第四章:外交の扉
リベラ共和国の誕生から、2ヶ月後。
タイシは、20歳。
首相として、多忙な日々を送っていた。
そんなある日。
外務省から、報告があった。
「首相」
「ノーザン王国から、使節団が到着しました」
タイシは、驚いた。
「ノーザン王国?」
ノーザン王国。
リベラの北方に位置する、大国だ。
人口850万人。
軍事力も強大で、15万人の常備軍を持つ。
「使節団の目的は?」
外務官が、答えた。
「国交樹立の打診です」
「リベラ共和国の改革に、強い関心を持っているとのことです」
タイシは、頷いた。
「分かった」
「明日、王宮で会談を設定してください」
---
翌日。
王宮の謁見の間。
ノーザン王国の使節団が、到着した。
使節団の長は、ラルフ王子。
ノーザン国王の次男で、30歳。
背が高く、精悍な顔立ちの男性だった。
タイシが、歓迎の挨拶をした。
「ようこそ、リベラ共和国へ」
「ラルフ王子」
ラルフは、深く礼をした。
「タイシ首相」
「お会いできて光栄です」
「あなたの噂は、我が国にも届いています」
タイシは、微笑んだ。
「どのような噂ですか?」
ラルフは、答えた。
「20歳にして、国を変革した」
「貴族制度を廃止し、共和国を作った」
「そして」
ラルフは、使節団の後ろを指した。
「獣人も、人間と平等に扱う」
使節団の中には、数名の獣人がいた。
ライオンの獣人、狼の獣人、熊の獣人。
タイシは、理解した。
「ノーザン王国でも、獣人への差別がありますか?」
ラルフは、苦い表情になった。
「はい」
「残念ながら」
「我が国では、獣人は二級市民扱いです」
「権利が制限され」
「多くの職業に就けません」
タイシは、獣人たちに歩み寄った。
「リベラでは」
「全ての種族が平等です」
「獣人も、人間も、エルフも」
「誰もが、同じ権利を持ちます」
獣人の一人、ライオンの獣人が言った。
「本当ですか?」
「私たちも、人間と同じ権利を?」
タイシは、頷いた。
「はい」
「憲法で保障されています」
「そして、実際に」
タイシは、側近を呼んだ。
「こちらは、私の側近の一人」
「獣人のグレン」
グレンは、狼の獣人だった。
「グレンは、外務省の次官です」
「重要な職に、獣人が就いています」
ノーザンの使節団は、驚愕した。
「獣人が、次官に...」
ラルフ王子は、深く感動した。
「素晴らしい」
「これこそ、真の平等ですね」
---
会談は、和やかに進んだ。
ラルフ王子が、提案した。
「タイシ首相」
「我が国と、国交を樹立したい」
「そして、貿易協定を結びたいのです」
タイシは、答えた。
「喜んで」
「リベラは、友好国を歓迎します」
「ですが」
タイシは、真剣な表情になった。
「一つ、条件があります」
ラルフは、緊張した。
「何でしょうか?」
タイシは、答えた。
「獣人への差別を、改善してください」
「すぐに完全撤廃とは言いません」
「ですが、段階的に改善する計画を示してください」
ラルフは、驚いた。
「それが、条件ですか?」
タイシは、頷いた。
「はい」
「リベラは、差別を容認する国とは」
「深い関係を築けません」
ラルフは、しばらく考え込んだ。
そして、決意した。
「分かりました」
「帰国したら、父王に進言します」
「獣人の権利拡大を」
タイシは、微笑んだ。
「ありがとうございます」
「それでは、国交樹立に向けて」
「詳細を詰めましょう」
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3日間の会談。
両国は、以下の合意に達した。
**【リベラ・ノーザン協定】**
1. 相互不可侵条約
- 両国は互いに攻撃しない
2. 貿易協定
- 関税を50%削減
- リベラ:ゴーレム製品、農産物を輸出
- ノーザン:鉱物資源、毛皮製品を輸出
3. 技術交流協定
- リベラの農業技術を提供
- ノーザンの鉱業技術を共有
4. 人的交流
- 留学生の相互受け入れ
- 年間100名ずつ
ラルフ王子が、署名した。
「これで、両国は友好国です」
タイシも、署名した。
「平和と繁栄のために」
歴史的な瞬間だった。
リベラ共和国、初の国交樹立。
その時、会議室のドアが開いた。
一人の女性が、勢いよく入ってきた。
獣人族の女性だった。
年齢は22歳。
狼の耳と尾を持つ、美しい女性。
銀色の髪。
青い瞳。
引き締まった体。
野性的な美しさがあった。
ラルフ王子が、紹介した。
「タイシ首相」
「妹のルナです」
「ノーザン王国の第二王女」
ルナは、タイシに近づいた。
そして、じっくりと観察した。
「ふむ」
「噂通り、若いな」
「だが」
ルナは、タイシの目を見つめた。
「目が良い」
「強い意志を感じる」
「獣人族は、目を見れば分かる」
「お前は、本物だ」
タイシは、礼をした。
「ルナ王女」
「お会いできて光栄です」
ルナは、笑った。
「堅苦しいのは嫌いだ」
「ルナと呼んでくれ」
「私も、お前をタイシと呼ぶ」
タイシは、微笑んだ。
「分かりました、ルナ」
ルナは、満足そうに頷いた。
