第五部 第五章:開戦
帝国の皇帝ガイウス・マグヌスが演説を行った翌日。
リベラ共和国王宮の大会議室。
タイシ、国王、宰相、そして軍の幹部たちが集まっていた。
さらに、魔法通信装置を通じて、同盟国の指導者たちが参加していた。
ノーザン王国のエドワード3世。
サウザン連邦の議長フィリップ・サウス。
イースタン商業同盟の評議会長ヴィクター・グレイ。
そして、魔族領の魔王ゼノビア。
タイシは、地図を広げた。
「皆様、お集まりいただき、ありがとうございます」
「状況は、極めて深刻です」
タイシは、地図の国境付近を指した。
「帝国軍15万人が、リベラ国境に集結しています」
「さらに、情報省の報告によれば」
「帝国本国では、追加で10万人の動員が始まっています」
エドワード3世が、言った。
「つまり、25万人の侵攻軍か」
「帝国の総兵力50万人の、半分だな」
タイシは、頷いた。
「はい」
「帝国は、本気です」
「リベラを完全に制圧するつもりです」
サウザン連邦のフィリップが、尋ねた。
「我々の対応は?」
タイシは、答えた。
「同盟軍を集結させます」
「リベラ軍10万人」
「ノーザン王国軍15万人」
「サウザン連邦軍30万人」
「イースタン傭兵15万人」
「魔族軍10万人」
「合計80万人で、帝国軍を迎え撃ちます」
イースタンのヴィクターが、言った。
「傭兵15万人、すぐに派遣できます」
「リベラが負担してくれる費用で」
「最高の傭兵を雇いました」
魔王ゼノビアが、言った。
「魔族軍10万人、すでに出発しました」
「3日後には、リベラ国境に到着します」
タイシは、深く頭を下げた。
「ありがとうございます」
「皆様の協力に、感謝します」
国王が、尋ねた。
「タイシ、戦略は?」
タイシは、地図を指した。
「防衛ラインを3つ設定します」
「第一防衛線:国境の砦」
「第二防衛線:国境から50キロメートルの丘陵地帯」
「第三防衛線:リベラ王都から100キロメートルの平原」
「帝国軍を、第一防衛線で足止めします」
「そして、第二防衛線で決戦を行います」
「第三防衛線は、最後の防衛ラインです」
宰相が、言った。
「しかし、タイシ」
「帝国には、魔導師団がいます」
「1万人の魔導師」
「彼らは、通常兵士の10倍の戦闘力を持ちます」
タイシは、微笑んだ。
「大丈夫です」
「我々には、対抗手段があります」
「戦闘ゴーレム1万体」
「そして、魔族10万人」
「これで、魔導師団に対抗できます」
軍の総司令官、マーカス将軍が、言った。
「タイシ様」
「私が、第一防衛線の指揮を取ります」
「5万人の兵力で、帝国軍を食い止めます」
タイシは、頷いた。
「お願いします、マーカス将軍」
「ただし、無理はしないでください」
「第一防衛線の目的は、時間を稼ぐことです」
「同盟軍が集結するまでの、3日間」
「それだけ持ちこたえてくれれば十分です」
マーカス将軍は、敬礼した。
「承知しました!」
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その夜。
タイシは、王宮の執務室にいた。
窓の外には、満天の星。
だが、タイシの心は、戦争のことでいっぱいだった。
*ついに、戦争が始まる*
*何千人、何万人もの人が死ぬかもしれない*
*だが、戦わなければ*
*帝国に支配され、自由を失う*
*それは、もっと悪い*
ドアがノックされた。
「タイシ様、エドガーです」
「入ってください」
エドガーが入室した。
「タイシ様、休まれないのですか?」
「明日は、大変な一日になります」
タイシは、答えた。
「眠れないんです」
「これだけ多くの人の命が、私の判断にかかっている」
「そう思うと」
エドガーは、タイシの隣に座った。
「タイシ様」
「あなたは、最善を尽くしています」
「同盟を結び、戦力を整え」
「できる限りの準備をしました」
「あとは、信じるだけです」
「私たちの力を」
「同盟国の力を」
「そして、正義を」
タイシは、微笑んだ。
「ありがとう、エドガー」
「あなたがいてくれて、助かります」
エドガーは、立ち上がった。
「では、私は準備に戻ります」
「タイシ様も、少し休んでください」
タイシは、頷いた。
「そうします」
エドガーが出て行った後、タイシは再び窓の外を見た。
*必ず、勝つ*
*そして、平和を守る*
*それが、私の使命だ*
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翌朝。
リベラ共和国全土に、緊急動員令が発令された。
予備役10万人が招集され、訓練を開始した。
ゴーレム工場は、24時間稼働で戦闘ゴーレムを量産している。
病院は、負傷者を受け入れる準備を始めた。
国中が、戦時体制に入った。
タイシは、王宮のバルコニーに立っていた。
