王の器(ルビナ視点)
「まさか、あの能力を使って負けるとは...あの鬼どこまで私をイラつかせれば気が済むのか」
私達がリーヴァの死を悲しんでいる時、そんな声が聞こえてきた。
ああ、そうだった。あの能力は渡されたものだった。この魔のもの...ボティスに。
全員が戦闘態勢とり、そのボティスと対立している。
「待ちなさい!ここは私の国...それにリーヴァの仇...私が戦う」
「ルビナ王女、そんな事を言っている場合ではありません!」
「そうです!仇を取りたいのなら全員でかからないと」
カヒーナ王とハルジオン皇子の言うことは分かる。
だから....何?
「黙りなさい。コイツだけは私が倒さなきゃいけないの!」
「ルビナ様....」
私はレイピアを持ち、ボティスに戦いを挑んだ。
「無能力の王女如きが何を出来ると...能力発動」
その瞬間、私の体は地面へと沈みかけた。
(リーヴァ...お願い...力を貸して)
だけど、私はこの圧を気合いで跳ね除けた。
「動けるとは思いませんでした。ですが、遅すぎる」
ボティスの言う通り、私はただ動けるだけ、それも歩くよりも遅い位の速度で...
レイピアを持っている腕を持ち上げ、攻撃を防ぎはするものの、蹴り飛ばされてリーヴァの元に転がってしまった。
「ルビナ様!」
「まだ...負けていない」
お願い。もしも私が本当に王女なら...王になれるのなら、1度だけでいいから。
力を...
「無能力の王女...興味のない相手でした」
「私は...私はぁぁぁぁ!!」
その声はただ響いただけだった。
だけど、響きすぎていた。
「何...?その姿は」
「ルビナ...様?」
次の瞬間には、私は立ち上がれるようになっていた。
それどころか体軽い。
今まで感じたことが無いほど身軽に動ける。
「ルビナ王女...貴女」
皆からの視線によって私は理解した。
「これは...私の」
私の髪が風に吹かれた時、見えたのはいつもの銀色の髪ではなく、金色の髪だった。
「まさか...能力を得たというのか」
「能力発動」
私は無意識的にその能力を発動させた。
するとパラシアス全土を覆う光が、私から放たれていた。
「覚悟しなさい」
「調子に...乗るな。能力複数発動」
そこからは互角の戦いだった。
相手の剣をレイピアで絡め取り、懐まで踏み込んだ。
だが、ボティスもやはり強い。能力が複数あることも要因ではあるけど、卓越しているこの技術。
間合いに入ったと思っても直ぐに逃げれてしまい決定打がまるで無い。
逆に突きを放った時には皮1枚で交わされた。さらに返しの攻撃は私の体を薄くだけど、切り裂いていく。
だけど、戦えている。
真正面からの打ち合いはやや劣勢...だけどここで重大な問題があった。
「戦闘経験の少なさ...これが差です」
リーヴァが最初に言っていた通り、体格差と力の差による攻撃を私は受け流せなかった。
どうにか後ろに飛ぶ事で回避するも、追撃の剣はもう...私の目の前まで迫っていた。
「お姉様!能力を!」
「間に合って!」
「アルデミス!動ける?!」
「申し訳...ございません...」
「王女様!!」「ルビナ様!!!」
この場の誰1人、この状況で動く事が出来なかった。
(せっかく戦えるようになったのに...ここまでなんて)
もう少し私が戦えていたら...もっと戦っていたら...だが、その剣は私に当たることがなく目の前で止められた。
そしてその止めた人物は...
「私の前で...ルビナ王を殺させはしない」
「リー....ヴァ」
そこには死んでしまったはずのリーヴァが居た。
「どうして....」
リーヴァはボティスを斬り、蹴り飛ばすことで、距離を離した。
「分かりませんが、何故か...戻ってこれました」
しかも無くしたはずの右腕も、右目も再生していた。
「厄介な事になった...ここは逃げるとしよう...ですが、貴女方は次こそ確実に仕留めさせてもらいます。能力発..」
しかし、そこ動きは徒労に終わった。
「残念だったわね。私の能力は貴方にも効くみたいで」
あの時のイリア皇女の能力は間に合っていた。
だからこそ、ボティスは逃げることが出来なくなった。
「リーヴァ、一緒に戦ってくれる?」
「もちろんでございます。ルビナ王」
リーヴァと2人で挑もうとした私に、聞きなれた声が届いた。
「私にも戦わせてください」
それは私に最初から着いてきてくれていた人。
「シャーレ...ありがとう」
「おい、リーヴァ。俺にも戦わせろ。そいつには右腕分の借りがある」
「戦えるのか?」
「こんな時に引き下がってるやつが盟友で嬉しいか?」
こうして私達は魔のものと対峙した。4対1褒められたものでは無いかもしれないが、これは味方してくれている人の差だ。
「貴方は許されない事をした。その報い、受けてもらいましょう」
「たかが...小娘集団に私が負けるはずなどありえない!」
私はレイピアでそれに応戦した。今回は一撃も貰わない。
私は攻撃を当てることに集中して、魔のものの攻撃は無視した。
「貰った!」
「だから、殺させないといったはずだ」
私の胴体を狙ったその剣は、私の専属騎士であるリーヴァが止めてくれる。
そして私達に意識を割かれれば、シャーレは攻撃を当てられる。
「まさかこんな楽に後ろを取れるとは」
シャーレが振り下ろす短剣をボティスも反応して、剣を入れようとしたが、ここで軍師ユグラスが動いた。
ボティスの手には縄がかけられていて、後ろにまで手を回すことが出来なかったのだ。
「俺が普通に戦っても足でまとい。だけどこれなら俺は戦える!」
ユグラスは縄にの先に石を括りつけて、ボティスの手を拘束していた。リーヴァに重なって見えなかったのだろうけど、流石としか言えない。
「くっ...」
そのままボティスはシャーレに背中を切り裂かれ、私に左肩を貫かれた。
「さて、離れてもらおう」
そしてリーヴァの剣圧に負けた魔のものは、そのまま吹き飛ばされた。
「凄い...」
私達の戦いを見ている人からは、賞賛の声が漏れ出ていた。
「ふっふふっ、たとえ...私に勝とうとも...あの方に勝てると思うな...お前達には必ず...裁きの時が訪れる」
ボティスは満身創痍の状態で立ち上がり、ふらふらとこちらに向かってきていた。
「たとえ、誰が相手なのだとしても、この世界を平和にする為なら勝ってみせる」
そして私はレイピアで、ボティスの心臓を貫いた。
「パラシアス・ルビナ...災いの種はもう」
そう言い残してその魔のものは消えてなくなった。
「勝ったの?」
「はい」
私はパラシアスを取り戻したんだ....
やっと...私は...
「ルビナ様、本当に...良かったですね」
「王女様、いや、国王陛下...おめでとうございます」
「ルビナ王、貴女の夢を見届けさせて頂きます」
私に着いてきてくれた皆が私を王としてくれた。
こんなの...嬉しすぎて、何も...私の目からは1つまた1つと雫が落ちて、パラシアスの地へと落ちていった。
「私はパラシアスの王になれた。ここにいる皆とパラシアス、アンス国、ミクラナ帝国の人達のおかげ...だから、私は私についてきた全員が誇れるような王になって見せる!その時までついてきてくれる?」
「「「もちろんでございます」」」




