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無能力の王女の専属騎士は最強の鬼人  作者: もぶだんご


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自信をもって(ルビナ視点)

「ルビナ様、お聞きしたいことがあります。」


彼の家に向かう途中、少し後ろについてきているシャーレは、どこか気にするように聞いてきた。


「どうしたの?」


私が柔らかい声で聴いたからか、少しあった緊張のようなものがなくなり、いつも通りのシャーレに戻った。


「ルビナ様はなぜ彼を専属騎士にしたのですか」


それは当たり前の質問だったが、これには彼も気になった様で、少し開いていた距離が近くなっている。


「シャーレは初代パラシアス王の専属騎士について知っているかしら?」


その言葉に二人は顔を見合わせている。

きっと知らないんだろう。


それもそのはず、王国の中にある王族のみが見れる書物にしか書いていない事だったから。


「ルビナ様....申し訳ありませんが初代パラシアス王の専属騎士はいなかったはずでは」


「そうね、でもそれは表向きだけ。王族だけが見られる書物には専属騎士がいたとされているの」


その言葉にシャーレは驚いている。


それもそうだろう、本来知るはずのなかった情報なのだから。


「初代パラシアス王の初陣は、敵との戦力差を覆し劇的な勝利を収めたとされているけれどそれも、少し間違いがあるの」


その言葉に二人が息をのむのが分かった。

その続きを言えば、この二人はどんな反応をしてくれるか楽しみでもある。


「本当の歴史は、初代パラシアス王は敗北し敵兵に追われながら森に逃げ込んだ。そして名もなき森で追い詰められたとき、敵兵が倒れていき、その倒した者を見て初代パラシアス王は目を疑ったそうよ」


そこまで言うと勘の鋭いシャーレは気づいたのだろう「まさか」と声をこぼし、彼の方を見る。


「そうよ、敵兵一万を一人で返り討ちにした鬼の伝説。それが今回の物語とつながったの」


初代パラシアス王は鬼に助けられ、その鬼を専属騎士にした。


そこからの初代パラシアス王の成果は皆も知っての通り殆どに戦に勝利し、パラシアスを英雄の国と呼ばれるまでに成長させた。


それを聞いてシャーレは「それで彼を専属騎士にしたのですね」と少し呆れていた。


でも一番いい反応を見せてくれたのは彼だった。


「...責任重大ですが、私も一万くらい」


そういって考え込んだ彼を見ていると、本当にしそうだとシャーレとともに笑った。


そしてふと「私もレイピアの練習をしようかな」漏らした声に彼が反応した。


「何故レイピアを、確か初代パラシアス王は長剣を使っていたはずですが」


彼は「石像でもそうでしたし」と告げるけれどそれも間違いではない。


「初代パラシアス王は鬼と出会ってからはレイピアを使い続けたらしいわ。それも鬼からもらったんだとか」


それを聞いた彼は馬を止めて固まった。


「どうしたの?」


私は止まった彼を気にかけるよう馬を止めると彼は改まった様子で私たちに提案を持ち掛けた。


「少し思い出したことがあります。ルビナ王女...明日私についてきてくれませんか」


少し...いやかなり真剣なまなざしを感じた私はそれに応えるように首を縦に振った。


「お手数をおかけしてしまい、申し訳ありません。」


「いいのよ、あなたの事だから大事なことなんでしょう?」


私は即答をもらえると思っていたが、彼は少し渋っていた。


「...分かりません。もしかしたら無駄足になるやもしれません」


その言葉は意外だったが、それ以上に私はそれを信じてみたかった。


何せ私の専属騎士なのだから。


「専属騎士であるあなたを信じるわ。それに今まで遠回りしてきたんだもの、このくらいなんともないわ」


「ありがとうございます。ルビナ王女......私は良い主君を見つけられたようです」


ただ彼を信じただけなのにここまで言われると少し恥ずかしいものがある。


それを隠すために私は馬を動かし「行きましょう」と彼の家へと向かった。




次の日の朝、私は近くにあったはずのぬくもりがないことに気づく。


「シャーレ...」


そう呼ぶも答えてくれることはなかったが、外で二人の声が聞こえた。その二人に会いに行くために声のするほうへ向かった。


「シャーレ様、次は上です。次は横。足!突き!」

「くっ!」


わたしが目当ての二人を見つけた時、それは二日前と同じ光景だった。


だが違うのは、二人が木刀を使っていることだった。


「あなたのスピードは最大の武器です。相手の隙を逃さず最大スピードで、勝負を決めてください。しかし焦る必要はありませんチャンスが来るまで、耐え忍んで下さ...あっルビナ王女、起こしてしまい申し訳...」