下には、数千人の国民が集まっていた。
タイシは、演説を始めた。
「国民の皆さん!」
「本日、グランディア帝国が」
「我がリベラ共和国に対して」
「宣戦布告を行いました!」
群衆が、どよめいた。
タイシは、続けた。
「帝国は、15万人の軍隊を国境に集結させています」
「彼らの目的は、リベラの征服です」
「我々の自由を奪い」
「我々を支配することです」
「しかし!」
タイシは、声を強めた。
「我々は、屈しません!」
「我々には、仲間がいます!」
「ノーザン王国!」
「サウザン連邦!」
「イースタン商業同盟!」
「そして、魔族領!」
「4つの国と地域が、我々と共に戦います!」
群衆が、歓声を上げた。
タイシは、拳を握った。
「同盟軍の総兵力は、80万人!」
「帝国軍の25万人を、圧倒します!」
「我々は、必ず勝ちます!」
「そして、平和を守ります!」
「皆さん、力を貸してください!」
「共に、この戦いを乗り越えましょう!」
群衆が、大歓声を上げた。
「タイシ!タイシ!タイシ!」
国民の士気は、最高潮に達した。
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同じ日の夕方。
国境の砦。
マーカス将軍率いる5万人のリベラ軍が、防衛陣地を構築していた。
砦は、石造りの堅牢な要塞だった。
高さ20メートルの城壁。
その上には、弓兵と魔法使いが配置されている。
さらに、城壁の下には、1,000体の戦闘ゴーレムが待機していた。
マーカス将軍は、部下たちに命令していた。
「城壁を強化しろ!」
「食料と水を備蓄しろ!」
「矢と魔法の弾薬を準備しろ!」
「帝国軍は、明日にも攻めてくる!」
副官が、報告した。
「将軍!」
「帝国軍の先遣隊が、10キロメートル先に到達しました!」
「数は、約2万人!」
マーカス将軍は、頷いた。
「分かった」
「全軍に通達!」
「戦闘準備!」
兵士たちが、一斉に動き出した。
弓兵は、弓を構えた。
魔法使いは、魔法を準備した。
戦闘ゴーレムは、起動した。
砦全体が、緊張に包まれた。
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1時間後。
地平線の向こうから、帝国軍が現れた。
黒い鎧を着た兵士たち。
赤い旗を掲げている。
2万人の大軍。
だが、これは先遣隊に過ぎない。
本隊の15万人は、まだ後方にいる。
帝国軍の指揮官が、前に出た。
「リベラ軍!」
「降伏しろ!」
「さもなくば、皆殺しだ!」
マーカス将軍は、城壁の上から叫んだ。
「帝国軍!」
「我々は、リベラ共和国の兵士だ!」
「決して降伏しない!」
「ここを通したければ、戦え!」
帝国軍の指揮官は、笑った。
「愚か者め!」
「全軍、攻撃開始!」
帝国軍2万人が、一斉に砦に向かって突撃した。
マーカス将軍は、命令した。
「弓兵、射撃開始!」
1万人の弓兵が、一斉に矢を放った。
空が、矢で覆われた。
帝国軍に、矢の雨が降り注いだ。
「うわあああ!」
帝国兵が、次々と倒れた。
だが、帝国軍は止まらなかった。
盾を構えて、前進を続けた。
マーカス将軍は、続けて命令した。
「魔法使い、魔法攻撃!」
1,000人の魔法使いが、一斉に魔法を放った。
「ファイアボール!」
「アイスランス!」
「サンダーボルト!」
巨大な火球、氷の槍、雷撃。
帝国軍に、魔法攻撃が襲いかかった。
爆発が、次々と起こった。
「ぐわああ!」
帝国兵が、吹き飛ばされた。
だが、それでも帝国軍は前進した。
ついに、帝国軍の先頭が城壁に到達した。
「梯子をかけろ!」
「城壁を登れ!」
帝国兵が、梯子を使って城壁を登り始めた。
マーカス将軍は、叫んだ。
「戦闘ゴーレム、出撃!」
城門が開き、1,000体の戦闘ゴーレムが飛び出した。
ゴーレムは、3メートルの巨体。
鋼鉄の拳で、帝国兵を次々と倒していく。
「ぐあああ!」
「化け物だ!」
帝国兵が、恐怖に叫んだ。
だが、帝国軍の中から、魔導師が現れた。
「魔導師団、前へ!」
100人の魔導師が、前線に出た。
彼らは、強力な魔法を唱えた。
「メテオストライク!」
空から、巨大な隕石が降ってきた。
ゴーレムたちに、隕石が直撃した。
「ガシャーン!」
ゴーレム10体が、破壊された。
マーカス将軍は、驚いた。
「魔導師団!」
「もう、出てきたのか!」
副官が、言った。
「将軍!」
「このままでは、押し切られます!」
マーカス将軍は、決断した。
「魔法大砲を使用する!」
「目標、敵魔導師団!」
城壁の上に、10門の魔法大砲が設置されていた。
これは、タイシが開発した新兵器だった。
魔法のエネルギーを圧縮して、砲弾として発射する。
通常の魔法の10倍の威力を持つ。
「魔法大砲、発射準備!」
「照準、敵魔導師団!」
