第三章:リベラ共和国の誕生
タイシは、20歳になっていた。
国民投票から、6ヶ月が経過していた。
この間、新しい憲法の起草が進められていた。
王宮の大会議室。
憲法起草委員会。
30名の委員が集まっていた。
法律家、学者、元貴族、商人、農民、労働者。
様々な立場の人々が参加していた。
タイシが、委員長を務めていた。
「皆さん」
「憲法草案が、ついに完成しました」
タイシは、厚い書類を手に取った。
「この憲法は」
「全ての国民が平等であることを保障します」
「言論の自由、信教の自由、集会の自由」
「全ての基本的人権を保障します」
委員の一人、元農民のジョンが言った。
「素晴らしい」
「これで、私たちも人間として扱われる」
別の委員、法律家のマーガレットが言った。
「この憲法は」
「世界で最も進んだ憲法です」
「他の国々の模範となるでしょう」
タイシは、頷いた。
「では、これを国民に公開します」
「そして、1ヶ月後」
「憲法の承認投票を行います」
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憲法草案が、全国に配布された。
識字率が65%まで上がっていたため、多くの国民が自分で読むことができた。
読めない人のためには、行政官が説明会を開いた。
王都の中央広場。
タイシが、憲法について説明していた。
「この憲法の第一条」
「全ての国民は、法の下に平等である」
「これは、最も重要な原則です」
「貴族も、平民も」
「人間も、獣人も」
「全てが、完全に平等です」
市民の一人が、質問した。
「では、差別は禁止されるのですか?」
タイシは、頷いた。
「はい」
「憲法第12条で」
「人種、性別、出身、宗教による差別を禁止します」
「違反者は、厳罰に処されます」
獣人の市民が、涙を流した。
「ありがとうございます」
「私たちも、ついに人間と同じ権利を持てるのですね」
タイシは、その獣人に歩み寄った。
「あなた方は」
「常に人間と同じ権利を持っていました」
「ただ、それが認められていなかっただけです」
「今日から、それが変わります」
市民たちから、大きな拍手が起こった。
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1ヶ月後。
憲法の承認投票。
結果は、圧倒的だった。
賛成:280万票(97%)
反対:9万票(3%)
憲法が、正式に承認された。
王宮の大ホール。
国王アルバート三世が、最後の演説を行った。
「国民の皆さん」
「今日は、歴史的な日です」
「リベラ共和国が、正式に誕生します」
「私は、王として」
「この国を500年統治してきた王家の末裔として」
「皆さんに感謝します」
国王の声が、少し震えた。
「そして、これからは」
「象徴として」
「皆さんと共にあります」
大ホールから、温かい拍手が送られた。
国王は、タイシに向き直った。
「タイシ」
「お前に、これを託す」
国王は、王権の象徴である杖を、タイシに手渡した。
「もはや、これは権力の象徴ではない」
「だが、責任の象徴だ」
「国民への奉仕の象徴だ」
「お前なら、それを果たせる」
タイシは、深く頭を下げた。
「ありがとうございます、陛下」
「いえ」
タイシは、顔を上げた。
「アルバート様」
「あなたの遺志を、必ず受け継ぎます」
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同じ日の夕方。
議会選挙が、発表された。
1ヶ月後に実施される。
議席数は、200。
全国を50の選挙区に分け、各選挙区から4名ずつ選出する。
立候補の条件は、25歳以上。
貴族、平民、獣人、誰でも立候補できる。
選挙運動が、始まった。
様々な候補者が、演説を行った。
ある候補者は、経済政策を訴えた。
「私が当選したら」
「税金を下げます!」
「そして、商業を活性化させます!」
別の候補者は、福祉政策を訴えた。
「私は、医療と教育を無料にします!」
「全ての国民が、安心して暮らせる社会を!」
さらに別の候補者は、農業政策を訴えた。
「農民を支援します!」
「農業技術を向上させ」
「食料自給率を100%にします!」
タイシは、この光景を見て満足した。
*これが、民主主義だ*
*多様な意見が戦わせられる*
*そして、国民が選ぶ*
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1ヶ月後。
議会選挙。
投票率は、92%。
国民の関心の高さを示していた。
開票結果。
様々な候補者が当選した。
元商人、元農民、元貴族、獣人、エルフ。
多様な人々が、議会に集まった。
そして、議会の初日。
首相の選出。
議員たちは、満場一致でタイシを選んだ。
タイシは、20歳にして、リベラ共和国の初代首相となった。
議会の演壇。
タイシが、首相就任演説を行った。
「議員の皆さん」
「そして、国民の皆さん」
「私、タイシは」
「リベラ共和国の初代首相に就任しました」
「これは、大きな責任です」
「ですが、私は一人ではありません」
タイシは、議員たちを見回した。
「ここにいる200名の議員」
「そして、500万人の国民」
「皆さんと共に」
「新しい国を作ります」
拍手が、議場に響いた。
「我々の目標は、明確です」
「全ての国民が、自由で平等に生きられる社会」
「貧困のない社会」
「差別のない社会」
「誰もが、幸せに暮らせる社会」
「それが」
タイシは、拳を握った。
「リベラ共和国です!」
議場が、興奮に包まれた。
全員が立ち上がり、拍手した。
*新しい時代が、始まった*
*リベラ共和国の誕生だ*
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その夜。
タイシは、一人で王宮の屋上に立っていた。
王都の夜景が、美しく輝いていた。
電灯が普及し、街は明るく照らされている。
*ここまで来た*
*15歳で村から王都に来て*
*5年間*
*多くの戦いがあった*
*保守派貴族との戦い*
*改革への抵抗*
*様々な困難*
*だが、乗り越えた*
*そして、今*
タイシは、空を見上げた。
*リベラ共和国が誕生した*
*真の平等な社会への第一歩だ*
エドガーが、屋上に上がってきた。
「タイシ首相」
「祝賀会が始まります」
タイシは、振り返った。
「首相、か」
「まだ、慣れないな」
エドガーは、微笑んだ。
「これから、慣れていくでしょう」
「あなたは、素晴らしい首相になります」
タイシは、頷いた。
「頑張ろう」
「リベラの未来のために」
二人は、祝賀会に向かった。
新しい時代の幕開けだった。
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数週間後。
リベラ共和国の誕生は、国際的にも大きなニュースとなった。
王国から共和国への平和的移行。
これは、歴史上稀な出来事だった。
各国から、使節団が訪れ始めた。
リベラの改革に、興味を持つ国々。
そして、その中には。
タイシの運命を大きく変える、出会いもあった。
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