「良い返事だ」
「気に入ったぞ、タイシ」
ラルフが、苦笑した。
「妹は、少々奔放でして」
「お許しください」
タイシは、首を振った。
「いえ、率直で良いと思います」
「これからも、よろしくお願いします」
ルナは、タイシの肩を叩いた。
「もちろんだ!」
「お前の国は、素晴らしい!」
「獣人も人間も、平等だ!」
「我が国も、見習わなければな!」
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ラルフ王子が、帰国する前日。
タイシは、王都を案内した。
中央市場。
様々な種族が、商売をしている。
人間、獣人、エルフ、ドワーフ。
全てが、対等に取引している。
ラルフは、感嘆した。
「本当に、平等なのですね」
次に、無料学校を訪問した。
教室では、人間の子供と獣人の子供が一緒に学んでいた。
先生も、獣人だった。
ラルフは、涙ぐんだ。
「我が国でも」
「いつか、このようになれば」
タイシは、ラルフの肩に手を置いた。
「必ずなれます」
「あなたのような人がいれば」
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ラルフ王子の帰国から、2週間後。
今度は、サウザン連邦の使節団が到着した。
サウザン連邦。
リベラの南方に位置する、連邦国家。
7つの国が連邦を組んでいる。
人口1,300万人。
技術立国として知られている。
使節団の長は、ソフィア博士。
50歳の女性科学者だった。
そして、もう一人。
エルフの王女、エレノアが同行していた。
年齢は150歳。
だが、外見は20代前半の美しい女性。
金色の長い髪。
緑色の瞳。
優雅な立ち居振る舞い。
王宮の会議室。
ソフィア博士が、まず挨拶した。
「タイシ首相」
「お会いできて光栄です」
「私は、サウザン連邦科学院の院長、ソフィアです」
タイシは、礼をした。
「ようこそ、リベラへ」
エレノアが、前に出た。
「タイシ首相」
「初めまして」
「私は、エレノア」
「サウザン連邦を構成する国の一つ」
「エルフ王国の第一王女です」
エレノアは、深く礼をした。
タイシは、驚いた。
「エルフ王国の王女が」
「直接おいでになるとは」
エレノアは、微笑んだ。
「父王の命により」
「そして、私自身の希望で」
「リベラの改革について」
「この目で見たかったのです」
タイシは、頷いた。
「ありがとうございます」
「後ほど、王都をご案内します」
エレノアは、嬉しそうに笑った。
「楽しみにしております」
ソフィア博士が、言った。
「タイシ首相」
「私たちは、リベラの技術に驚嘆しています」
「ゴーレム技術」
「電力技術」
「農業技術」
「全てが、革新的です」
タイシは、答えた。
「ありがとうございます」
「ですが、サウザン連邦も」
「冶金技術や機械技術で有名ですね」
ソフィアは、微笑んだ。
「よくご存知ですね」
「私たちは、提案があります」
「技術交流を、しませんか?」
タイシは、興味を示した。
「詳しく聞かせてください」
ソフィアは、説明した。
「リベラの農業技術を、教えていただきたい」
「我が連邦は、食料自給率が70%しかありません」
「リベラの技術があれば、100%達成できます」
「そして、私たちは」
「冶金技術と機械技術を提供します」
「リベラの工業発展に、役立つはずです」
タイシは、考えた。
*Win-Winの関係だ*
*悪くない*
「承知しました」
「技術交流協定を結びましょう」
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1週間の交渉。
両国は、協定に署名した。
**【リベラ・サウザン技術交流協定】**
1. 農業技術の提供(リベラ→サウザン)
- 改良種子の提供
- 灌漑技術の指導
- 農業ゴーレムの販売
2. 冶金技術の提供(サウザン→リベラ)
- 高品質鋼鉄の製造技術
- 合金技術
- 精錬技術
3. 留学生交換
- 相互に200名/年
4. 貿易協定
- 関税40%削減
ソフィア博士が、言った。
「タイシ首相」
「あなたは、20歳とは思えないほど」
「賢明ですね」
タイシは、謙遜した。
「いえ、まだまだ未熟です」
「皆さんから、学ぶことが多いです」
---
さらに1ヶ月後。
イースタン商業同盟の使節団が到着した。
イースタン商業同盟。
リベラの東方、海を越えた島々の連合。
13の商業都市国家が同盟を組んでいる。
人口1,600万人。
海洋貿易で繁栄している。
使節団の長は、マルコ商人。
40歳の商人で、同盟の代表だった。
そして、もう一人。
ドワーフの王女、グレタが同行していた。
年齢は80歳。
だが、ドワーフは長命なので、外見は30代。
赤茶色の髪。
茶色の瞳。
身長は140センチメートルと小柄だが、筋肉質。
豪快な性格が、外見にも表れていた。
王宮の会議室。
マルコが、まず紹介した。
「タイシ首相!」
「お会いできて光栄です!」
「私は、イースタン商業同盟の代表、マルコです!」