「発射!」
「ドーン!ドーン!ドーン!」
10門の魔法大砲が、一斉に発射された。
巨大な魔法砲弾が、敵魔導師団に向かって飛んでいった。
「何だ、あれは!」
帝国の魔導師が、驚いた。
次の瞬間。
「ドォォォォン!」
魔法砲弾が、敵魔導師団の中で爆発した。
巨大な爆発。
100人の魔導師のうち、50人が吹き飛ばされた。
「うわああああ!」
残りの魔導師たちは、恐怖に逃げ出した。
帝国軍の指揮官は、驚愕した。
「何という威力だ!」
「あんな兵器、聞いたことがない!」
マーカス将軍は、叫んだ。
「全軍、反撃!」
リベラ軍5万人が、一斉に反撃を開始した。
残った900体のゴーレムも、再び突撃した。
帝国軍は、混乱に陥った。
魔導師団が半壊し、士気が崩れた。
帝国軍の指揮官は、命令した。
「退却!」
「いったん、退く!」
帝国軍2万人は、慌てて後退していった。
城壁の上で、リベラ兵が歓声を上げた。
「勝った!」
「帝国軍を撃退したぞ!」
マーカス将軍は、拳を握った。
「よくやった、みんな!」
「だが、これは始まりに過ぎない」
「本隊15万人が、まだ来る」
「気を抜くな!」
副官が、報告した。
「我が方の損害」
「戦死者:500名」
「負傷者:1,000名」
「ゴーレム損失:100体」
マーカス将軍は、頷いた。
「敵の損害は?」
「推定、戦死者3,000名」
「負傷者5,000名」
「我々の勝利です」
マーカス将軍は、微笑んだ。
「タイシ様の魔法大砲」
「素晴らしい兵器だ」
「これなら、戦える」
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同じ頃。
リベラ王都の王宮。
タイシは、戦況報告を受けていた。
「第一防衛線、帝国軍先遣隊2万人を撃退」
「我が方の損害、軽微」
「魔法大砲、絶大な効果」
タイシは、安堵した。
「よかった」
「マーカス将軍、見事だ」
エドガーが、言った。
「タイシ様の魔法大砲が、活躍しましたね」
タイシは、頷いた。
「はい」
「だが、これはまだ序盤です」
「帝国の本隊15万人が、明日にも到着します」
「本当の戦いは、これからです」
宰相が、報告した。
「同盟軍の集結状況です」
「ノーザン王国軍15万人、明日到着」
「サウザン連邦軍30万人、2日後到着」
「イースタン傭兵15万人、2日後到着」
「魔族軍10万人、3日後到着」
タイシは、頷いた。
「分かりました」
「マーカス将軍には、3日間持ちこたえてもらう」
「その間に、同盟軍を第二防衛線に集結させます」
国王が、言った。
「タイシ」
「お前の計画は、完璧だ」
「必ず、勝てる」
タイシは、頭を下げた。
「ありがとうございます、陛下」
「全力を尽くします」
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翌日。
帝国軍本隊15万人が、国境の砦に到着した。
帝国軍総司令官、ルキウス将軍が指揮を執っていた。
ルキウスは、60歳。
帝国最強の将軍と言われている。
ルキウスは、砦を見た。
「ふむ」
「昨日、先遣隊が撃退されたのは、この砦か」
「魔法大砲なる新兵器があるらしいな」
副官が、言った。
「はい、将軍」
「魔導師団の報告によれば」
「通常の魔法の10倍の威力だそうです」
ルキウスは、笑った。
「面白い」
「だが、所詮は防衛兵器だ」
「我々の数で押せば、必ず落ちる」
ルキウスは、命令した。
「全軍、攻撃準備!」
「魔導師団を前線に配置しろ!」
「魔法大砲を破壊する!」
15万人の帝国軍が、陣形を整えた。
そして、残り9,500人の魔導師団が、前線に出た。
ルキウスは、剣を掲げた。
「全軍、突撃!」
15万人の大軍が、一斉に砦に向かって突撃した。
地が、揺れた。
砦の上で、マーカス将軍は叫んだ。
「来たぞ!」
「全軍、戦闘配置!」
「帝国軍を、一歩も通すな!」
リベラ軍5万人が、迎え撃つ構えを取った。
史上最大の攻城戦が、始まろうとしていた。
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**【第一次国境防衛戦の状況】**
**リベラ軍(第一防衛線):**
- 兵力:5万人
- 戦闘ゴーレム:900体(100体損失)
- 魔法大砲:10門
- 指揮官:マーカス将軍
**帝国軍(攻撃側):**
- 兵力:15万人
- 魔導師団:9,500人(500人損失)
- 指揮官:ルキウス将軍
**戦力比:**
- 帝国軍3倍の数的優位
- だが、リベラ軍は防衛側有利+魔法大砲
**目標:**
- リベラ軍:3日間持ちこたえる
- 帝国軍:砦を陥落させる
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