第十章:火魔法の応用
翌日。
タイシの村の研究棟。
タイシは、窒息魔法についてさらに研究を続けていた。
「ウォーターマスクとソイルマスク」
「2つの窒息魔法を開発した」
「だが」
タイシは考えた。
「まだ、可能性がある」
「他の属性でも、同じことができるはずだ」
統括型ゴーレムが質問した。
「マスター、次は何をお考えですか?」
「火魔法だ」
タイシは答えた。
「火で、窒息させる」
統括型ゴーレムが分析した。
「火魔法による窒息攻撃」
「一見、矛盾しているように思えます」
「火は、酸素を消費します」
「しかし、熱で対象を焼いてしまう可能性があります」
「それは、問題だ」
タイシは頷いた。
「だが、コントロールできれば」
「火で顔を覆い、酸素を消費させる」
「熱は低く保つ」
「そうすれば、窒息させられる」
「理論上は可能です」
統括型ゴーレムが答えた。
「ただし、非常に高度な制御が必要です」
「やってみる」
タイシは、魔法陣を描き始めた。
---
タイシは、魔力を集中させた。
火魔法。
Lv15の力。
*イメージする*
*炎の球体*
*でも、熱くない*
*酸素だけを消費する炎*
*顔を覆う形*
*密着して、剥がれない*
魔力が、形を成した。
だが
最初は、失敗した。
炎が、激しく燃え上がった。
制御できない。
タイシは、何度も試行錯誤した。
2回目。
炎が、消えてしまった。
3回目。
炎が、不安定に揺れた。
4回目。
炎が、爆発した。
タイシは、諦めなかった。
*もっと繊細に*
*炎の温度を、ギリギリまで下げる*
*でも、燃焼は続ける*
5回目。
ついに
成功した。
タイシの前に、赤い炎の球体が浮かんだ。
直径30センチ。
柔らかく揺れている。
だが、熱は感じない。
タイシは、手を近づけてみた。
温かい。
だが、火傷するほどではない。
「これだ」
タイシは満足した。
「低温の炎」
「酸素だけを消費する炎」
タイシは、ダミー人形に向けて、炎球を放った。
炎球が、ダミーの顔面に飛んでいった。
そして
ぴたり、と張り付いた。
ダミーの顔全体を、炎球が覆った。
鼻と口が、完全に炎の中。
だが、ダミーは燃えなかった。
炎は、顔に密着しているだけ。
「完璧だ」
タイシは喜んだ。
「これなら、対象を燃やさずに」
「酸素を消費できる」
「窒息させられる」
タイシは、この魔法に名前をつけた。
「ファイヤーマスク」
「火の仮面だ」
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タイシは、実戦テストに移った。
森へ向かう。
魔物を探す。
最初のターゲットは
ゴブリン。
レベル30。
タイシは、ファイヤーマスクを発動した。
炎球が出現し、ゴブリンの顔面に飛んでいった。
ぴたり、と張り付いた。
ゴブリンは、パニックになった。
顔に炎がついている。
熱い。
だが、火傷するほどではない。
ゴブリンは、必死に炎を消そうとした。
手で叩く。
地面に顔をこすりつける。
だが
炎は、消えない。
魔法の炎だからだ。
そして
ゴブリンは、呼吸ができない。
炎が、酸素を全て消費している。
15秒。
ゴブリンが、倒れた。
窒息死。
タイシは、炎を消した。
ゴブリンの顔を確認する。
少し赤くなっている。
軽い火傷。
だが、大きな損傷はない。
体も、ほぼ無傷。
「15秒か」
タイシは驚いた。
「ソイルマスクよりも速い」
「炎が酸素を消費するスピードが、速いからだ」
タイシは、次のターゲットに移った。
グレイウルフ。
レベル50。
ファイヤーマスクを発動。
炎球が、グレイウルフの顔に張り付いた。
グレイウルフは、激しく暴れた。
炎が怖い。
本能的に、逃げようとする。
だが
炎は、顔に張り付いたまま。
20秒。
グレイウルフが、倒れた。
窒息死。
「20秒」
タイシは記録した。
「ソイルマスクの30秒よりも、10秒速い」
タイシは、さらに強力な魔物を探した。
アイスゴーレム。
レベル100の氷属性魔物。
全身が氷でできている。
冷気を放つ。
タイシは、ファイヤーマスクを発動した。
炎球が、アイスゴーレムの顔に張り付いた。
アイスゴーレムは、冷気を放った。
周囲の空気が、凍りつく。
だが
炎球は、消えなかった。
むしろ
氷属性の魔物に対して、炎は相性が良い。
アイスゴーレムの顔の氷が、少し溶け始めた。
30秒。
