第七章:決戦前夜
アースクエイクから、2日後。
第二防衛線、丘陵地帯。
同盟軍の陣地は、完成していた。
全長10キロメートルに及ぶ、巨大な防衛線。
そこには、80万人の兵士が集結していた。
**【同盟軍の構成】**
**リベラ共和国軍:**
- 兵力:10万人
- 戦闘ゴーレム:700体
- 魔法大砲:50門
- 指揮官:マーカス将軍
**ノーザン王国軍:**
- 兵力:15万人
- 騎兵:3万騎
- 弓兵:5万人
- 指揮官:エドワード3世
**サウザン連邦軍:**
- 兵力:30万人
- 重装歩兵:10万人
- 軽装歩兵:15万人
- 魔法使い:5千人
- 指揮官:フィリップ・サウス議長
**イースタン傭兵:**
- 兵力:15万人
- 精鋭傭兵:5万人
- 弓兵傭兵:5万人
- 攻城兵器部隊:5万人
- 指揮官:傭兵隊長ガルバス
**魔族軍:**
- 兵力:10万人
- 魔族戦士:8万人
- 魔族魔法使い:2万人
- 指揮官:魔王ゼノビア
**総兵力:80万人**
---
タイシは、司令部の天幕にいた。
巨大な地図が、机の上に広げられていた。
タイシの周りには、同盟軍の指揮官たちが集まっていた。
エドワード3世、フィリップ・サウス、ヴィクター・グレイ、魔王ゼノビア、マーカス将軍、そしてガルバス。
タイシは、地図を指した。
「皆様、お集まりいただき、ありがとうございます」
「同盟軍80万人、無事に集結しました」
「これより、作戦会議を始めます」
タイシは、敵陣の位置を示した。
「情報省の報告によれば」
「帝国軍は、現在17万人」
「第一次国境防衛戦の残存兵7万人」
「そして、本国から到着した援軍10万人」
「合計17万人が、我々の30キロメートル前方に布陣しています」
フィリップが、言った。
「17万人か」
「我々の5分の1以下だ」
「圧倒的に有利だな」
タイシは、首を横に振った。
「いいえ、油断はできません」
「帝国軍には、魔導師団がいます」
「現在の魔導師団の人数は、約9,000人」
「そして」
タイシは、真剣な表情になった。
「魔導師団長、アルカディウスが到着しました」
全員が、緊張した。
ゼノビアが、言った。
「アルカディウス…」
「帝国最強の魔導師」
「私も、名前は聞いたことがある」
「彼は、一人で千人の兵士に匹敵すると言われている」
タイシは、頷いた。
「はい」
「アルカディウスは、70歳」
「魔導師として、50年のキャリアを持ちます」
「彼が使える魔法は、数百種類」
「その中には、禁呪レベルの魔法も含まれています」
エドワード3世が、尋ねた。
「タイシ殿」
「あなたのアースクエイクと、どちらが強いのですか?」
タイシは、答えた。
「分かりません」
「戦ってみないと」
「だが」
タイシは、拳を握った。
「私には、切り札があります」
「超大魔法、ジャッジメント」
「これを使えば、帝国軍を一掃できます」
マーカス将軍が、尋ねた。
「ジャッジメントとは、どのような魔法ですか?」
タイシは、説明した。
「天から、光の槍を降らせます」
「数万本の光の槍が、敵を貫きます」
「範囲は、直径5キロメートル」
「その範囲内の敵は、全て消滅します」
全員が、驚愕した。
「直径5キロメートル!?」
「そんな魔法が!?」
タイシは、続けた。
「ただし、この魔法には問題があります」
「私一人の魔力では、発動できません」
「同盟軍の魔法使い、全員の魔力が必要です」
フィリップが、言った。
「魔力を集めるのですか?」
タイシは、頷いた。
「はい」
「魔力転送魔法を使います」
「各軍の魔法使いから、魔力を集める」
「そして、私がそれを束ねて、ジャッジメントを発動します」
ゼノビアが、言った。
「魔族軍の魔法使い、2万人」
「全員の魔力を、あなたに渡します」
フィリップも、言った。
「サウザン連邦の魔法使い、5千人」