タイシは、礼をした。
「ようこそ、リベラへ」
グレタが、前に出た。
「がはははは!」
豪快な笑い声が、部屋に響いた。
「タイシ首相!」
「噂は聞いているぞ!」
「20歳で国を変えた男!」
「会いたかった!」
グレタは、タイシに近づき、手を差し出した。
タイシは、その手を握った。
グレタの握力は、驚くほど強かった。
「私は、グレタ!」
「イースタン商業同盟を構成する国の一つ」
「ドワーフ王国の第一王女だ!」
「よろしく頼むぞ!」
タイシは、微笑んだ。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「グレタ王女」
グレタは、手を振った。
「王女はいらん!」
「グレタと呼んでくれ!」
「堅苦しいのは嫌いだ!」
マルコが、苦笑した。
「グレタ王女は、いつもこうなんです」
「お許しください」
タイシは、笑った。
「いえ、率直で良いと思います」
グレタは、満足そうに頷いた。
「気に入ったぞ、タイシ!」
「良い男だ!」
そして、マルコが、開口一番言った。
「さて、タイシ首相!」
「あなたのゴーレム技術を」
「我々に売ってください!」
タイシは、微笑んだ。
「単刀直入ですね」
マルコは、笑った。
「商人ですから」
「時間の無駄は嫌いなんです」
「で、どうです?」
「いくらなら売ってくれます?」
タイシは、答えた。
「技術は、売りません」
マルコは、落胆した。
「そうですか...」
だが、タイシは続けた。
「ですが、協力関係は結べます」
マルコの目が、輝いた。
「詳しく!」
タイシは、説明した。
「リベラは、ゴーレム製品を製造します」
「イースタン同盟は、それを販売します」
「利益は、折半です」
マルコは、驚いた。
「折半?」
「我々が販売するだけで、半分ももらえるのですか?」
タイシは、頷いた。
「はい」
「イースタンには、広大な販売網があります」
「それは、大きな価値です」
マルコは、感動した。
「素晴らしい条件だ!」
「ですが」
マルコは、真剣な表情になった。
「海を渡る輸送が、問題です」
「船は遅く、危険です」
タイシは、微笑んだ。
「それも、解決策があります」
「ゴーレム船を、開発中です」
マルコは、驚愕した。
「ゴーレム船!?」
タイシは、説明した。
「魔力で動く船です」
「速度は、通常の船の3倍」
「安全性も、10倍です」
マルコの目が、さらに輝いた。
「それは、革命的だ!」
「海上交易が、完全に変わります!」
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イースタン商業同盟との協定も、すぐにまとまった。
**【リベラ・イースタン商業協定】**
1. ゴーレム製品の独占販売権
- イースタンが、リベラ製品を独占販売
- 利益は50%ずつ分配
2. ゴーレム船の共同開発
- リベラが技術提供
- イースタンが航路開拓
3. 貿易特区の設置
- 王都に、イースタン商人の特区
- 関税30%削減
4. 相互防衛条項
- 海賊対策で協力
マルコが、署名しながら言った。
「タイシ首相」
「あなたは、商人としても一流ですね」
タイシは、笑った。
「商売は、師匠に学びました」
「スミス商会のマイケル」
「彼から、多くを学びました」
マルコは、頷いた。
「マイケル!」
「あの伝説の商人ですか!」
「なるほど、それであなたは商売が上手いのか」
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3ヶ月で、3つの国との国交を樹立した。
ノーザン王国、サウザン連邦、イースタン商業同盟。
リベラ共和国は、国際的に認められた。
タイシは、執務室で報告書を見ていた。
**【外交成果】**
**ノーザン王国:**
- 人口:850万人
- 軍事力:15万人
- 経済規模:3,000万金貨
**サウザン連邦:**
- 人口:1,300万人
- 軍事力:10万人
- 経済規模:4,500万金貨
**イースタン商業同盟:**
- 人口:1,600万人
- 軍事力:8万人(海軍)
- 経済規模:6,000万金貨
**リベラ共和国:**
- 人口:500万人
- 軍事力:5万人
- 経済規模:1,500万金貨
宰相エドワードが、言った。
「首相」
「素晴らしい成果です」
「3ヶ月で、3つの強国と国交を樹立しました」
タイシは、頷いた。
「これで、リベラは孤立していない」
「友好国がいる」
「もし、脅威があっても」
「共に戦える仲間がいる」
エドワードは、尋ねた。
「脅威、ですか?」
タイシは、窓の外を見た。
「まだ、何もない」
「だが」
「平和は、永遠ではない」
「いつか、必ず試練が来る」
「その時のために」
「準備をしておく必要がある」
エドワードは、深く頷いた。
「承知しました」
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**第四部 第四章 了**