アイスゴーレムが、動かなくなった。
窒息死。
「素晴らしい」
タイシは喜んだ。
「氷属性の魔物にも、有効だ」
「むしろ、相性が良い」
次に、タイシは水属性の魔物を試した。
ウォーターエレメンタル。
レベル90の水属性魔物。
水でできた体。
タイシは、ファイヤーマスクを発動した。
炎球が、ウォーターエレメンタルの顔に張り付いた。
ウォーターエレメンタルは、水を放った。
自分の水で、炎を消そうとする。
だが
炎球は、消えなかった。
魔法の炎は、普通の水では消えない。
それどころか
炎の熱で、ウォーターエレメンタルの体が蒸発し始めた。
25秒。
ウォーターエレメンタルが、崩れた。
窒息死と、蒸発の複合効果。
「完璧だ」
タイシは満足した。
「水属性の魔物にも、非常に有効だ」
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タイシは、さらに実験を続けた。
様々な魔物に、ファイヤーマスクを使った。
オーガ。
レベル80。
25秒で窒息死。
ストームイーグル。
レベル100。
30秒で窒息死。
ファイアドレイク。
レベル120の火属性魔物。
タイシは、少し心配だった。
*火属性の魔物に、火の魔法は効くのか?*
だが
試してみる価値はある。
タイシは、ファイヤーマスクを発動した。
炎球が、ファイアドレイクの顔に張り付いた。
ファイアドレイクは、炎を放った。
全身から、火柱が上がる。
だが
ファイヤーマスクの炎は、消えなかった。
ファイアドレイクの炎と、ファイヤーマスクの炎が、混ざり合った。
そして
ファイヤーマスクの炎が、酸素を消費し続けた。
1分。
ファイアドレイクが、倒れた。
窒息死。
「驚いた」
タイシは呟いた。
「火属性の魔物にも、効く」
「炎は消えないし」
「酸素を消費する効果は、変わらない」
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タイシは、ファイヤーマスクの訓練を続けた。
複数同時発動。
1体。
2体。
3体。
5体。
10体。
15体。
20体。
同時に20体の魔物を、ファイヤーマスクで攻撃した。
20体の魔物が、次々と倒れた。
「素晴らしい」
タイシは満足した。
その時
タイシの体が、光に包まれた。
**【スキル習得!】**
**ファイヤーマスク:Lv1**
**【スキルレベルアップ!】**
**ファイヤーマスク:Lv1 → Lv7**
**【効果】**
- 同時発動可能数:20体
- 発動速度:4倍
- 効果時間:15秒で窒息死
- 射程距離:200メートル
- 特殊効果:氷・水属性に特効、全属性に有効
タイシは、驚いた。
「いきなりLv7!」
「これまでで最高の成長速度!」
「そして、効果も最強!」
「15秒で窒息死!」
「射程距離200メートル!」
「同時に20体まで!」
「全属性に有効!」
タイシは、新しい力を試した。
200メートル先の魔物に、ファイヤーマスクを発動した。
炎球が、一瞬で魔物の顔に張り付いた。
15秒後。
魔物が、倒れた。
「完璧だ」
タイシは満足した。
「ファイヤーマスクは、最強の窒息魔法だ」
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タイシは、統括型ゴーレムに報告した。
「ファイヤーマスクの開発に成功した」
「3つの窒息魔法の中で、最強だ」
統括型ゴーレムが分析した。
「マスター、比較データです」
**【窒息魔法比較】**
**ウォーターマスク:**
- 効果時間:30秒
- 射程距離:100メートル
- 同時発動:10体
- 利点:痕跡が残らない(暗殺向き)
- 弱点:高温で蒸発、風に弱い
**ソイルマスク:**
- 効果時間:20秒
- 射程距離:150メートル
- 同時発動:15体
- 利点:高温・強風に強い、剥がれにくい
- 弱点:現場に土が残る可能性
**ファイヤーマスク:**
- 効果時間:15秒
- 射程距離:200メートル
- 同時発動:20体
- 利点:全属性に有効、最速の窒息
- 弱点:軽い火傷跡が残る
「ファイヤーマスクが、戦闘性能では最強です」
統括型ゴーレムが結論づけた。
「ただし、軽い火傷跡が残るため」
「完全に無傷が必要な場合は、ソイルマスク」
「痕跡を残したくない暗殺には、ウォーターマスク」