「同じく、魔力を提供します」
タイシは、深く頭を下げた。
「ありがとうございます」
「皆様の協力があれば、必ず成功します」
エドワード3世が、尋ねた。
「では、作戦は?」
タイシは、地図を指した。
「明日の夜明けと共に、帝国軍が攻めてきます」
「我々は、この丘陵地帯で迎え撃ちます」
「まず、通常戦闘で帝国軍を引きつけます」
「そして、帝国軍が我々の陣地に接近した時」
「ジャッジメントを発動します」
「一撃で、帝国軍を殲滅します」
ガルバスが、言った。
「完璧な作戦だ」
「だが、一つ問題がある」
「アルカディウスだ」
「彼が、ジャッジメントを妨害してくる可能性がある」
タイシは、頷いた。
「その通りです」
「だから、私はアルカディウスと戦います」
「一対一で」
「皆様は、その間、帝国軍本隊を引きつけてください」
全員が、頷いた。
「分かりました」
「我々に任せてください」
タイシは、立ち上がった。
「では、各軍、配置についてください」
「明日の夜明け、決戦です」
---
その夜。
タイシは、陣地の外を歩いていた。
星空。
満月。
美しい夜だった。
だが、明日になれば、この地は血で染まる。
タイシは、考えていた。
*ジャッジメント*
*数万人を殺す魔法*
*アースクエイクでは3万人だった*
*ジャッジメントでは、おそらく10万人以上*
*私は、そんなに多くの命を奪っていいのか*
その時、声がした。
「タイシ様」
振り返ると、ゼノビアが立っていた。
「ゼノビア様」
「どうされましたか?」
ゼノビアは、タイシの隣に来た。
「あなた、悩んでいますね」
タイシは、頷いた。
「はい」
「明日、ジャッジメントを使えば」
「10万人以上を殺すことになります」
「それが、正しいのかどうか」
ゼノビアは、空を見上げた。
「タイシ」
「戦争に、正しいも間違いもありません」
「ただ、生きるか死ぬか」
「それだけです」
タイシは、ゼノビアを見た。
「でも」
ゼノビアは、続けた。
「私たち魔族は、長い間、人間と戦ってきました」
「多くの命が、失われました」
「魔族も、人間も」
「その度に、私は思いました」
「なぜ、戦わなければならないのか、と」
ゼノビアは、タイシに向き直った。
「だが、あなたが現れて、変わりました」
「あなたは、魔族と人間の共存を信じた」
「そして、実現させた」
「あなたは、平和を作る人です」
「だから、今は戦わなければならない」
「平和のために」
タイシは、黙って聞いていた。
ゼノビアは、タイシの肩に手を置いた。
「明日、ジャッジメントを使ってください」
「帝国軍を倒してください」
「そして、戦争を終わらせてください」
「それが、あなたにしかできないことです」
タイシは、深く息を吸った。
そして、答えた。
「分かりました」
「ゼノビア様の言う通りです」
「私は、戦います」
「平和のために」
ゼノビアは、微笑んだ。
「良い答えです」
「さあ、休んでください」
「明日は、長い一日になります」
---
同じ頃。
帝国軍の陣地。
巨大な天幕の中。
ルキウス将軍と、魔導師団長アルカディウスが対峙していた。
アルカディウスは、70歳。
白髪、白髭の老人。
だが、その目には、強い意志が宿っていた。
ルキウスが、言った。
「アルカディウス殿」
「お忙しい中、来ていただき、ありがとうございます」
アルカディウスは、答えた。
「皇帝陛下の命令だ」
「当然のことだ」
「それで、タイシという男は?」
ルキウスは、説明した。
「リベラ共和国の宰相です」
「22歳という若さですが」
「大魔法を使えます」
「アースクエイクという魔法で」
「我が軍3万人を、一撃で葬りました」
アルカディウスは、興味を示した。
「アースクエイク?」
「大地震の魔法か」
「なかなか、やるな」
ルキウスが、続けた。
「そして、情報によれば」
「タイシは、さらに強力な魔法を準備しているそうです」
