遺されたモノ(複数視点)
「あれは、まさか魔のものの!」
王女様達がパラシアスを攻めてから1時間、ちょうど王都へと着いた俺達は宮殿にかかる結界のようなものを確認していた。
「急ぎましょう。ルビナ王女達が危ないわ」
「お姉様!能力を使えそう?!」
「いえ、無理ね...宮殿とは言え、どこか...それに誰が居るか分からない」
どうやらまだイリア皇女の力には頼れないらしい。
(無事でいろよ...王女様、シャーレさん...リーヴァ)
俺は盟友のことを思いながら、馬を走らせた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「リーヴァ...どこに行ったの」
リーヴァが何処かにエルフさんを飛ばした後、シャーロット様と羅刹様もこの場から姿を消した。
「探しに行きましょ...う」
シャーレがそういった瞬間、この宮殿を覆っていた結界が消えたのだ。
「リーヴァが...」
これをやったのはリーヴァだろう。
リーヴァがエルフさんに勝ったんだ!
私はこれで人数有利になれると思い、リーヴァの元へ走った。
「リーヴァ!リーヴァ!どこにいるの!返事をして」
リーヴァの場所が分からなかった私は名前を呼びながら宮殿を走っていたが、リーヴァをシャーレが見つけた。
見つけてしまった。
「リーヴァさん、どこに....はっ、あそこです!ルビナ様!」
だけど、そこに居たのは変わり果てた姿のリーヴァだった...
リーヴァの元に駆け寄った私達は、その状態に戦慄した。
「これは...すぐに止血を!」
「ルビナ....王女.....勝ちましたよ......これで....ごふっ....貴方は...王に」
右腕を斬り落とされている上に、先程の戦いとは違う腹を貫通した傷が1つ...さらには浅くない傷がそこかしこにある。
助からない。
それが私にも理解出来てしまった。
「だとしても!貴方が!居なくなったら意味ないじゃない!私の夢を...理想を叶えさせてくれた貴方には...私の作る国を...世界を!見て欲しかったのに!!」
リーヴァに、1番見て欲しかった。
貴方が専属騎士になったから、こんな世界が作れたんだって...知って欲しかった。
それなのに...
「私も...貴女の作る...国を...ごふっ...はぁはぁ、世界を...見てみたかった」
その目には涙が浮かんでいて、無念だと言わなくても伝わってきてしまった。
「なら!」
「ですが...悔いは...ありません」
リーヴァの左手は異様な程に冷たい。
その冷たさをどうにかしたくて、私はその手を握っていた。
「ルビナ王女...お願いが...ございます」
リーヴァの願い...叶えなきゃ...
「なんでも言って...」
「最後は...貴女の手で、終わらせて...欲しいです。新たな、王の手で...」
私が...リーヴァを?
「ルビナ様...」
シャーレが私の肩に手を置いた。
それは私を落ち着かせるための行動だろう。
そして、止血をやめたのも、もう、助からないと分かっていたから...
私は震える手でレイピアを取りだした。
「貴方の願い...私が叶えます」
「ありがとうございます...それとこれを」
そしてリーヴァはいつもつけていたペンダントを私に差し出してきた。
それを受け取った私はその手を握りながら、私の涙が落ちてリーヴァに落ちるように、そのレイピアをリーヴァの心臓に落とした。
「ルビナ王...どうか夢を...理想を...叶えて下さい」
「当たり前よ...絶対に叶えてあげるから...見てて」
私がそう言いきった瞬間、リーヴァの深紅の髪は徐々に色を失い、白髪へと戻った。
まるで命を失っても、私への忠誠が残っているかのように。
そして私はその事実に、パラシアス全てに届くくらいに...泣き叫んだ。
「リーヴァァァァァ!!!私が弱かったからぁ...私がもっと...強ければ!」
私は行き場のない感情を地面に叩きつけた。
なんで、王女なのに...王になるのに、たった1人守れなかったの。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
この世界に俺を不幸だと思う奴がいるだろうか。
世界から認められる王に殺して貰えるんだ。
「ルビナ王...どうか夢を...理想を...叶えて下さい」
「当たり前よ...絶対に叶えてあげるから...見てて」
死ぬってのになんで、こんなに暖かいんだろうな...
ユグラス、悪いな
お前にルビナ王は任せる
でも、ちゃんと見守ってるからさ
父さん、母さん、エル...俺もそっちに行くよ
また...一緒に...
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「まずいかもしれません!」
俺達がパラシアスの王都に着いた時、王女様の声が聞こえた。
それもいい声ではなく、泣き叫ぶかのような声だった。
「間に合って!」
カヒーナ王もハルジオン皇子もイリア皇女も、一直線に宮殿を目指したが、もう、遅かった。
俺たちが見た光景はリーヴァが倒れて、王女様がリーヴァを抱きしめながら、泣いていたところだった。
「嘘...だろ」
俺は理解出来なくて、リーヴァの元に駆け寄った。
「おい!リーヴァ!リーヴァ!」
だけど、リーヴァは揺すろうとも何をしようとも、動く事が無かった。
「ユグラスさん....リーヴァさんが最後に言い残してました」
「.....」
「ユグラスさんにすまなかったと伝えてくれと」
何が...すまなかっただよ。馬鹿野郎!
お前が居なかったら、どうやって俺は...
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「王女様...それは」
「リーヴァが...最後に私に遺してくれたの」
ユグラスはリーヴァのペンダントを見ていたから、これのことだと思う。
「それ、リーヴァの親の...形見なんです。リーヴァの父が母に渡したって聞いてます。どこにいても守ってくれるお守りだって」
「リーヴァ...」
そんな大事なものだったんだ。
確かにリーヴァはあれをずっと身につけていた。
それを...私に....
私はそのペンダントを握りしめた。
「リーヴァ、貴方との約束は絶対に守るわ」
私を王にしてくれたリーヴァの為に...