「用途によって、使い分けるべきです」
タイシは頷いた。
「その通りだ」
「3つの窒息魔法」
「それぞれに、特徴がある」
「状況に応じて、使い分ける」
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タイシは、魔導型ゴーレムにファイヤーマスクも搭載することにした。
「統括型ゴーレム」
「魔導型ゴーレムに、ファイヤーマスクも搭載してくれ」
「3つの窒息魔法、全てを使えるようにする」
「イエス、マスター」
統括型ゴーレムが答えた。
「最終改良版を開発します」
「ウォーターマスク、ソイルマスク、ファイヤーマスク」
「3つ全てを搭載」
「魔物の属性と状況に応じて、自動で最適な魔法を選択します」
「完璧だ」
タイシは満足した。
「これで、魔物狩りの効率は最大化される」
---
その夜。
タイシは、部屋で休んでいた。
窓の外を見る。
星空が、綺麗だ。
*3つの窒息魔法*
*ウォーターマスク*
*ソイルマスク*
*ファイヤーマスク*
*全て、完成した*
タイシは、考えた。
*これで、どんな魔物でも*
*効率的に倒せる*
*素材を傷つけずに*
*収入が、さらに増える*
*だが*
タイシは、自分の手を見た。
*これらの魔法は、人間にも使える*
*窒息死*
*静かで、確実な殺人*
*私は、どんどん危険な存在になっている*
だが
タイシは、決意を変えなかった。
*必要なことだ*
*王国を守るために*
*新しい時代を作るために*
*時には、こうした力も必要になる*
タイシは、ステータスを確認した。
「ステータスオープン」
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**【ステータス】**
**名前:タイシ**
**年齢:15歳**
**種族:人間(転生者)**
**レベル:680**
**HP:20,400 / 20,400**
**MP:28,500 / 28,500**
**基本能力値**
- 筋力:490
- 敏捷:570
- 体力:525
- 知力:920
- 精神力:995
- 魔力:1,050
**主要スキル**
- 全属性魔法:Lv15
- 水魔法:Lv15
- 土魔法:Lv15
- 火魔法:Lv15
- テレポーテーション:Lv13
- 空間掌握:Lv6
- 時間魔法:Lv12
- 時間加速:Lv5
- ウォーターマスク:Lv5
- ソイルマスク:Lv6
- ファイヤーマスク:Lv7 ←(NEW!)
**戦力**
- 戦闘型ゴーレム:500体
- 人型戦闘ゴーレム:50体
- 飛行型ゴーレム:3体
- 魔導型ゴーレム:100体(開発中、3つの窒息魔法搭載)
---
「ファイヤーマスク、Lv7」
タイシは呟いた。
「3つの窒息魔法の中で、最強」
「これで、私の戦術の幅が、さらに広がった」
タイシは、窓の外を見た。
*明日、王都へ行く*
*改革を、さらに進める*
*そして*
タイシは、決意した。
*いずれは、王国を完全に変える*
*新しい時代を、作る*
*それが、私の使命だ*
夜が、静かに更けていった。
---
翌朝。
工房。
統括型ゴーレムが報告した。
「マスター、魔導型ゴーレム最終版が完成しました」
タイシは、新しいゴーレムを見た。
人型。
体内に、3つの魔法陣が刻まれている。
「これは?」
「ウォーターマスク、ソイルマスク、ファイヤーマスク」
「3つ全てを搭載しています」
統括型ゴーレムが説明した。
「魔物の属性を自動判別し」
「最適な窒息魔法を選択します」
「火属性魔物には、ソイルマスクかウォーターマスク」
「氷属性魔物には、ファイヤーマスク」
「水属性魔物には、ファイヤーマスク」
「無属性魔物には、ファイヤーマスク優先」
「完璧だ」
タイシは満足した。
「では、量産を開始してくれ」
「100体だ」
「イエス、マスター」
統括型ゴーレムが答えた。
「3日で、100体を完成させます」
タイシは、村を出た。
王都へ向かう。
*窒息魔法の開発は、完了した*
*次は*
*王国改革だ*
*本格的に、動き出す時が来た*
タイシは、テレポーテーションで王都へ移動した。
新しい戦いが、始まる。
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