「ジャッジメントという魔法を」
アルカディウスは、驚いた。
「ジャッジメント!?」
「まさか、あの伝説の超大魔法を!?」
ルキウスが、尋ねた。
「ご存知なのですか?」
アルカディウスは、頷いた。
「ああ」
「古代魔法の一つだ」
「天から光の槍を降らせ、敵を殲滅する」
「だが、その魔法は失伝したはずだ」
「なぜ、タイシが知っている?」
ルキウスは、答えた。
「分かりません」
「だが、彼は異世界から来た転生者と言われています」
「おそらく、異世界の知識で」
「失われた魔法を復元したのでしょう」
アルカディウスは、立ち上がった。
「面白い」
「そんな男と戦えるとは」
「久しぶりに、本気を出せそうだ」
ルキウスが、言った。
「アルカディウス殿」
「タイシを倒せますか?」
アルカディウスは、笑った。
「当然だ」
「私は、帝国最強の魔導師」
「魔法で、私に勝てる者などいない」
「たとえ、タイシが転生者であろうと」
「私の敵ではない」
ルキウスは、安堵した。
「それを聞いて、安心しました」
「では、明日の作戦ですが」
アルカディウスは、手を上げた。
「作戦など不要だ」
「私が、タイシと戦う」
「そして、倒す」
「それだけだ」
ルキウスは、頷いた。
「分かりました」
「では、明日の夜明けと共に」
「全軍で攻撃を開始します」
「アルカディウス殿は、タイシとの一騎打ちを」
アルカディウスは、天幕を出た。
外には、満月。
アルカディウスは、空を見上げた。
「タイシ」
「お前がどれほどの男か」
「明日、見せてもらおう」
---
翌朝。
夜明け前。
同盟軍の陣地は、緊張に包まれていた。
兵士たちは、武器を手に待機していた。
魔法使いたちは、魔力を蓄えていた。
戦闘ゴーレムは、起動準備完了。
タイシは、陣地の最前線に立っていた。
エドガーが、隣に来た。
「タイシ様」
「準備はできていますか?」
タイシは、頷いた。
「ああ」
「今日、全てが決まる」
エドガーは、剣を握った。
「私も、全力で戦います」
「タイシ様を、守ります」
タイシは、微笑んだ。
「ありがとう、エドガー」
「だが、今日の戦いは魔法戦だ」
「剣では、戦えない」
エドガーは、首を横に振った。
「それでも、私はここにいます」
「あなたと共に」
タイシは、エドガーの肩を叩いた。
「分かった」
「一緒に、戦おう」
その時。
地平線の向こうから、太陽が昇り始めた。
夜明けだ。
そして
「ゴゴゴゴゴ…」
地が、揺れ始めた。
いや、違う。
これは、軍隊の足音だ。
地平線の向こうから、帝国軍が現れた。
17万人の大軍。
黒い鎧。
赤い旗。
そして、その中央に
白い服を着た老人が、浮いていた。
魔法で、空中に浮遊している。
アルカディウスだ。
アルカディウスの声が、響き渡った。
「タイシ!」
「出てこい!」
「お前と、私の一騎打ちだ!」
同盟軍の兵士たちが、ざわめいた。
「魔導師団長!」
「アルカディウスだ!」
タイシは、前に出た。
そして、魔法で自分も空中に浮いた。
タイシとアルカディウス、二人の魔法使いが、空中で対峙した。
距離は、100メートル。
アルカディウスが、言った。
「タイシ」
「お前が、噂の転生者か」
「若いな」
「だが、魔力は本物のようだ」
タイシは、答えた。
「アルカディウス」
「あなたが、帝国最強の魔導師ですね」
「お会いできて、光栄です」
アルカディウスは、笑った。
「礼儀正しいな」
「だが、戦場では不要だ」
「さあ、始めようか」
「魔法使い同士の、真剣勝負を」
タイシは、両手を広げた。
魔力が、溢れ出した。
青い光。
アルカディウスも、魔力を解放した。
赤い光。
二つの魔力が、ぶつかり合った。
大気が、震えた。
地上の兵士たちは、その魔力の大きさに圧倒された。
「すごい…」
「これが、最強の魔法使いたちの戦いか」
アルカディウスが、先制攻撃を仕掛けた。
