言った。
「ママ、海って広いね」
マリアは、頷いた。
「ああ」
「でも、今は繋がってる」
「この船で、世界中に行けるんだ」
マリナは、目を輝かせた。
「すごい!」
「私も、大きくなったら、船長になりたい!」
マリアは、娘を抱きしめた。
「いいね」
「お前なら、きっとなれるよ」
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その夜。
タイシとマリアは、自宅のバルコニーに立っていた。
眼下には、リベラの港。
無数のゴーレムフェリーが、停泊している。
マリアは、タイシに寄り添った。
「タイシ」
「7年前、私は海賊だった」
「お前を襲って、全財産を奪おうとした」
「でも、お前に負けた」
「そして、人生が変わった」
マリアは、タイシを見た。
「お前は、私に夢をくれた」
「まともな仕事をくれた」
「家族をくれた」
「そして、世界を繋ぐ事業をくれた」
マリアは、涙を流した。
「ありがとう、タイシ」
「お前と結婚できて、本当に良かった」
タイシは、マリアを抱きしめた。
「マリア」
「君は、本当に立派になったよ」
「元海賊が、今や大陸最大の海運会社の社長だ」
「誇りに思う」
マリアは、笑った。
「へへ、照れるな」
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**【リベラ共和国・最新データ(13年後)】**
**総人口:1,800万人**
**経済:**
- GDP:70億金貨/年
- 一人当たりGDP:389金貨/年
**海運事業:**
- ゴーレム船:500隻稼働
- ゴーレムフェリー:100隻稼働
- 年間乗客数:130万人
- 年間貨物輸送量:5,000万トン
**マリア海運:**
- 保有フェリー:30隻
- 従業員:2,000人
- 年間収益:5,000万金貨
- 代理店:20店舗(世界各地)
**スミス商会:**
- 年間収益:5億金貨
- ゴーレムトラック:2億金貨
- ゴーレムカー:1億金貨
- ゴーレム船・フェリー:1億金貨
- 食料・魔物素材:1億金貨
- 従業員:1万人
- 代理店:200店舗
**経済波及効果:**
- ゴーレムフェリーによる観光業成長:10億金貨/年
- 大陸全体の経済成長に貢献
**タイシの家族:**
- 年齢:35歳(戦争時22歳→13年後)
- 妻:5人
- 子供:5人
- エレノアの娘:エリア(人族×エルフ、4歳)
- ルナの息子:レオ(人族×獣人、3歳)
- グレタの娘:グレイス(人族×ドワーフ、2歳)
- シャドウの娘:シェイド(人族×ダークエルフ、1歳)
- マリアの娘:マリナ(人族、5歳)
**世界の変化:**
- 年間130万人が船で国境を越える
- 異人種間の交流が爆発的に増加
- 観光業が各国で主要産業に
- 世界が、より繋がった
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