第二章:外交使節団の旅立ち
タイシの演説から1週間後。
リベラ共和国王宮の謁見の間。
タイシ、国王、宰相、そして外交使節団のメンバーが集まっていた。
使節団は、30名。
外交官10名、護衛兵10名、ゴーレム操作員5名、そしてゴーレム10体。
タイシが、団長を務める。
国王が、タイシに語りかけた。
「タイシ」
「この使節団に、リベラ共和国の未来を託す」
「周辺諸国との同盟を、必ず成功させてくれ」
タイシは、深く頭を下げた。
「はい、陛下」
「必ず、成功させます」
国王は、満足そうに頷いた。
「頼んだぞ」
「お前なら、できると信じている」
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その日の午後。
タイシの使節団は、王都を出発した。
最初の目的地は、ノーザン王国。
リベラ王都から、北へ800キロメートル。
ゴーレム馬車で、6時間の距離。
使節団は、10台のゴーレム馬車に分乗していた。
各馬車には、3名の人間と1体のゴーレムが乗っている。
タイシは、先頭の馬車に乗っていた。
隣には、外交官の長、エドガーが座っている。
エドガーは、50歳のベテラン外交官。
リベラ王国時代から、数々の外交交渉を成功させてきた。
エドガーが、タイシに尋ねた。
「タイシ様」
「ノーザン王国は、どの程度友好的だと思われますか?」
タイシは、答えた。
「情報省の報告では、友好的だが慎重、とのことです」
「エドワード3世は保守的な王ですが」
「リベラの改革には、強い関心を持っている」
「ただし」
タイシは、地図を見た。
「帝国を恐れています」
「我々と同盟を結べば、帝国の敵とみなされる」
「その覚悟ができるかどうかが、鍵です」
エドガーが、頷いた。
「なるほど」
「では、交渉の鍵は?」
タイシは、答えた。
「技術提供です」
「ゴーレム技術、電力技術、医療技術」
「これらを提供すれば、ノーザン王国も発展できます」
「そして、発展すれば帝国にも対抗できる」
エドガーは、感心した表情で言った。
「見事な戦略です」
「タイシ様は、本当に22歳なのですか?」
タイシは、苦笑した。
「はい、22歳です」
「ただ、前世の記憶がありますから」
エドガーは、驚いた。
「前世の記憶…」
「それは、本当なのですね」
タイシは、頷いた。
「はい」
「私は、日本という国から転生してきました」
「そこで得た知識が、今のリベラを作りました」
エドガーは、深く頭を下げた。
「ありがとうございます」
「タイシ様のおかげで、リベラは素晴らしい国になりました」
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6時間後。
使節団は、ノーザン王国の首都、ノースポートに到着した。
ノースポートは、港町だった。
北の海に面した、美しい街。
人口は、50万人。
ノーザン王国全体の人口は、800万人。
使節団が到着すると、ノーザン王国の使者が迎えに来た。
「リベラ共和国使節団の皆様」
「ようこそ、ノースポートへ」
「エドワード3世陛下が、お待ちです」
タイシは、丁寧に挨拶した。
「ありがとうございます」
「リベラ共和国使節団長、タイシと申します」
使者は、タイシを見て驚いた。
「あなたが、あの有名なタイシ様ですか!」
「噂は聞いています」
「15歳で国を変え、22歳で奇跡を起こした天才と」
タイシは、謙遜した。
「過分なお言葉です」
「私は、ただ国民のために働いているだけです」
使者は、感心した様子で言った。
「謙虚でいらっしゃる」
「さあ、王宮へご案内します」
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ノーザン王国王宮。
謁見の間。
エドワード3世が、玉座に座っていた。
エドワード3世は、60歳。
白髪の、威厳ある王だった。
タイシの使節団が入室すると、エドワード3世は立ち上がった。
「ようこそ、タイシ殿」
「そして、リベラ共和国使節団の皆様」
タイシは、深く礼をした。
「エドワード3世陛下」
「この度は、お時間をいただき、ありがとうございます」
エドワード3世は、タイシを興味深そうに見た。
「噂以上に、若いな」
「22歳で、あれほどの国を作り上げたとは」
「驚きだ」
タイシは、答えた。