「ファイアストーム!」
巨大な炎の竜巻が、タイシに向かって飛んできた。
タイシは、反撃した。
「アイスウォール!」
巨大な氷の壁が、炎の竜巻を防いだ。
「ジュワーーー!」
炎と氷が、ぶつかり合った。
蒸気が、立ち上った。
アルカディウスは、続けて攻撃した。
「サンダーチェイン!」
無数の雷が、タイシに襲いかかった。
タイシは、回避した。
「ウィンドステップ!」
風の魔法で、高速移動。
雷を、かわした。
そして、反撃。
「ロックバレット!」
無数の岩の弾丸が、アルカディウスに向かって飛んだ。
アルカディウスは、防御した。
「マジックシールド!」
魔法の盾が、岩の弾丸を弾いた。
「ガンガンガン!」
火花が、散った。
二人の魔法使いは、次々と魔法を撃ち合った。
炎、氷、雷、風、土。
様々な魔法が、空中で激突した。
地上の兵士たちは、ただ見上げることしかできなかった。
まるで、神々の戦いのようだった。
10分間、激しい魔法戦が続いた。
そして、アルカディウスが言った。
「なかなか、やるな、タイシ」
「だが、遊びはここまでだ」
「これから、本気を出す」
アルカディウスは、魔力をさらに高めた。
赤い光が、さらに強くなった。
「禁呪級魔法」
「メテオフォール!」
空が、暗くなった。
雲が、渦巻いた。
そして
「ゴゴゴゴゴ!」
空から、巨大な隕石が降ってきた。
直径100メートル。
タイシに向かって、落下してくる。
タイシは、驚いた。
*これは…*
*本物の隕石だ*
*まともに受ければ、死ぬ*
タイシは、決断した。
「大魔法」
「グラビティリバース!」
タイシの周囲の重力が、逆転した。
隕石が、タイシに到達する直前
「ドゴォォォン!」
隕石が、上空に押し戻された。
そして、大気圏外に消えていった。
アルカディウスは、目を見開いた。
「重力魔法だと!?」
「しかも、こんなに大規模な!」
タイシは、反撃した。
「大魔法」
「プラズマスフィア!」
タイシの手のひらに、巨大なプラズマの球体が現れた。
太陽のような、輝く球体。
温度は、1万度以上。
タイシは、それをアルカディウスに投げた。
プラズマ球が、高速でアルカディウスに向かった。
アルカディウスは、慌てて回避した。
「くそ!」
だが、プラズマ球は追尾してきた。
アルカディウスは、最強の防御魔法を使った。
「絶対防御」
「オムニシールド!」
アルカディウスの周囲に、完全な防御障壁が展開された。
プラズマ球が、障壁に衝突した。
「ドォォォォォン!」
巨大な爆発。
衝撃波が、地上にまで到達した。
兵士たちが、吹き飛ばされた。
煙が、晴れた。
アルカディウスは、無事だった。
だが、服が焦げていた。
アルカディウスは、笑った。
「はははは!」
「素晴らしい!」
「こんな戦いは、50年ぶりだ!」
「タイシ、お前は本物だ!」
タイシも、答えた。
「あなたも、です」
「帝国最強の名は、伊達ではありませんね」
アルカディウスは、真剣な表情になった。
「だが、タイシ」
「お前が準備している、ジャッジメント」
「それは、使わせない」
タイシは、頷いた。
「分かっています」
「だから、まずあなたを倒します」
二人の魔法使いは、再び魔力を高めた。
決着の時が、近づいていた。
---
**【魔法対決の状況】**
**タイシ:**
- 年齢:22歳
- 使用魔法:アイスウォール、ロックバレット、グラビティリバース、プラズマスフィア
- 魔力レベル:極大
- 切り札:超大魔法ジャッジメント(未使用)
**アルカディウス:**
- 年齢:70歳
- 使用魔法:ファイアストーム、サンダーチェイン、メテオフォール、オムニシールド
- 魔力レベル:極大
- 経験:50年のキャリア
**戦況:**
- 互角の戦い
- 両者ともに、まだ切り札を温存
- 地上では80万の同盟軍と17万の帝国軍が対峙
---




