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王国簒奪物語  作者: 慈架太子


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第八章:天の裁き


空中。


タイシとアルカディウスの魔法戦は、さらに激しさを増していた。


アルカディウスが、魔法を放った。


「クリムゾンブレイズ!」


赤い炎の柱が、タイシを襲った。


温度は5,000度。


鋼鉄すら溶かす熱量。


タイシは、回避しながら反撃した。


「アイスコフィン!」


巨大な氷の棺が、アルカディウスを閉じ込めようとした。


だが、アルカディウスは炎で氷を溶かした。


「ジュワーーー!」


蒸気が、立ち上った。


二人の魔法使いは、互いに一歩も引かなかった。


だが、タイシは考えていた。


*このままでは、埒が明かない*


*アルカディウスは強い*


*私と互角、いや、それ以上かもしれない*


*だが、私には時間がない*


*ジャッジメントを発動しなければ*


*地上の戦いが、始まってしまう*


タイシは、決断した。


「アルカディウス!」


「そろそろ、本気を出させてもらいます!」


アルカディウスは、笑った。


「ほう!」


「お前もまだ、本気ではなかったのか!」


「面白い!」


「来い、タイシ!」


タイシは、両手を天に向けた。


魔力が、爆発的に高まった。


青い光が、虹色に変わった。


大気が、震えた。


地上の兵士たちは、その魔力の大きさに恐怖した。


「何だ、あの魔力は!」


「桁違いだ!」


タイシは、呪文を唱えた。


「天地の理、我に従え」


「時空を超えし知識の力」


「汝の名は」


タイシの声が、響き渡った。


「タイムストップ!」


その瞬間。


時間が、止まった。


いや、正確には


タイシ以外の全てが、動きを止めた。


アルカディウスは、空中で静止している。


地上の兵士たちも、静止している。


風も、雲も、全てが止まった。


タイシだけが、動ける。


*時間停止魔法*


*持続時間は、10秒*


*その間に、決着をつける*


タイシは、高速で動いた。


アルカディウスの周囲に、魔法陣を展開した。


1つ、2つ、3つ…10個の魔法陣。


そして、魔法陣に魔力を注ぎ込んだ。


5秒経過。


タイシは、魔法陣の準備を完了させた。


さらに、自分自身にも魔法をかけた。


「マナブースト!」


タイシの魔力が、さらに2倍になった。


8秒経過。


タイシは、最後の準備をした。


「セブンスシール解放!」


タイシの体内に封印されていた、第7の魔力源が解放された。


9秒経過。


タイシは、叫んだ。


「時間停止、解除!」


10秒経過。


時間が、再び動き出した。


アルカディウスは、何が起こったのか分からなかった。


だが、すぐに気づいた。


自分の周囲に、10個の魔法陣がある。


そして、タイシの魔力が、さらに強大になっている。


アルカディウスは、驚愕した。


「これは…」


「時間停止魔法!?」


「お前、そんな魔法まで使えるのか!」


タイシは、答えた。


「はい」


「そして、これで終わりです」


タイシは、10個の魔法陣を起動させた。


「十重封鎖」


「ヘヴンズケージ!」


10個の魔法陣から、光の鎖が放たれた。


光の鎖は、アルカディウスを縛り上げた。


「ぐっ!」


「これは、封印魔法か!」


アルカディウスは、魔法を使おうとした。


だが、魔力が出ない。


光の鎖が、魔力を封じている。


アルカディウスは、認めた。


「くっ…」


「やられたか」


「時間停止魔法で、封印陣を展開していたのか」


「見事だ、タイシ」


タイシは、アルカディウスに近づいた。


「アルカディウス」


「あなたは強かった」


「私が今まで戦った中で、最強の魔法使いです」


「ですが、今日は私が勝ちました」


アルカディウスは、笑った。


「ああ、お前の勝ちだ」


「だが、タイシ」


「一つ、教えてくれ」


タイシは、尋ねた。


「何でしょうか?」


アルカディウスは、真剣な表情で言った。


「お前は、何のために戦っている?」


「権力か?」


「名声か?」


「それとも」


タイシは、答えた。


「平和のためです」


「この戦争を終わらせ」


「人々が安心して暮らせる世界を作る」


「それが、私の目的です」


アルカディウスは、しばらく沈黙した。


そして、言った。


「分かった」


「ならば、私は負けよう」


「お前のような男が勝つべきだ」


タイシは、驚いた。


「アルカディウス…」


アルカディウスは、続けた。


「タイシ」


「ジャッジメントを使え」


「そして、この戦争を終わらせろ」


「私は、もう邪魔をしない」


タイシは、深く頭を下げた。


「ありがとうございます」


タイシは、アルカディウスを地上に降ろした。


そして、封印を少し緩めた。


動けるが、魔法は使えない程度に。


アルカディウスは、地上に座った。


「さあ、タイシ」


「お前の超大魔法を見せてくれ」


「ジャッジメントを」


---


タイシは、空中で魔力を集め始めた。