「私一人の力ではありません」
「国民全員の力です」
エドワード3世は、笑った。
「謙虚だな」
「だが、リベラの発展は、お前の功績だ」
「それは、誰もが認めている」
エドワード3世は、タイシに近づいた。
「さて、タイシ殿」
「何のために、ノーザン王国を訪れたのか」
「聞かせてくれ」
タイシは、真剣な表情で答えた。
「同盟です」
「リベラ共和国とノーザン王国の、軍事同盟」
エドワード3世は、眉をひそめた。
「軍事同盟…」
「グランディア帝国に対抗するためか?」
タイシは、頷いた。
「はい」
「帝国は、我々を脅威とみなしています」
「そして、いずれ侵攻してくるでしょう」
「その時、一国では戦えません」
「同盟が必要です」
エドワード3世は、深刻な表情になった。
「だが、帝国と敵対すれば」
「ノーザン王国も、攻撃される」
「それは、大きなリスクだ」
タイシは、答えた。
「陛下」
「帝国を恐れて何もしなければ」
「いずれ、ノーザン王国も飲み込まれます」
「帝国の野心は、リベラだけではありません」
「全ての国を、支配下に置くつもりです」
エドワード3世は、黙った。
タイシは続けた。
「そして、我々には勝算があります」
「リベラのゴーレム技術」
「これを、ノーザン王国にも提供します」
「さらに、電力技術、医療技術、農業技術」
「全てを提供します」
エドワード3世は、驚いた。
「全ての技術を?」
「それは…本当か?」
タイシは、頷いた。
「はい」
「我々は、真の同盟を求めています」
「技術を独占するつもりはありません」
「共に発展し、共に帝国と戦うのです」
エドワード3世は、深く考えた。
しばらくの沈黙の後、エドワード3世は言った。
「タイシ殿」
「お前の提案は、魅力的だ」
「だが、即答はできない」
「大臣たちと協議する必要がある」
タイシは、理解した。
「もちろんです」
「時間をかけて、ご検討ください」
エドワード3世は、タイシに言った。
「3日後、再び会おう」
「その時、返事をする」
タイシは、深く礼をした。
「ありがとうございます、陛下」
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その夜。
ノースポートの迎賓館。
タイシは、使節団のメンバーと会議をしていた。
エドガーが言った。
「エドワード3世は、慎重ですね」
「だが、悪い反応ではありませんでした」
タイシは、頷いた。
「はい」
「技術提供の提案には、興味を示していました」
「おそらく、大臣たちを説得する時間が必要なのでしょう」
護衛隊長のガレスが言った。
「タイシ様」
「もし、拒否されたら?」
タイシは、答えた。
「その時は、次の国へ行きます」
「サウザン連邦、イースタン商業同盟」
「どこかは、必ず同盟に応じるはずです」
「そして、最終的には」
タイシは、地図を見た。
「魔族領へ行きます」
全員が、驚いた。
「魔族領!?」
「本気ですか、タイシ様!」
タイシは、真剣な表情で言った。
「はい」
「魔王ゼノビアは、人間・魔族共存に関心があります」
「彼女と同盟を結べれば」
「帝国に対する最大の抑止力になります」
エドガーが、心配そうに言った。
「だが、魔族は危険です」
「人間を襲う種族も多い」
タイシは、答えた。
「リベラには、すでに魔族が住んでいます」
「彼らは、平和に暮らしています」
「魔族も人間も、本質は同じです」
「理解し合えば、共存できます」
全員が、タイシの言葉に感銘を受けた。
ガレスが、言った。
「分かりました」
「タイシ様が行くなら、我々も従います」
タイシは、微笑んだ。
「ありがとうございます」
「皆さんの力を、貸してください」
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3日後。
ノーザン王国王宮、謁見の間。
エドワード3世が、タイシを呼んだ。
「タイシ殿」
「大臣たちと協議した結果を伝える」
タイシは、緊張した。
エドワード3世は、立ち上がった。
「ノーザン王国は」
「リベラ共和国との軍事同盟に、同意する」
タイシは、安堵した。
「ありがとうございます、陛下!」
エドワード3世は続けた。
「条件は、お前が言った通りだ」
「ゴーレム技術、電力技術、医療技術、農業技術」
「全ての技術を提供してくれ」
