第二十一章:援軍到着
夜。
午後11時。
スミス商会の裏口に、次々と人影が現れた。
人型戦闘ゴーレムたち。
20体の追加部隊。
そして
巨大なゴーレムたちも姿を現した。
戦闘型ゴーレム。
高さ3メートル。
重装甲。
強力な戦闘能力。
100体。
「すごい…」
クリスが呟いた。
「こんなに大量のゴーレムが…」
ゴーレムたちは、整然と店の周囲に配置された。
まるで、軍隊のような統制された動き。
そして
午前1時。
一台のゴーレムトラックが、店の前に到着した。
荷台から降りてきたのは
タイシだった。
15歳の少年。
だが、その目には、少年とは思えない鋭さと決意が宿っていた。
「タイシ様!」
マイケルが駆け寄った。
「お疲れ様です」
「マイケルさん」
タイシは微笑んだ。
「準備はできていますか?」
「はい」
マイケルは頷いた。
「全員、戦う覚悟です」
「ありがとう」
タイシは、店の中を見回した。
マーガレット、レイチェル、ブライアンたち、ダリウスたち、見習いたち。
全員が、緊張した面持ちで立っていた。
「みなさん」
タイシが声をかけた。
「今夜、私たちは戦います」
「デュランド公爵の私兵と」
「ですが」
タイシは続けた。
「私たちは、正義のために戦います」
「腐敗した貴族から、平民を守るために」
「民衆のために」
タイシの言葉に、全員が心を動かされた。
「タイシ様」
ブライアンが前に出た。
「俺たちは、あなたを信じています」
「どんな戦いでも、ついていきます」
他の全員も頷いた。
「私たちも!」
「タイシ様のために!」
タイシは、感謝の気持ちでいっぱいになった。
「ありがとう、みなさん」
「では」
タイシは時計を見た。
「午前2時まで、あと30分」
「配置につきましょう」
全員が、それぞれの持ち場へ向かった。
戦闘型ゴーレムは、店の周囲を囲んだ。
人型戦闘ゴーレムは、屋根の上に。
ブライアンたちは、店の前に。
ダリウスたちは、裏口に。
そして
タイシは、店の中央に立った。
「さあ、来い」
タイシは呟いた。
「デュランド公爵」
「お前たちの時代は、今夜で終わりだ」
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午前2時。
静かな王都の夜。
だが
その静けさを破るように、重い足音が響いてきた。
武装した男たちの集団。
約200人。
全員、黒い鎧を着て、剣を持っている。
デュランド公爵の私兵たちだ。
先頭に立つのは、公爵の側近騎士団長ガルバス。
50代の男。A級の実力を持つ、歴戦の戦士。
「スミス商会を包囲しろ!」
ガルバスが命令した。
私兵たちが、店を取り囲む。
そして
ガルバスが前に出た。
「スミス商会のマイケル・スミス!」
「出てこい!」
店の扉が開いた。
マイケルが、ゆっくりと出てきた。
「何の御用ですか?」
「デュランド公爵の命令だ」
ガルバスが言った。
「お前が持っている証拠の映像を、引き渡せ」
「拒否すれば、力ずくで奪い取る」
マイケルは、冷静に答えた。
「その映像は、正当な証拠です」
「引き渡すことはできません」
「ならば」
ガルバスは剣を抜いた。
「実力行使だ!」
「全員、突入しろ!」
私兵たちが、一斉に店へ突撃しようとした。
その時
「待て」
低い声が響いた。
タイシが、店の前に姿を現した。
「あなた方の相手は、私だ」
ガルバスは、タイシを見て笑った。
「何だ? ガキか?」
「お前が、タイシとかいう商人か?」
「そうだ」
タイシは冷静に答えた。
「私が、タイシだ」
「スミス商会の協力者だ」
「ふん」
ガルバスは軽蔑した目でタイシを見た。
「ガキ一人で、俺たち200人を止められると思っているのか?」
「思っている」
タイシは手を上げた。
その瞬間
店の周囲から、次々と巨大なゴーレムが現れた。
戦闘型ゴーレム、100体。
人型戦闘ゴーレム、25体。
圧倒的な軍勢。
私兵たちは、驚愕した。
「な、何だこれは!?」
「ゴーレムの軍隊だと!?」
ガルバスも、顔色を変えた。
「こ、こんな数のゴーレムを…」
「驚きましたか?」
タイシは冷たく微笑んだ。
「これが、私の力です」
「そして」
タイシは続けた。
「あなた方が、今夜ここで行おうとしている不正を」
「全て記録しています」
タイシは、周囲を指差した。
屋根の上、街路樹の陰、あらゆる場所に
記録型ゴーレムが設置されていた。
「映像と音声、全て記録されています」
「明日には、王都中に公表されます」
「デュランド公爵の私兵が、平民商人を襲撃したという事実が」
ガルバスは、絶望した。
*終わった…*
*公爵も、俺たちも、全て終わりだ*
「撤退するなら、今のうちです」
タイシが言った。
「これ以上、罪を重ねないでください」
ガルバスは、歯を食いしばった。
だが
勝てないことは明白だった。
「…撤退する」
ガルバスは、悔しそうに言った。
「全員、退け!」
私兵たちは、慌てて退散していった。
戦いは、戦う前に終わった。
タイシの圧倒的な力の前に。
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**第二部 第二十一章 了**
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