そして、魔法通信で全軍に命令した。


「全魔法使い、魔力転送開始!」


その瞬間。


同盟軍の魔法使い全員が、魔法を唱えた。


魔族軍の魔法使い2万人。


サウザン連邦の魔法使い5千人。


ノーザン王国の魔法使い2千人。


リベラ共和国の魔法使い3千人。


合計3万人の魔法使いが、一斉に魔力を放出した。


「魔力転送!」


3万人の魔力が、光の線となってタイシに集まった。


タイシの周囲に、無数の光の線。


まるで、星々の光のように。


タイシは、その膨大な魔力を受け止めた。


*すごい…*


*こんなに多くの魔力*


*3万人分の魔力*


*これなら、ジャッジメントを発動できる*


タイシの体が、光輝き始めた。


魔力が、溢れ出した。


虹色の光。


いや、純白の光。


タイシは、まるで天使のように輝いていた。


地上の兵士たちは、その光景に息を呑んだ。


「これは…」


「神か?」


帝国軍の兵士たちは、恐怖した。


「何だ、あれは!」


「化け物だ!」


ルキウス将軍は、叫んだ。


「全軍、撤退!」


「撤退だ!」


だが、もう遅かった。


タイシは、両手を天に向けた。


そして、呪文を唱えた。


「天地万物を統べる者よ」


「我が声を聞け」


「邪悪を裁き、正義を顕す」


「汝の名は」


タイシの声が、天地に響き渡った。


「ジャッジメント!!!」


その瞬間。


空が、割れた。


雲が、消えた。


そして


天から、無数の光の槍が降ってきた。


1本、10本、100本、1,000本、10,000本。


数えきれないほどの光の槍。


それは、まるで雨のように。


いや、滝のように。


天から、地上に降り注いだ。


光の槍は、帝国軍の陣地に集中した。


直径5キロメートルの範囲。


その範囲内にいる全ての敵を、貫いた。


「うわああああああ!」


「助けてくれ!」


「神よ!」


帝国兵の悲鳴が、響き渡った。


だが、光の槍は容赦なく降り続けた。


1秒間に1,000本。


10秒間で1万本。


30秒間で3万本。


光の槍が、大地に突き刺さった。


大地は、光で覆われた。


まるで、昼間のように明るくなった。


いや、昼間以上に。


そして、1分後。


光の槍が、止んだ。


煙が、立ち上った。


塵が、舞った。


やがて、煙が晴れた。


そこには


何もなかった。


帝国軍17万人のうち、約15万人が消滅していた。


生き残ったのは、ジャッジメントの範囲外にいた2万人だけ。


大地には、無数の光の槍が突き刺さっていた。


まるで、墓標のように。


同盟軍の兵士たちは、呆然とした。


「これが…」


「ジャッジメント…」


「超大魔法…」


誰も、言葉を発することができなかった。


あまりにも圧倒的な光景に。


タイシは、空中で膝をついた。


魔力を、使い果たしていた。


*終わった*


*15万人を、殺した*


*いや、消滅させた*


エドガーが、魔法で空に飛んできた。


「タイシ様!」


エドガーは、タイシを支えた。


「大丈夫ですか!?」


タイシは、答えた。


「ああ、大丈夫だ」


「ただ、魔力を使い果たしただけだ」


エドガーは、タイシを地上に降ろした。


タイシは、大地に立った。


周囲には、光の槍。


そして、消えた15万人の帝国兵。


タイシは、膝をついた。


涙が、流れた。


「15万人…」


「私が、殺した…」


エドガーは、タイシの肩を抱いた。


「タイシ様」


「あなたは、戦争を終わらせました」


「もう、これ以上の犠牲は出ません」


ゼノビアが、近づいてきた。


「タイシ」


「よくやりました」


「あなたは、平和をもたらしました」


エドワード3世も、来た。


「タイシ殿」


「見事でした」


フィリップ・サウスも。


「素晴らしい」


マーカス将軍も。


「タイシ様、ありがとうございます」


同盟軍の指導者たちが、タイシを囲んだ。


そして、同盟軍80万人が、歓声を上げた。


「タイシ!」


「タイシ!」


「タイシ!」


勝利の歓声。


戦争の終わりを告げる歓声。


だが、タイシは泣いていた。


15万人の命を奪った、悲しみで。


---


同じ頃。


帝国軍の残存兵2万人は、逃走していた。


ルキウス将軍は、馬に乗って逃げながら、呟いた。


「負けた…」


「完全に、負けた…」


「あんな魔法、存在してはならない…」


副官が、言った。


「将軍!」


「どうしますか!?」


ルキウスは、答えた。


「本国に帰る」


「そして、皇帝陛下に報告する」


「リベラとの戦争は、不可能だと」


「タイシという男がいる限り」


「我々に、勝ち目はない」


---


その夜。


同盟軍は、勝利を祝っていた。


だが、タイシは一人、天幕の中にいた。


ドアがノックされた。


「タイシ様、アルカディウスです」


「入ってください」


アルカディウスが、入室した。


封印は、まだ解かれていなかったが、動くことはできた。


アルカディウスは、タイシの前に座った。


「タイシ」


「すごい魔法だった」


「ジャッジメント」


「私が今まで見た中で、最強の魔法だ」


タイシは、答えた。


「ありがとうございます」


