第二十七章:改革委員会
1週間後。
王宮の大会議室。
第一回改革委員会が開かれていた。
参加者は約50名。
国王アルバート三世を議長に、宰相、改革派貴族、『自由の翼』のメンバー、そして一部の保守派貴族も参加していた。
「諸君」
国王が口を開いた。
「本日より、王国改革委員会を正式に発足する」
「目的は、王国の体制を改革し」
「全ての民のための国を作ることだ」
会議室に、緊張感が走った。
「まず、議題を整理しよう」
宰相が立ち上がった。
「第一の議題:貴族の特権の見直し」
「第二の議題:平民の権利保護」
「第三の議題:税制改革」
「第四の議題:行政の透明化」
保守派貴族の一人が立ち上がった。
「待ってください!」
「貴族の特権を見直すとは、どういうことですか!?」
「我々貴族は、代々王国に仕えてきました!」
「その功績を無視するのですか!?」
タイシが冷静に答えた。
「無視するわけではありません」
「ただ、過剰な特権を是正するだけです」
「例えば」
タイシは資料を示した。
「現在、貴族は税を免除されています」
「しかし、平民は収入の30%を税として納めています」
「これは、明らかに不公平です」
別の保守派貴族が反論した。
「だが、貴族には領地の管理という責任がある!」
「税を免除されるのは当然だ!」
エドガーが立ち上がった。
「では、お聞きしますが」
「領地の管理とは、具体的に何をしているのですか?」
「多くの貴族は、領地を訪れることすらしていない」
「管理は全て執事に任せ、自分たちは王都で遊び暮らしている」
保守派貴族たちが、言葉に詰まった。
マイケルが続けた。
「私は商人として、各地を回ってきました」
「そこで見たのは、貧しい農民たちです」
「彼らは必死で働いても、税に苦しんでいます」
「一方、貴族たちは豪華な生活をしています」
「これが、公平な国と言えるでしょうか?」
国王が頷いた。
「その通りだ」
「貴族の特権は、見直す必要がある」
「ただし」
国王は続けた。
「急激な変化は、混乱を招く」
「段階的に、慎重に改革を進める」
タイシが提案した。
「では、まず第一段階として」
「貴族への税制優遇を、一部見直すことを提案します」
「完全に税を取るのではなく」
「収入に応じて、適正な税を課す」
「そして、その税収を、民の福祉に使う」
宰相が言った。
「具体的には?」
「医療と教育です」
タイシが答えた。
「現在、平民は医療を受けることが困難です」
「また、教育も受けられない子供が多い」
「税収を使って、無料の診療所と学校を作ります」
改革派貴族の一人が賛成した。
「素晴らしい案だ」
「私も賛成します」
国王が宣言した。
「では、採決を取ろう」
「貴族への税制改革と、医療・教育への投資」
「賛成の者は?」
改革派貴族、『自由の翼』のメンバー、そして一部の保守派貴族が手を上げた。
50名中、35名が賛成。
「可決だ」
国王が告げた。
「貴族への税制改革を、来月から実施する」
保守派貴族たちは、悔しそうな顔をしていた。
だが、もう止められない。
改革の波は、確実に王国を変えつつあった。
---
会議の後。
タイシは、マイケルたちと共に王宮の庭を歩いていた。
「タイシ様、素晴らしかったです」
マイケルが言った。
「まさか、初回の会議で税制改革が可決されるとは」
「これは、大きな一歩ですね」
タイシは頷いた。
「でも、これはまだ序章です」
「本当の改革は、これからです」
エドガーが尋ねた。
「次は、何を?」
「行政の透明化です」
タイシが答えた。
「現在、王国の行政は、貴族たちが独占しています」
「財務省も、内務省も、全て貴族の縁故で運営されている」
「これを、実力主義に変えます」
「平民でも、能力があれば高い地位につけるようにします」
ダリウスが言った。
「それは…相当な抵抗があるでしょうね」
「貴族たちは、絶対に譲らないはずです」
「だからこそ」
タイシは決意を込めて言った。
「民の力が必要なんです」
「次の委員会では、平民の代表も参加させます」
「各地から、民の声を集めます」
「そして、圧倒的な民意で、改革を推し進めます」
全員が、タイシの決意に心を動かされた。
「タイシ様に従います」
「共に、新しい王国を作りましょう」
夕日が、王宮の庭を照らしていた。
改革の戦いは、まだ始まったばかりだ。
---




