第十五章:接触
第十五章:接触
翌日の夜。
スミス商会の裏口。
エドガーが、一人で現れた。
鎧は脱ぎ、平服姿だ。
*これは、騎士団の任務ではない*
*個人的な調査だ*
エドガーは、裏口をノックした。
しばらくして
扉が開き、アルファが現れた。
「どなたですか?」
「エドガー・フォン・ブラウンだ」
エドガーが名乗った。
「騎士団の分隊長の?」
アルファは警戒した。
「安心してくれ」
エドガーは両手を上げた。
「武器は持っていない」
「マイケル・スミス氏に、話がしたい」
「何の用ですか?」
「真実を知りたい」
エドガーは真剣な目で言った。
「この任務の真実を」
アルファは少し考えてから、頷いた。
「お入りください」
エドガーは店の中へ案内された。
事務所に、マイケルが待っていた。
「エドガー分隊長」
マイケルが言った。
「夜分に申し訳ありません」
エドガーは頭を下げた。
「話を聞きたい」
「なぜ、デュランド公爵とヴィクターは、あなた方をここまで警戒するのか」
マイケルは、エドガーの目を見た。
*この騎士…本気だ*
*真実を知りたがっている*
「座ってください」
マイケルが椅子を勧めた。
エドガーが座ると、マイケルも向かいに座った。
「率直に言います」
マイケルが口を開いた。
「私たちは、何も悪いことはしていません」
「ただ、ある人物から商品を仕入れて、売っているだけです」
「その人物とは?」
「それは、言えません」
マイケルは首を振った。
「商売の秘密です」
「だが」
マイケルは続けた。
「ヴィクターとデュランド公爵は、その技術を奪おうとしています」
「ゴーレムトラックという、革新的な輸送手段の技術を」
「ゴーレムトラック…」
エドガーは呟いた。
「それが、噂に聞く自動運転のゴーレムか」
「はい」
マイケルは頷いた。
「その技術は、私たちの取引相手が開発したものです」
「だが、公爵たちはそれを横取りしようとしている」
「密輸の疑いをでっち上げて、私たちを追い詰めて」
「技術を奪おうとしている」
エドガーは拳を握った。
*やはり…*
*公爵たちは、不正を働いている*
「証拠はあるのか?」
エドガーが尋ねた。
マイケルは少し考えてから
ダリウスが持ってきた書類を見せた。
「これです」
エドガーが書類を見た。
ヴィクター・グレイソンの秘密の銀行口座。
デュランド公爵からの賄賂の記録。
総額、金貨50万枚。
「これは…!」
エドガーは息を呑んだ。
「賄賂の証拠だ!」
「はい」
マイケルは頷いた。
「ヴィクターは、表向きは清廉潔白な役人ですが」
「実際は、公爵の犬です」
「金で動く、腐った役人です」
エドガーは、怒りで震えていた。
「許せない…」
「こんな奴が、王国の役人だと…」
「エドガー分隊長」
マイケルが言った。
「あなたは、正義の騎士だと思います」
「だから、お願いがあります」
「何だ?」
「この証拠を、適切なタイミングで公表してください」
マイケルは頼んだ。
「私たちが公表しても、信用されないかもしれません」
「ですが、あなたのような信頼される騎士が公表すれば」
「民衆も信じてくれるはずです」
エドガーは、書類を見つめた。
*これは…俺の使命だ*
*騎士として、正義を守る*
*腐敗した貴族を告発する*
「分かった」
エドガーは頷いた。
「この証拠を預かろう」
「そして、必ず公表する」
「ありがとうございます」
マイケルは深々と頭を下げた。
エドガーは立ち上がった。
「マイケル・スミス」
「あなたは、良い商人だ」
「これからも、正しく生きてくれ」
「はい」
エドガーは裏口から出ていった。
手には、王国を揺るがす証拠。
*これで、ヴィクターとデュランド公爵を追い詰められる*
*だが、タイミングが重要だ*
*焦ってはいけない*
エドガーは、慎重に行動することを決めた。
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**第二部 第十五章 了**
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