第二十八章:影の動き
同じ頃。
王都の裏通り。
古びた酒場の地下室。
保守派貴族たちが、秘密の会合を開いていた。
マルクス伯爵を中心に、約10名。
「諸君」
マルクス伯爵が重い声で言った。
「改革委員会で、税制改革が可決された」
「我々貴族への税が、導入される」
「これは、大きな打撃だ」
フェルディナンド子爵が言った。
「しかも、次は行政改革だそうだ」
「平民に、役職を開放するなど…」
「我々の権力基盤が、崩れていく」
別の貴族が怒りを露わにした。
「あの少年め!」
「タイシとかいう、平民の子供が!」
「王国を滅茶苦茶にしている!」
マルクス伯爵が制止した。
「落ち着け」
「感情的になっても、何も変わらない」
「今、我々に必要なのは、冷静な戦略だ」
「戦略…ですか?」
「そうだ」
マルクス伯爵の目が、冷たく光った。
「タイシを、直接排除する」
全員が、息を呑んだ。
「排除…まさか…」
「そうだ」
マルクス伯爵は断言した。
「暗殺だ」
「タイシさえいなくなれば、『自由の翼』は崩壊する」
「彼が、全ての中心だ」
「彼を失えば、改革運動は終わる」
フェルディナンド子爵が慎重に尋ねた。
「ですが…暗殺がバレれば、我々も終わりです」
「バレないようにすればいい」
マルクス伯爵が説明した。
「プロの暗殺者を雇う」
「痕跡を残さず、確実に仕留める」
「そして、事故か、盗賊の仕業に見せかける」
貴族たちは、顔を見合わせた。
*暗殺…*
*だが、他に方法はない*
*このままでは、我々の全てが失われる*
「賛成だ」
「やむを得ない」
「タイシを消すしかない」
マルクス伯爵は頷いた。
「では、決まりだ」
「私が、暗殺者を手配する」
「1週間以内に、必ず実行する」
保守派貴族たちは、最悪の決断を下した。
だが
彼らは知らなかった。
この会話も、タイシの偵察型ゴーレムに記録されていることを。
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その夜。
スミス商会の事務所。
タイシは、偵察型ゴーレムからの報告を受けていた。
「暗殺計画…」
タイシは冷静に呟いた。
「予想通りだ」
「追い詰められた保守派は、必ず暴力に訴える」
マイケルが心配そうに言った。
「タイシ様、危険です!」
「護衛を増やしましょう!」
「大丈夫です」
タイシは微笑んだ。
「私には、ゴーレムがいます」
「24時間、私を守ってくれます」
「それに」
タイシの目が鋭くなった。
「この暗殺計画を、逆に利用します」
「利用?」
エドガーが尋ねた。
「どういうことですか?」
「暗殺者が襲ってきたら、生け捕りにします」
タイシが説明した。
「そして、誰が雇ったのか、自白させます」
「マルクス伯爵の関与を証明します」
「それを、公表すれば」
タイシは続けた。
「保守派貴族の悪行が、また一つ暴露されます」
「民衆の怒りは、さらに高まります」
「そして、保守派は完全に力を失います」
ダリウスが言った。
「ですが、タイシ様」
「危険すぎます」
「もし、失敗したら…」
「失敗しません」
タイシは自信を持って答えた。
「私のゴーレムは、A級の戦士以上の力があります」
「どんな暗殺者が来ても、対応できます」
「それに」
タイシは通信魔石を取り出した。
「村から、さらにゴーレムを呼びます」
「最強の護衛部隊を」
タイシの決意は、揺るがなかった。
保守派貴族との最終決戦が、近づいていた。
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