第十六章:食肉倉庫
巨大な石造りの倉庫。扉を開けると、冷気が流れ出てきた。
「冷たい…」
エイミーが驚いた。
「氷魔法で倉庫全体を冷却しています」
タイシが説明した。
「肉を長期保存するためです」
中に入ると
「!!!」
一同は絶句した。
壁一面に、巨大な肉の塊が吊るされていた。
「これは…全部、魔物の肉?」
ブライアンが呆然と尋ねた。
「はい。アースドラゴン、ファングリザード、オーク、ゴブリン、ダイアウルフ、アルミラージ…様々な魔物の肉です」
タイシが説明した。
マイケルが近くの肉を見た。札がついている。
「アースドラゴン肉、1頭分、約8トン」
「ファングリザード肉、1頭分、約3トン」
「ダイアウルフ肉、1頭分、約500キロ」
「これが…何十頭分も…」
レイチェルが震える声で言った。
「アースドラゴンだけで…30頭分以上ある…」
マーガレットが計算する。
「アースドラゴンの肉は、王都で1キロ金貨10枚です」
「8トンなら…金貨8万枚…」
「それが30頭分なら…金貨240万枚!?」
一同は再び絶句した。
「それに、ファングリザードの肉も高級品です」
レイチェルが付け加えた。
「1キロ金貨5枚。3トンで金貨1万5千枚」
「こちらも50頭分以上ある…金貨75万枚以上…」
「ダイアウルフの肉も、1キロ金貨2枚の高級品」
マーガレットが続けた。
「オーク肉は1キロ銀貨5枚、ゴブリン肉は1キロ銀貨2枚、アルミラージ肉は1キロ銀貨8枚」
「これら全て合わせたら…」
マイケルが震える声で言った。
「金貨500万枚は下らない…」
「小国の年間税収に匹敵する…」
ブライアンが呟いた。
「しかも、これが全部食える肉なんだぜ…」
ガイが舌を巻いた。
「俺たち冒険者は、魔物を倒しても肉まで持ち帰れないことが多い」
「重いし、腐るし、運搬が大変だから」
「だが、タイシさんはアイテムボックスがある…」
ヘレンが気づいた。
「重量制限なく、保存もできる…」
「だから、全ての肉を持ち帰れるんですね」
エイミーが感心した。
タイシは頷いた。
「5年間、ほぼ毎日狩りをしていましたから」
「この量になりました」
「毎日…5年間…」
マイケルは呆然とした。
*この少年は…本当に人間なのか?*
*いや、人間だからこそ、ここまでやれたのか*
「タイシ様」
マイケルが尋ねた。
「この肉も…売っていただけますか?」
「はい。私一人では食べきれませんから」
タイシは微笑んだ。
「ただし、アースドラゴンの肉やファングリザードの肉は高級品です」
「大量に市場に出すと、価格が暴落します」
「少しずつ、計画的に売ってください」
「承知しました」
マイケルは深く頷いた。
「それに」
タイシが続けた。
「肉以外の部位も保管しています」
「角、牙、爪、皮、骨、内臓…全て素材として使えます」
「それらも倉庫に大量にあります」
レイチェルがメモを取る手を止めた。
「もう…計算が追いつきません…」
「この村全体の資産価値…金貨で換算したら…」
「数千万枚…いえ、億単位かもしれません…」
一同は、完全に言葉を失っていた。
*この少年は…たった一人で…*
*5年間で…*