私に気づきこちらを見て謝罪をする彼だが、油断は禁物だ。


「隙あり!」


「え?シャーレ様??」


そういった後、彼の言った通り死角を取ったシャーレが彼の腹に目掛けて一閃した。


「グフゥ」といいながら、お腹を抑える彼に笑ってしまうが、それ以上に満足そうにしているシャーレが見えた。


「やっと一本取りました!リーヴァさん、これで次の段階に.....ってルビナ様!?」


「おはよう、シャーレ。今日は楽しそうね」


先程まで気づかなかったシャーレは彼に勝ったことで私に気づき木刀を置いた。


「も、申し訳ございません。起こしてしまって...」


「大丈夫よ、それにいいものも見れたしね」


彼と同じことを言うシャーレを遮るようにそういうと首をかしげて「いいもの?」と呟いたシャーレに私はさっき見た光景を伝える。


「王国では苦労ばかりしていたシャーレがあそこまで喜ぶ姿をみせてくれたからよ」


能力のない第三王女、その従者である彼女は私以上に気苦労が絶えず、扱いもあまりいいものではなかった。


それを分かっているからこそ、私はシャーレが喜んでいる姿を見れてよかったと思ったのだ。


私の言葉を聞いたシャーレは少し恥ずかしそうにしていたが、私の聞きたいことはそれではない。


「それで、なぜ二人は朝からこんなことを?」

「それは....」


少し言いずらいのか目線を泳がせているシャーレだが、その答えを聞ける人はもう一人いるのでその一人に目線をずらすと彼は、いつの間にか立ち膝状態で頭を下げていた。


「えっと、リーヴァは何をしているの?」


「ルビナ王女のお休みを邪魔してしまった為、然るべき罰は受けるつもりです」


聞いた事と少しずれている気もするけれど、少し気にしすぎな彼に「気にしなくていいの」と声をかけると「感謝いたします」と返事をして先ほどの質問に答えてくれる。


「先ほどの質問ですが、実は昨晩シャーレ様から剣の修行をつけて欲しいと頼まれましたので」


そういう彼はシャーレの方に目線を向けるとシャーレは頬を紅潮させて彼に襲い掛かった。


「リーヴァさん!それは言わないようにと頼みましたよね!!」


「私はルビナ王女の専属騎士です!質問には答えなければなりません!」


「答えになっていません!」


木刀を持って先ほどの続きと言わんばかりの攻防...というよりシャーレの攻撃を彼が一方的に受けている。


その状況に笑いを漏らすと彼が私に「笑っていないでシャーレ様を止めてください」と懇願してきたためシャーレを止めて話を続けた。


「別に修行をつけてもらうことは悪くないのだから隠す必要はないでしょう」


何なら私も教えてもらいたいくらいなので、気にする必要はないのだが、シャーレは先ほどとは一転して暗い表情になった。


「...私の力では敵を倒すことができませんでした。ルビナ様をお守りすることができないことを身にしみて分かったのです」


それは、最近の事だろう。


三度にわたり負けてしまったシャーレは己の無力を痛感し、私を守るために強くなりたかった。


でもそれを知ってしまうと私が気負うとでも思ったのだろう。


私はシャーレの元へ行きシャーレを抱きしめた。


「私はシャーレにたくさん守ってもらいました。王国でも最近でも....そしてさらに強くなろうとするシャーレを誇りに思っています」


そういうとシャーレは小さな声で「ありがとうございます。」と言い、先ほどの暗い表情は消えて行った。


「さ、朝ご飯にしましょう。お腹空いちゃったわ」


空気を換えるため私は食事を食べるという名目で二人を家に戻し、湯浴みを済ませてご飯を食べた。


だが今日の本題はここからだ。


「リーヴァは私をどこに連れて行くの?」


ご飯を食べ落ち着いた私は昨日言われた場所を聞くため、その質問をしたのだが、その返答は曖昧なもので帰ってきた。


「私も行ったことがなく分からないのですが、地図はあります」


彼はそう言って地図を渡してきたが、その地図が示す場所はこの近く....というよりもこの森の中だった。


「この森の中なら行ったことがあるのでは」


シャーレは彼にそんなことを言うのだけれど、彼は首を横に振った。


「ここには師匠から行くなと言われていたのです」


「それなのに私たちはそこに行くの?」


私が不安に思ったと思ったのか、彼は直ぐに弁明する。


「いえ!行くなと言われたのはあっているのですが、これには条件がありまして」


私がその言葉に「条件?」と首をかしげると彼は続けた。


「この場所に行くときはこの国に正当な王が現れた時だと言われていたのです」


「待ってください、リーヴァさん。私が王国にいた時にはそんな話を聞いた事がありません」


「私もです」


正当な王が現れたら行く場所というなら私は聞いた事があるはずだった。


これでも王族、シャーレに関しても王国で私の従者をしていた。


そんな私たちが知らないことを彼が知っているのは、おかしな話だとシャーレも思ったのだろう。


私より先に言葉を出すシャーレはどこか疑うような目線を向けている。


「師匠はこういっていました。この国にはまともな王族がいなくなった。だがもしも初代パラシアス王のような方が現れたなら、その方に役に立つものがそこにはあると」


彼は最後に師匠が「現れるはずもないが」とも言っていたと伝えてくれた。


それを聞いて私たちは思い当たる事と、ひとつの不安があった。


「私はリーヴァの師匠が認めてくれるような人なのでしょうか...」


そんな弱気を吐く私にシャーレはいつものごとく元気づけてくれた。


「ルビナ様!誰が何と言おうとここにはあなたを認めてくれる人がいます。それに何よりあなたなら成れると私も思っております」


「...シャーレ...ありがとう」


「ルビナ王女、私もそう思っているからこそ、この話をしたのです。どうか自信を持ってください」


「そう....ね。もっと自信を持たなくちゃ」


私は気合いを入れるため両頬を叩き弱っていた気持ちを切り替える。


「じゃあ、行きましょうか。その地図の示す場所へ」


そういって私たちは支度を始めた。


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