「その代わり、ノーザン王国は」
「グランディア帝国と戦う」
タイシは、深く頭を下げた。
「必ず、技術を提供します」
「そして、共に帝国と戦いましょう」
エドワード3世は、タイシに手を差し出した。
「同盟の証だ」
タイシは、その手を握った。
「リベラ共和国とノーザン王国の同盟」
「ここに成立します」
謁見の間に、歓声が響いた。
ノーザン王国の大臣たちも、拍手した。
歴史的な瞬間だった。
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その日の夜。
ノースポートの迎賓館。
タイシは、リベラ王都に通信魔法で報告していた。
通信魔法の水晶に、国王の顔が映っていた。
「タイシ!」
「よくやった!」
「ノーザン王国との同盟、成功おめでとう!」
タイシは、笑顔で答えた。
「ありがとうございます、陛下」
「これで、第一歩を踏み出せました」
国王が言った。
「次は、どこへ行く?」
タイシは、答えた。
「サウザン連邦です」
「南へ400キロメートル」
「リベラ王都を経由して向かいます」
国王は、頷いた。
「分かった」
「気をつけて行ってくれ」
タイシは、真剣な表情で言った。
「陛下」
「技術者チームを、ノースポートへ派遣してください」
「すぐに、技術提供を始めます」
国王は、驚いた。
「すぐにか?」
「交渉が終わったばかりだぞ」
タイシは、答えた。
「約束は、すぐに実行すべきです」
「それが、信頼を築く最良の方法です」
国王は、感心した。
「さすがだな、タイシ」
「分かった、すぐに技術者チームを派遣する」
タイシは、礼を言った。
「ありがとうございます」
通信が、切れた。
タイシは、窓の外を見た。
ノースポートの夜景。
美しい港町の灯り。
*第一歩は、成功した*
*次は、サウザン連邦*
*そして、イースタン商業同盟*
*最後に、魔族領*
*全ての国と同盟を結び*
*帝国の脅威に、立ち向かう*
タイシは、決意を新たにした。
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**【同盟締結状況】**
**成功:**
- ノーザン王国(軍事同盟)
**未交渉:**
- サウザン連邦
- イースタン商業同盟
- 魔族領
**技術提供内容(ノーザン王国向け):**
1. ゴーレム製造技術
- 農業ゴーレム:100体
- 建設ゴーレム:50体
- 戦闘ゴーレム:500体(3年計画)
2. 電力技術
- 魔法発電機:10基
- 送電網:首都ノースポート全域
3. 医療技術
- 病院建設:10箇所
- 医師育成:50名
4. 農業技術
- 改良農法の指導
- 灌漑システムの構築
**期間:3年**
**投資額:リベラ側 500万金貨**
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翌朝。
タイシの使節団は、ノースポートを出発した。
次の目的地は、サウザン連邦。
一旦、リベラ王都に戻り、そこから南へ400キロメートル。
ゴーレム馬車で、10時間の旅。
使節団が王都を経由するのは、補給のためと、国王への報告のためだった。
タイシは、馬車の中で考えていた。
*サウザン連邦は、実利主義だ*
*利益を明確に示せば、同盟に応じるだろう*
*だが、帝国との関係も重視している*
*説得は、ノーザン王国より難しいかもしれない*
エドガーが、タイシに尋ねた。
「タイシ様」
「サウザン連邦の大統領、マーカス・ブラウンは」
「どのような人物でしょうか?」
タイシは、答えた。
「情報省の報告では」
「45歳、元商人、実利主義者」
「利益になることなら、何でもする」
「だが、損失は絶対に避ける」
エドガーが、頷いた。
「なるほど」
「では、交渉は?」
タイシは、微笑んだ。
「技術提供に加えて」
「貿易協定を結びます」
「リベラの製品を、サウザンで販売する」
「その利益を、折半します」
エドガーは、感心した。
「見事です」
「それなら、ブラウン大統領も乗ってくるでしょう」
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10時間後。
使節団は、サウザン連邦の首都、サウスシティに到着した。
サウスシティは、巨大な都市だった。
