第九章:土魔法の応用
翌朝。
タイシの村の研究棟。
タイシは、昨日開発したウォーターマスクについて考えていた。
「ウォーターマスクは、確かに有効だ」
「だが」
タイシは、問題点を考えた。
「水は、蒸発する」
「高温の環境では、効果が落ちる」
「火属性の魔物には、効きにくいかもしれない」
「それに」
タイシは、別の懸念を口にした。
「水は、流れる」
「相手が強力な風魔法を使えば」
「水球を吹き飛ばされる可能性がある」
統括型ゴーレムが質問した。
「マスター、では代替案をお考えですか?」
「ああ」
タイシは頷いた。
「土魔法だ」
「土で、同じことができないか?」
統括型ゴーレムが分析した。
「土魔法による窒息攻撃」
「理論上は可能です」
「土は水よりも重く、固定しやすい」
「蒸発もしない」
「風にも強い」
「有効だと考えられます」
「よし」
タイシは、魔法陣を描き始めた。
「では、開発する」
「ソイルマスク」
「土の仮面だ」
---
タイシは、魔力を集中させた。
土魔法。
Lv15の力。
*イメージする*
*柔らかい土の球体*
*顔を覆う形*
*密着して、剥がれない*
*でも、顔を傷つけない*
魔力が、形を成した。
タイシの前に、茶色の土の球体が浮かんだ。
直径30センチ。
柔らかく、粘土のような質感。
だが、しっかりと形を保っている。
「これだ」
タイシは、ダミー人形に向けて、土球を放った。
土球が、ダミーの顔面に飛んでいった。
そして
ぴたり、と張り付いた。
ダミーの顔全体を、土球が覆った。
鼻と口が、完全に土の中。
「完璧だ」
タイシは満足した。
「水よりも、しっかり張り付いている」
「これなら、簡単には剥がれない」
タイシは、土球に力を加えてみた。
風魔法で、吹き飛ばそうとする。
だが
土球は、びくともしない。
しっかりと、ダミーの顔に張り付いたまま。
「素晴らしい」
タイシは喜んだ。
「水よりも、安定している」
「これなら、どんな環境でも使える」
---
タイシは、実戦テストに移った。
森へ向かう。
魔物を探す。
最初のターゲットは
ゴブリン。
レベル30。
タイシは、ソイルマスクを発動した。
土球が出現し、ゴブリンの顔面に飛んでいった。
ぴたり、と張り付いた。
ゴブリンは、暴れた。
手で土球を剥がそうとする。
だが
土球は、びくともしない。
まるで接着剤で貼り付けられたように、顔に密着している。
ゴブリンは、呼吸ができない。
10秒。
20秒。
25秒。
ゴブリンが、倒れた。
窒息死。
タイシは、土球を消した。
ゴブリンの顔に、傷はない。
体にも、傷はない。
「ウォーターマスクよりも、速い」
タイシは驚いた。
「25秒で窒息死」
「水よりも、密閉性が高いからだ」
タイシは、次のターゲットに移った。
グレイウルフ。
レベル50。
ソイルマスクを発動。
土球が、グレイウルフの顔に張り付いた。
グレイウルフは、激しく暴れた。
地面に顔をこすりつける。
木に体をぶつける。
だが
土球は、剥がれない。
30秒。
グレイウルフが、倒れた。
窒息死。
「30秒か」
タイシは記録した。
「ウォーターマスクの半分の時間だ」
「効率が、2倍になった」
タイシは、さらに強力な魔物を探した。
オーガ。
レベル80。
体長3メートルの巨人。
タイシは、ソイルマスクを発動した。
土球が、オーガの顔に張り付いた。
オーガは、パニックになった。
必死に土球を剥がそうとする。
巨大な手で、顔を掴む。
力任せに、引っ張る。
だが
土球は、剥がれない。
それどころか
オーガが顔を掴めば掴むほど、土球は顔に深く食い込んでいった。
40秒。
50秒。
1分。
オーガが、膝をついた。
1分10秒。
オーガが、倒れた。
窒息死。
「1分10秒」
タイシは満足した。
