第二十四章:王国の動揺
王宮。
国王の執務室。
国王アルバート三世は、重苦しい表情で報告を聞いていた。
「陛下、状況は深刻です」
宰相が報告した。
「民衆が、王宮の前に集結しています」
「数は、1万人を超えています」
「彼らは、腐敗した貴族の追放を求めています」
国王は、深くため息をついた。
「デュランド公爵の件は、本当なのか?」
「はい」
宰相は頷いた。
「証拠は明白です」
「ヴィクター・グレイソンへの賄賂」
「スミス商会への証拠捏造」
「全てが記録されています」
「そして」
宰相は続けた。
「保守派貴族たちも、この陰謀に関与していました」
「マルクス伯爵、フェルディナンド子爵」
「その他、約20名の貴族が」
国王は、頭を抱えた。
「なんということだ…」
「貴族たちが、ここまで腐敗していたとは…」
「陛下」
宰相が進言した。
「この機会に、王国を改革すべきです」
「貴族の特権を見直し」
「平民の権利を保護する」
「そうしなければ、民衆の怒りは収まりません」
国王は、少し考えてから頷いた。
「分かった」
「緊急の勅令を発する」
「デュランド公爵を、全ての地位から罷免する」
「関与した貴族たちも、調査の上、処罰する」
「そして」
国王は立ち上がった。
「改革委員会を設置する」
「王国の法制度を見直し、民のための国を作る」
宰相は深々と頭を下げた。
「賢明なご判断です、陛下」
国王は窓の外を見た。
民衆の行進。
怒りの声。
変革を求める叫び。
「時代が、変わろうとしている」
国王は呟いた。
「私も、変わらなければならない」
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その夜。
スミス商会の事務所。
『自由の翼』の最初の会合が開かれていた。
タイシを中心に、マイケル、エドガー、ダリウスたち、ブライアンたち。
約20名が集まっていた。
「皆さん」
タイシが口を開いた。
「今日、私たちは大きな一歩を踏み出しました」
「デュランド公爵を失脚させ」
「王国の腐敗を暴露し」
「民衆を目覚めさせました」
全員が頷いた。
「ですが」
タイシは続けた。
「これは、始まりに過ぎません」
「保守派貴族は、まだ多く残っています」
「彼らは、必ず反撃してきます」
「私たちは、準備しなければなりません」
エドガーが尋ねた。
「タイシ殿、具体的にどう行動すべきですか?」
「まず、仲間を増やします」
タイシが説明した。
「王国騎士団の中で、正義感のある者」
「財務省や行政府の中で、改革を望む者」
「商人や冒険者の中で、王国を変えたいと思う者」
「全てを集めます」
マイケルが言った。
「私の商人ネットワークを使います」
「王都中の商人たちに声をかけます」
「お願いします」
タイシは頷いた。
「エドガー分隊長は?」
「騎士団の中で、信頼できる者を集めます」
エドガーが答えた。
「私の部下20名は、全員協力してくれるはずです」
「それに、他の分隊にも、志を同じくする者がいます」
「素晴らしい」
タイシは満足そうに微笑んだ。
「ダリウスさんたちは?」
「元役人としての人脈を使います」
ダリウスが答えた。
「財務省や行政府の中で、不満を持っている者は多いです」
「彼らを、味方に引き入れます」
「では、それぞれが動いてください」
タイシが指示した。
「1週間後、再びここで会合を開きます」
「その時までに、できるだけ多くの仲間を集めてください」
「承知しました!」
全員が立ち上がった。
『自由の翼』の活動が、本格的に始まった。
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