第二章:転生の記憶
少年は村人に捨てられた。
目を覚ますと、誰もいなかった。
村人たちは夜のうちに荷物をまとめ、タイシを置いて村を出て行ったのだ。口減らし。十歳の孤児を連れて行く余裕は、誰にもなかった。
廃墟となった村。崩れかけた家々。荒れた畑。そして、何も残されていない食料庫。
タイシはただ、呆然と立ち尽くしていた。
空腹。孤独。絶望。
*ああ、このまま死ぬのか*
そう思った瞬間だった。
**記憶が、溢れ出した。**
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東京。狭いアパート。コンビニ弁当。スマホの画面。
自分はいや、*俺*は日本人だった。
田中健太、三十歳。大学は三流、就職も非正規。特に夢もなく、特に希望もなく、ただ漠然と生きていた男。
ある日、過労で倒れた。そして
*死んだのだ。*
「そうか…俺は、死んで、この世界に転生したのか…」
タイシの口から、日本語が漏れた。
前世では剣と魔法のファンタジー世界に憧れていた。異世界転生の小説やアニメを山ほど見た。
しかし現実はどうだ。
命があまりに軽い。過酷で苛烈な世界。生きることが大変に厳しい。
「せっかく転生してきたのに…何かいいことはないのか?」
タイシは天を仰いだ。
*魔法。そうだ、魔法に憧れていたんだ。*
この世界には魔法があるはずだ。ならば、自分にも使えるかもしれない。
タイシは目を閉じた。前世で読んだ小説の知識を思い出す。魔法をイメージする。力を呼び起こす。
「魔法…魔法…」
そして
**パチン。**
目の前の空間が、光った。
光の文字盤が、宙に浮かんでいた。
```
【ステータスボード】
レベル:1
名前:ななし
年齢:10歳
性別:男
```
メッセージウィンドウが開いた。
『名前を付けてください』
自分で自分の名前をつけるのはゲームみたいだと思った。
せっかく転生したのだから、偉大なる男、太い男という意味で、**タイシ**と付けてみた。
『タイシで設定しました』
メッセージウィンドウが表示した。
```
HP:20
MP:30
STR/Strength 力の強さ:10
DEX/Dexterity 器用さ:10
VIT/Vitality 丈夫さ:10
AGI/Agility 素早さ:10
INT/Intelligence 賢さ:20
MND/Mind 精神力:25
LUK/Lucky 運:20
CRI/Critical クリティカル:20
CHA/Charisma カリスマ:100
スキル:魔力探知、魔力操作、土魔法1、鑑定、アイテムボックス
```