人口は、100万人。
サウザン連邦全体の人口は、1,500万人。
リベラの3倍近い人口だ。
だが、街の様子は、リベラとは大きく異なっていた。
舗装されていない道路。
電灯のない街。
貧富の差が激しい。
タイシは、窓から街を見て思った。
*この国も、改革が必要だ*
*だが、それは彼ら自身が決めることだ*
*我々は、技術を提供するだけだ*
サウザン連邦の使者が、迎えに来た。
「リベラ共和国使節団の皆様」
「大統領官邸へご案内します」
タイシは、頷いた。
「よろしくお願いします」
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大統領官邸。
執務室。
マーカス・ブラウンが、タイシを待っていた。
ブラウンは、45歳。
がっしりとした体格の、商人上がりの大統領だった。
タイシが入室すると、ブラウンは立ち上がった。
「ようこそ、タイシ殿」
「噂は聞いているよ」
「22歳の天才、リベラの奇跡を起こした男だとね」
タイシは、礼をした。
「お会いできて光栄です、大統領」
ブラウンは、椅子を勧めた。
「座ってくれ」
「さて、単刀直入に聞こう」
「何のために、ここへ?」
タイシは、答えた。
「同盟です」
「そして、貿易協定」
ブラウンは、興味を示した。
「ほう?」
「詳しく聞かせてくれ」
タイシは、説明した。
「まず、軍事同盟」
「グランディア帝国に対抗するためです」
「そして、技術提供」
「ゴーレム技術、電力技術、医療技術」
「全てを提供します」
ブラウンは、頷いた。
「ノーザン王国と同じ条件か」
タイシは、驚いた。
「もう、お聞きになっていましたか」
ブラウンは、笑った。
「情報は、金だ」
「ノーザン王国での交渉は、全て把握している」
タイシは、感心した。
「さすがです」
「では、話が早い」
ブラウンは、真剣な表情になった。
「だが、タイシ殿」
「サウザン連邦は、ノーザン王国とは違う」
「我々は、実利を重視する」
「技術提供だけでは、不十分だ」
タイシは、微笑んだ。
「分かっています」
「だから、貿易協定を提案します」
タイシは、書類を取り出した。
「リベラの製品を、サウザンで販売します」
「ゴーレム製品、電化製品、医薬品」
「その利益を、6対4で分配します」
「サウザンが6、リベラが4」
ブラウンは、驚いた。
「6対4?」
「サウザンの方が多い?」
タイシは、頷いた。
「はい」
「サウザンには、販売網があります」
「その価値を、認めています」
ブラウンは、計算し始めた。
しばらくして、ブラウンは言った。
「タイシ殿」
「お前の提案は、魅力的だ」
「だが、一つ問題がある」
タイシは、尋ねた。
「何でしょうか?」
ブラウンは、答えた。
「帝国だ」
「我々が同盟を結べば」
「帝国は、サウザンも攻撃するだろう」
「その時、本当に勝てるのか?」
タイシは、自信を持って答えた。
「勝てます」
「リベラ、ノーザン、サウザン」
「3国の軍事力を合わせれば」
「人口2,850万人、軍事力60万人以上」
「帝国は、人口3,000万人、軍事力50万人」
「数では、互角です」
「そして、我々にはゴーレムがあります」
「戦闘ゴーレム10,000体」
「これで、圧倒的な優位に立てます」
ブラウンは、深く考えた。
長い沈黙の後、ブラウンは言った。
「タイシ殿」
「お前を信じよう」
「サウザン連邦は、リベラ共和国との同盟に同意する」
タイシは、深く頭を下げた。
「ありがとうございます、大統領!」
ブラウンは、手を差し出した。
「これからは、盟友だ」
タイシは、その手を握った。
「共に、帝国と戦いましょう」
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**【同盟締結状況】**
**成功:**
- ノーザン王国(軍事同盟)
- サウザン連邦(軍事同盟+貿易協定)
**未交渉:**
- イースタン商業同盟
- 魔族領
**リベラ・サウザン貿易協定内容:**
- 利益配分:サウザン60%、リベラ40%
- 取扱商品:ゴーレム製品、電化製品、医薬品
- 予想年間売上:1,000万金貨
- 予想利益:リベラ側 400万金貨/年
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