第十八章:出発
翌朝、スミス商会の一行は出発の準備を整えていた。
タイシは門まで見送りに来ていた。
「タイシ様、本当にありがとうございました」
マイケルが深々と頭を下げた。
「命を救っていただき、素晴らしい品々を見せていただき、そして今後の取引の約束まで」
「こちらこそ、良い取引相手に出会えました」
タイシは微笑んだ。
「3日後、またお待ちしています」
「必ず参ります」
マイケルが答えた。
ブライアンが前に出た。
「タイシさん、一つ忠告がある」
「何でしょう?」
「あんたの力は、間違いなく世界を変える」
ブライアンは真剣な表情で言った。
「だが、その力を知った者の中には、必ず悪用しようとする輩が現れる」
「気をつけてくれ」
「ありがとうございます。気をつけます」
タイシは頷いた。
ガイも付け加えた。
「俺たちは定期的にこの辺りを巡回する」
「何かあったら、連絡してくれ」
「頼りにしています」
ヘレンとエイミーも挨拶をした。
「タイシ様、また会いましょう」
「美味しいドラゴンステーキ、忘れられません」
マーガレットとレイチェルも優雅に礼をした。
「素晴らしいおもてなし、ありがとうございました」
「また参ります」
見習いの3人クリス、ヒューズ、アマンダも深々と頭を下げた。
馬車が動き出す。
開閉橋が下ろされ、商人一行は村を後にした。
タイシは、彼らの背中が見えなくなるまで見送った。
「新しい時代の始まりか…」
タイシは呟いた。
そして、村へと戻っていった。
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馬車の中、マイケルは考えていた。
「あの少年は…本物だ」
マーガレットが夫に言った。
「あなた、本気でタイシ様に賭けるおつもりなの?」
「ああ」
マイケルは頷いた。
「この腐った王国は、もう長くない」
「税は増え続け、民は苦しみ、貴族だけが肥え太る」
「いずれ、崩壊する」
「だが」
マイケルは遠くを見た。
「タイシ様がいれば…新しい国を作れるかもしれない」
「民を守る、本当の国を」
レイチェルも同意した。
「私も、タイシ様に希望を感じました」
「あの目…確固たる意志がありました」
ブライアンが言った。
「俺たち冒険者も、いずれタイシさんに協力することになるだろう」
「あの力があれば…魔物の脅威から民を守れる」
「王国にはできないことを、あの少年ならできる」
ガイが頷いた。
「しかも、あの少年はまだ15歳だ」
「これから、もっと強くなる」
「もっと準備を整える」
「そして」
ヘレンが続けた。
「その時が来たら…王国は変わる」
エイミーが小さな声で言った。
「私、タイシ様が作る新しい国を見てみたいです」
「民を大切にする、優しい国を…」
マイケルは微笑んだ。
「その日は、必ず来る」
「俺たちは、その日のために準備をしよう」
馬車は、王都へと向かって進んでいった。
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**第一部 完**