「ウォーターマスクでは1分30秒だった」
「20秒も短縮された」
タイシは、オーガを解体した。
皮。
無傷。
肉。
新鮮。
骨。
完璧。
魔石。
最高品質。
「素晴らしい」
タイシは喜んだ。
「ソイルマスクも、完璧に機能する」
---
タイシは、さらに実験を続けた。
様々な魔物に、ソイルマスクを使った。
ファイアドレイク。
レベル120の火属性魔物。
体から炎を放つ。
タイシは、ソイルマスクを発動した。
土球が、ファイアドレイクの顔に張り付いた。
ファイアドレイクは、炎を放った。
全身から、火柱が上がる。
だが
土球は、燃えなかった。
土は、火に強い。
高温でも、形を保っている。
1分30秒後。
ファイアドレイクが、倒れた。
窒息死。
「完璧だ」
タイシは満足した。
「火属性の魔物にも、有効だ」
「ウォーターマスクでは、蒸発してしまうが」
「ソイルマスクなら、問題ない」
次に、タイシは風属性の魔物を試した。
ストームイーグル。
レベル100の風属性魔物。
巨大な鷲。
強力な風を操る。
タイシは、ソイルマスクを発動した。
土球が、ストームイーグルの顔に張り付いた。
ストームイーグルは、風魔法を放った。
竜巻のような風。
周囲の木が、なぎ倒される。
だが
土球は、剥がれなかった。
しっかりと、顔に張り付いたまま。
1分後。
ストームイーグルが、落下した。
窒息死。
「素晴らしい」
タイシは喜んだ。
「風にも、負けない」
「ソイルマスクは、ウォーターマスクよりも優れている」
---
タイシは、ソイルマスクの訓練を続けた。
複数同時発動。
1体。
2体。
3体。
5体。
10体。
同時に10体の魔物を、ソイルマスクで攻撃した。
10体の魔物が、次々と倒れた。
「いいぞ」
タイシは満足した。
その時
タイシの体が、光に包まれた。
**【スキル習得!】**
**ソイルマスク:Lv1**
**【スキルレベルアップ!】**
**ソイルマスク:Lv1 → Lv6**
**【効果】**
- 同時発動可能数:15体
- 発動速度:3倍
- 効果時間:20秒で窒息死
- 射程距離:150メートル
- 耐久性:高温・強風に耐性
タイシは、驚いた。
「いきなりLv6!」
「ウォーターマスクよりも、成長が速い!」
「そして、効果も上!」
「20秒で窒息死!」
「射程距離150メートル!」
「同時に15体まで!」
タイシは、新しい力を試した。
150メートル先の魔物に、ソイルマスクを発動した。
土球が、一瞬で魔物の顔に張り付いた。
20秒後。
魔物が、倒れた。
「完璧だ」
タイシは満足した。
「ソイルマスクは、ウォーターマスクを超えた」
---
タイシは、統括型ゴーレムに報告した。
「ソイルマスクの開発に成功した」
「ウォーターマスクよりも、優れている」
統括型ゴーレムが分析した。
「マスター、比較データです」
**【ウォーターマスク vs ソイルマスク】**
**ウォーターマスク:**
- 効果時間:30秒
- 射程距離:100メートル
- 同時発動:10体
- 弱点:高温・蒸発、風に弱い
**ソイルマスク:**
- 効果時間:20秒
- 射程距離:150メートル
- 同時発動:15体
- 耐性:高温・強風に強い
「ソイルマスクの方が、全ての面で優れています」
統括型ゴーレムが結論づけた。
「今後は、ソイルマスクを主力にすべきです」
タイシは頷いた。
「ああ」
「ただし」
タイシは続けた。
「ウォーターマスクにも、利点がある」
「水は、後始末が楽だ」
「蒸発すれば、痕跡が残らない」
「暗殺には、ウォーターマスクの方が向いている」
「土は、現場に残る可能性がある」
統括型ゴーレムが理解した。
「なるほど」
「用途によって、使い分けるべきですね」