「でも、私は…」


アルカディウスは、言った。


「15万人を殺したことを、悔いているのか?」


タイシは、頷いた。


「はい」


「私は、殺人者です」


「3万人をアースクエイクで」


「15万人をジャッジメントで」


「合計18万人を殺しました」


アルカディウスは、静かに言った。


「タイシ」


「私は、70年生きてきた」


「その間、数えきれないほどの戦争を見てきた」


「多くの人が死んだ」


「私も、多くの人を殺した」


「おそらく、お前より多い」


タイシは、アルカディウスを見た。


アルカディウスは、続けた。


「だが、お前と私は違う」


「私は、権力のために戦った」


「帝国の栄光のために、人を殺した」


「だが、お前は違う」


「お前は、平和のために戦った」


「人々を守るために、戦った」


「その違いは、大きい」


タイシは、黙って聞いていた。


アルカディウスは、立ち上がった。


「タイシ」


「お前は、悲しむべきだ」


「殺した人々のために」


「それが、お前にできる唯一の償いだ」


「だが、後悔するな」


「お前は、正しいことをした」


タイシは、涙を拭いた。


「ありがとうございます、アルカディウス」


「あなたの言葉、心に刻みます」


アルカディウスは、天幕を出る前に言った。


「タイシ」


「この封印、いつ解いてくれる?」


タイシは、微笑んだ。


「明日、解きます」


「そして、あなたを帝国に帰します」


アルカディウスは、驚いた。


「帰す?」


「捕虜にはしないのか?」


タイシは、答えた。


「はい」


「あなたは、最後に私に協力してくれました」


「ジャッジメントを邪魔しなかった」


「それに」


タイシは、真剣な表情で言った。


「帝国に帰って、皇帝に伝えてください」


「リベラは、平和を望んでいると」


「もし帝国が、再び戦争を仕掛けるなら」


「私は、またジャッジメントを使います」


「ですが、帝国が和平を望むなら」


「私たちも、喜んで応じます」


アルカディウスは、深く頷いた。


「分かった」


「必ず、伝える」


---


翌朝。


第二防衛線の戦場跡。


タイシは、一人で歩いていた。


大地には、まだ無数の光の槍が残っていた。


タイシは、それらを一つ一つ、消していった。


魔法で。


そして、消えた15万人のために、祈った。


「安らかに眠ってください」


「あなたたちの犠牲を」


「私は、決して忘れません」


エドガーが、近づいてきた。


「タイシ様」


「国王陛下が、お呼びです」


「凱旋式の準備ができたそうです」


タイシは、頷いた。


「分かりました」


「行きましょう」


二人は、陣地に戻った。


そこでは、同盟軍80万人が整列していた。


そして、中央には、5カ国の指導者たちが立っていた。


リベラ国王、エドワード3世、フィリップ・サウス、ヴィクター・グレイ、魔王ゼノビア。


タイシが近づくと、5人が一斉に頭を下げた。


「タイシ殿」


「この戦争の勝利は、あなたのおかげです」


「心より、感謝します」


80万人の兵士たちが、一斉に叫んだ。


「タイシ!タイシ!タイシ!」


歓声が、天地に響き渡った。


タイシは、深く礼をした。


「皆様」


「この勝利は、私一人のものではありません」


「同盟軍全員の、努力の結果です」


「そして」


タイシは、戦場跡を振り返った。


「この勝利の代償として」


「多くの命が失われました」


「リベラ軍、3,000名」


「そして、帝国軍、18万名」


「彼らのことを、決して忘れてはいけません」


タイシは、全員に向かって言った。


「今日、我々は勝利しました」


「だが、これで終わりではありません」


「これから、真の平和を築かなければなりません」


「帝国との和平を」


「そして、この大陸全体の平和を」


「それが、我々の使命です」


全員が、頷いた。


「その通りだ!」


タイシは、拳を掲げた。


「平和のために!」


80万人が、一斉に叫んだ。


「平和のために!!!」


その声は、遥か彼方まで響き渡った。


戦争の終わりと、平和の始まりを告げる声として。


---


**【決戦の結果】**


**同盟軍(大勝利):**

- 総兵力:80万人

- 損害:軽微(主に第一防衛戦での損害)

- 戦死者総計:約3,000名


**帝国軍(壊滅):**

- 総兵力:17万人→2万人

- 戦死者:約15万人ジャッジメントによる

- 生存者:2万人(逃走)


**超大魔法「ジャッジメント」:**

- 発動に必要な魔力:魔法使い3万人分

- 効果範囲:直径5キロメートル

- 持続時間:1分間

- 光の槍の数:約3万本

- 犠牲者:15万人


**タイシの魔法:**

- タイムストップ(時間停止)

- ヘヴンズケージ(十重封鎖)

- マナブースト(魔力2倍)

- セブンスシール解放(第7の魔力源)

- ジャッジメント(超大魔法)


**戦後:**

- アルカディウスを解放、帝国に返還

- 帝国への和平メッセージ

- 5カ国同盟の結束強化


---


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