第二十九章:暗殺者
3日後の深夜。
スミス商会の周辺は、静まり返っていた。
だが
屋根の上に、黒い影が潜んでいた。
暗殺者。
『影の刃』という組織に属する、プロの殺し屋。
実力は、A級相当。
過去に、20人以上の暗殺を成功させてきた。
*ターゲットは、15歳の少年*
*タイシという名前*
*スミス商会の2階に寝ている*
暗殺者は、窓から室内を確認した。
*護衛は…ゴーレムが5体*
*人型ゴーレムか*
*だが、所詮はゴーレム*
*夜間は、動きが鈍くなるはず*
暗殺者は、窓をゆっくりと開けた。
音を立てずに、室内に侵入する。
ベッドに、少年が寝ている姿が見えた。
*あれが、ターゲットか*
暗殺者は、短剣を抜いた。
毒が塗られた短剣。
一撃で、確実に殺せる。
暗殺者は、ゆっくりとベッドに近づいた。
あと5メートル。
4メートル。
3メートル。
そして
短剣を振り上げた瞬間。
「そこまでだ」
声が響いた。
暗殺者が振り返ると
5体の人型ゴーレムが、完全に起きている。
そして、ベッドの少年も、目を開けていた。
「待っていたよ」
タイシが微笑んだ。
「マルクス伯爵が送った、暗殺者さん」
暗殺者は、冷や汗をかいた。
*罠だ!*
*最初から、気づいていた!*
暗殺者は、即座に逃げようとした。
だが
人型ゴーレム・アルファが、一瞬で背後に回り込んだ。
「逃がさない」
アルファが、暗殺者の腕を掴んだ。
鉄のような握力。
暗殺者は、必死で抵抗した。
だが
ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロンも加わり、完全に拘束された。
「話してもらおう」
タイシが近づいた。
「誰が、君を雇った?」
暗殺者は黙っていた。
「話さないなら」
エドガーが部屋に入ってきた。
「拷問も辞さない」
「王国騎士団として、暗殺未遂は重罪だ」
暗殺者は、観念した。
「…マルクス伯爵だ」
「金貨10,000枚で、依頼された」
「ターゲットは、タイシ」
「証拠死に見せかけろ、と」
タイシは頷いた。
「記録ゴーレム、全て撮影したか?」
「イエス、マスター」
記録型ゴーレムが答えた。
「暗殺者の侵入から、自白まで、全て記録しました」
「よし」
タイシは満足そうに微笑んだ。
「これで、マルクス伯爵も終わりだ」
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翌朝。
中央広場。
再び、タイシとエドガーが演壇に立っていた。
民衆が、数千人集まっている。
「王都の皆さん!」
タイシが叫んだ。
「昨夜、私は暗殺されかけました!」
民衆がざわついた。
「何だと!?」
「タイシ様が!?」
「誰の仕業だ!?」
「犯人は」
エドガーが続けた。
「マルクス伯爵です!」
「伯爵が暗殺者を雇い、タイシ殿を殺そうとしました!」
民衆の怒りが爆発した。
「またか!」
「保守派貴族は、暗殺まで!?」
「許せない!」
タイシは、記録映像を投影した。
暗殺者が侵入する様子。
拘束される様子。
そして、自白する様子。
「金貨10,000枚で、マルクス伯爵に依頼された」
暗殺者の声が、広場に響いた。
民衆は、完全に保守派貴族を見放した。
「もう、許さない!」
「保守派貴族を、全員追放しろ!」
「王国から、腐敗を一掃しろ!」
タイシは、拳を上げた。
「皆さん、共に戦いましょう!」
「腐敗した貴族を、この王国から追い出しましょう!」
「新しい王国を、作りましょう!」
民衆が、一斉に叫んだ。
「タイシ様!」
「『自由の翼』!」
「新しい王国を!」
王国は、大きく変わろうとしていた。
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