「その通りだ」
タイシは頷いた。
「魔物狩りには、ソイルマスク」
「暗殺には、ウォーターマスク」
「状況に応じて、使い分ける」
---
タイシは、魔導型ゴーレムにソイルマスクも搭載することにした。
「統括型ゴーレム」
「魔導型ゴーレムに、ソイルマスクも搭載してくれ」
「ウォーターマスクと、両方使えるようにする」
「イエス、マスター」
統括型ゴーレムが答えた。
「改良版を開発します」
「ウォーターマスクとソイルマスク、両方を搭載」
「状況に応じて、自動で使い分けます」
「完璧だ」
タイシは満足した。
---
その夜。
タイシは、部屋で休んでいた。
窓の外を見る。
月が、明るく輝いている。
*ウォーターマスクとソイルマスク*
*2つの窒息魔法*
*どちらも、強力だ*
*魔物狩りが、さらに効率化される*
*収入が、さらに増える*
タイシは、考えた。
*だが*
*これらの魔法は、暗殺にも使える*
*音もなく、痕跡も少なく*
*確実に殺せる*
タイシは、自分の手を見た。
*私は、どんどん危険な力を手に入れている*
*殺人のための魔法*
*これは、正しいのか?*
だが
タイシは、決意した。
*正しいかどうかは、分からない*
*だが、必要だ*
*王国を守るために*
*新しい時代を作るために*
*時には、暗殺も必要になるかもしれない*
*その時のために*
*準備をしておく*
タイシは、ステータスを確認した。
「ステータスオープン」
---
**【ステータス】**
**名前:タイシ**
**年齢:15歳**
**種族:人間(転生者)**
**レベル:680**
**HP:20,400 / 20,400**
**MP:28,500 / 28,500**
**基本能力値**
- 筋力:490
- 敏捷:570
- 体力:525
- 知力:920
- 精神力:995
- 魔力:1,050
**主要スキル**
- 全属性魔法:Lv15
- 水魔法:Lv15
- 土魔法:Lv15
- テレポーテーション:Lv13
- 空間掌握:Lv6
- 時間魔法:Lv12
- 時間加速:Lv5
- ウォーターマスク:Lv5
- ソイルマスク:Lv6 ←(NEW!)
**戦力**
- 戦闘型ゴーレム:500体
- 人型戦闘ゴーレム:50体
- 飛行型ゴーレム:3体
- 魔導型ゴーレム:100体(開発中)
---
「ソイルマスク、Lv6」
タイシは呟いた。
「ウォーターマスクを超えた」
「これで、さらに強くなった」
タイシは、窓の外を見た。
*明日から、魔導型ゴーレムを大量生産する*
*魔物狩りを自動化する*
*そして*
タイシは、決意した。
*王国改革を、さらに進める*
*新しい時代は、もうすぐだ*
夜が、静かに更けていった。
---
翌朝。
工房。
統括型ゴーレムが報告した。
「マスター、魔導型ゴーレム改良版が完成しました」
タイシは、新しいゴーレムを見た。
人型。
体内に、2つの魔法陣が刻まれている。
「これは?」
「ウォーターマスクとソイルマスク、両方を搭載しています」
統括型ゴーレムが説明した。
「水属性魔物には、ソイルマスク」
「火属性魔物には、ソイルマスク」
「風属性魔物には、ソイルマスク」
「通常の魔物には、状況に応じて使い分けます」
「完璧だ」
タイシは満足した。
「では、量産を開始してくれ」
「100体だ」
「イエス、マスター」
統括型ゴーレムが答えた。
「1週間で、100体を完成させます」
タイシは、村を出た。
王都へ向かう。
*改革を進めなければ*
*決戦には勝った*
*だが、これで終わりではない*
*真の改革は、これからだ*
タイシは、テレポーテーションで王都へ移動した。
新しい一日が、始まる。
---
**第三部 第九章 了**
---




