第四部:共和国への道 第一章:改革の深化
1年後。
タイシは、18歳になっていた。
保守派貴族30名の追放から、1年が経過した。
リベラ王国は、大きく変わっていた。
王宮の謁見の間。
国王アルバート三世が、タイシに語りかけた。
「タイシ」
「この1年で、国は見違えるように良くなった」
タイシは、深く礼をした。
「陛下のおかげです」
国王は、首を振った。
「いや、お前の功績だ」
「税制改革、教育改革、医療改革」
「全てが成功した」
宰相エドワードが、報告書を開いた。
「現在の状況を報告します」
**【リベラ王国の現状】**
**教育:**
- 無料学校:100校→500校(5倍増)
- 識字率:30%→65%(2倍以上)
- 就学率:40%→85%
- 教師:500名→2,500名
**医療:**
- 無料診療所:50所→300所(6倍増)
- 医師:200名→1,200名
- 死亡率:15%→8%(半減近く)
- 平均寿命:45歳→52歳
**経済:**
- GDP:500万金貨→1,200万金貨(2.4倍)
- 税収:80万金貨→250万金貨(3倍以上)
- 失業率:25%→8%
- 貧困率:45%→18%
**インフラ:**
- 道路網:王都から全主要都市へ整備
- 水道普及率:20%→60%
- 電力普及率:5%→30%(ゴーレム発電)
国王は、感嘆した。
「驚異的だ」
「わずか1年で、ここまで変わるとは」
タイシは、答えた。
「まだ、道半ばです」
「貧困率18%は、高すぎます」
「目標は、5%以下です」
宰相が、尋ねた。
「それは、可能なのですか?」
タイシは、頷いた。
「はい」
「次の段階の改革を進めます」
「まず、行政官制度の完成」
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行政官制度。
タイシが構想した、新しい統治システムだった。
従来は、各地域を貴族が治めていた。
だが、貴族の多くは無能で腐敗していた。
タイシは、これを変えた。
試験によって選ばれた、優秀な行政官が各地域を治める。
1年間で、この制度が全国に広がった。
王宮の会議室。
タイシは、200名の行政官たちに訓示した。
「皆さん」
「あなた方は、リベラの未来を担う者たちです」
「貴族ではなく、能力によって選ばれた」
「国民のために働く、真の公僕です」
行政官たちは、真剣な表情で聞いていた。
「あなた方の使命は、3つ」
「第一に、法の公正な執行」
「第二に、国民の福祉の向上」
「第三に、経済の発展」
タイシは、一人一人を見回した。
「贈収賄は、絶対に許しません」
「発覚した場合、即座に解任します」
「そして、厳罰に処します」
「ですが」
タイシの表情が和らいだ。
「正しく働く者には、十分な報酬を払います」
「行政官の給与は、平均的労働者の3倍」
「さらに、業績に応じたボーナスもあります」
行政官たちの顔に、安堵の色が浮かんだ。
「では、それぞれの任地へ」
「国民のために、働いてください」
「承知しました!」
全員が、一斉に礼をした。
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3ヶ月後。
行政官制度の効果が、明確に現れ始めた。
各地域からの報告。
「北部地域、治安が大幅に改善」
「東部地域、税収が30%増加」
「南部地域、貧困率が25%から12%に低下」
「西部地域、インフラ整備が急速に進展」
タイシは、満足そうに頷いた。
「良い傾向だ」
だが、問題も残っていた。
残存する保守派貴族、20名。
彼らは、まだ影響力を持っていた。
タイシの執務室。
エドガーが報告に来た。
「タイシ殿」
「保守派貴族20名の動きを監視しています」
「現在のところ、大きな動きはありません」
「ですが」
エドガーは、表情を曇らせた。
「密かに会合を開いているようです」
「何か、企んでいる可能性があります」
タイシは、考え込んだ。
「追放はしなかった」
「改心の機会を与えた」
「だが、彼らは変わらないかもしれない」
エドガーが、言った。
「監視を続けます」
「何か動きがあれば、すぐに報告します」
タイシは、頷いた。
「頼む」
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6ヶ月後。
タイシは、19歳になる直前だった。
王国は、さらに繁栄していた。
だが、タイシの心には、一つの決意があった。
*貴族制度を、完全に廃止する*
*真の平等な社会を作る*
*そのためには*
*王国を、共和国に変える*
タイシは、国王に面会を求めた。
国王の執務室。
二人きりの会話。
「陛下」
「お話ししたいことがあります」
国王は、タイシを見た。
「何だ?」
タイシは、深呼吸した。
「貴族制度を、廃止したいのです」
国王は、驚いた表情になった。
「貴族制度を?」
タイシは、頷いた。
「はい」
「貴族制度は、不平等の根源です」
「生まれによって、特権が与えられる」
「これは、間違っています」
国王は、しばらく沈黙した。
「だが、貴族制度は」
「この国の伝統だ」
「500年続いている」
タイシは、答えた。
「伝統だからといって」
「正しいとは限りません」
「奴隷制度も、長い伝統でした」
「ですが、私たちはそれを廃止しました」
「貴族制度も、同じです」
国王は、深く考え込んだ。
「もし、貴族制度を廃止したら」
「王制も、どうなる?」
タイシは、真剣な表情で答えた。
「共和制への移行を提案します」
「王制を廃止し」
「国民が選んだ議会が国を治める」
国王は、驚愕した。
「私の、退位を求めるのか?」
タイシは、首を振った。
「いいえ」
「陛下には、象徴として残っていただきたい」
「実権は持たないが」
「国民の統合の象徴として」
「そして」
タイシは、深く頭を下げた。
「これまでのご功績に、心から感謝します」
「陛下がいなければ」
「改革は成功しませんでした」
国王は、立ち上がった。
窓の外を見た。
「私は」
「王として生まれた」
「だが、良い王だっただろうか?」
タイシは、答えた。
「素晴らしい王でした」
「国民のことを、常に考えておられた」
「だからこそ、改革を支持してくださった」
国王は、振り返った。
「タイシ」
「お前の言うとおりかもしれない」
「貴族制度は、時代遅れだ」
「王制も、そうかもしれない」
「だが」
国王は、微笑んだ。
「これは、私だけでは決められない」
「国民に、問おう」
タイシは、驚いた。
「国民投票、ですか?」
国王は、頷いた。
「そうだ」
「国の形を変えるのだから」
「国民の意思を確認すべきだ」
タイシは、深く礼をした。
「ありがとうございます、陛下」
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