第二十二章:真実の公表
翌朝。
王都の中央広場。
朝から、大勢の民衆が集まっていた。
「何だ? 何があるんだ?」
「騎士団が、何か発表するらしい」
「スミス商会の件だって」
人々がざわめいている。
中央広場の演壇に、一人の騎士が立った。
エドガー・フォン・ブラウン。
王国騎士団第三分隊長。
「王都の皆さん!」
エドガーが大声で叫んだ。
民衆が静まり返る。
「私は、王国騎士団第三分隊長、エドガー・フォン・ブラウンです」
「今日、皆さんに真実をお伝えします」
「王国の腐敗について」
民衆がざわついた。
「王国の腐敗?」
「何のことだ?」
エドガーは、大きな水晶玉を取り出した。
記録型ゴーレムが撮影した映像が保存されている水晶玉。
「まず、これをご覧ください」
エドガーが水晶玉に魔力を込めた。
空中に、巨大な映像が投影された。
暗闇の倉庫。
深夜。
ヴィクター・グレイソンと部下たちが、禁制の魔導書を隠す姿。
「これを、ここに隠す」
「明日、騎士団を連れてここを捜査する」
「スミス商会は、終わりだ」
ヴィクターの声が、広場全体に響いた。
民衆は、息を呑んだ。
「あれは…ヴィクター・グレイソン査察官!?」
「証拠を捏造している!?」
「信じられない…」
エドガーは続けた。
「これは、数日前の映像です」
「ヴィクター・グレイソンは、スミス商会を陥れるため」
「禁制の魔導書を密かに倉庫に隠しました」
「そして、翌日、それを発見したと偽って」
「スミス商会を逮捕しようとしました」
民衆の怒りが爆発した。
「なんてことだ!」
「査察官が、証拠捏造だと!?」
「許せない!」
エドガーは、さらに別の証拠を見せた。
「そして、これが決定的な証拠です」
別の映像が投影された。
デュランド公爵邸の執務室。
保守派貴族たちの会議。
「証拠がないなら、証拠を作ればいい」
「禁制の魔導書を密かにスミス商会の倉庫に置く」
「そして、それを発見したことにする」
デュランド公爵の声。
マルクス伯爵の声。
保守派貴族たちが、証拠捏造を計画する様子。
全てが、鮮明に記録されていた。
民衆は、衝撃を受けた。
「デュランド公爵も!?」
「貴族たちが、平民を陥れようと!?」
「これが、王国の実態か…」
エドガーは、さらに続けた。
「それだけではありません」
「ヴィクター・グレイソンは、デュランド公爵から」
「長年にわたって、賄賂を受け取っていました」
「総額、金貨50万枚以上」
エドガーは、賄賂の記録を示した。
銀行口座の明細。
デュランド公爵からの定期的な送金。
全てが、記録されていた。
民衆の怒りは、最高潮に達した。
「賄賂!?」
「50万枚だと!?」
「貴族も、役人も、全員腐っている!」
「平民を搾取して、自分たちだけが肥え太っている!」
「許せない!」
群衆が、怒りの声を上げた。
エドガーは、拳を握った。
「皆さん!」
「私は、騎士として言います!」
「このような不正は、絶対に許されません!」
「王国は、民のためにあるべきです!」
「貴族のためではありません!」
民衆が、エドガーに歓声を送った。
「その通りだ!」
「エドガー分隊長、よく言ってくれた!」
「俺たちも、声を上げよう!」
広場は、民衆の怒りと決意で満ちていた。
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同じ頃。
デュランド公爵邸。
公爵は、窓から広場の様子を見ていた。
民衆の怒号。
エドガーの演説。
全てが、公爵には聞こえていた。
「終わった…」
公爵は、絶望した。
「全てが、暴露された…」
公爵の側近が、慌てて入ってきた。
「閣下! 王宮から使者が!」
「国王陛下が、閣下の出頭を命じています!」
「不正の疑いで、調査が入ります!」
公爵は、椅子に崩れ落ちた。
*終わりだ…*
*俺の地位も、権力も、全て…*
保守派貴族の中心人物、デュランド公爵。
その権力は、一夜にして崩壊した。
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