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無能力の王女の専属騎士は最強の鬼人  作者: もぶだんご


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軍師ユグラス?(リーヴァ視点)

「待ってください!なんで俺が奪還作戦を考えるんですか!」

「軍師ユグラス。いい響きじゃない」


 交流戦後のこと、作戦勝ちした事で作戦を考えるのが向いてるとなったユグラスに、ルビナ王女とカヒーナ様が、無茶ぶりをしていた。


「私が勝ったのもユグラスさんの策のおかげですからね。是非とも奪還作戦にも活かして頂きたく」

「そ、それは少人数かつ、遊びだったからで...」


 と、このようにユグラスに奪還作戦の策を練れと言う無茶ぶりが炸裂していたのだ。


「止めなくていいのですか?リーヴァさん」

「アルデミスさんこそ、カヒーナ様を止めた方がいいのでは?」


 俺とアルデミスさんは自分達の主の無茶振りを遠くから眺めながら、ため息をついていた。


「「それが出来れば苦労しないですよ」」


 そう、止めたところで後から同じ事を言うということは分かっている。ルビナ王女が止まらない理由としては、シャーレさんが一向に止める気配がないからだ。


 俺よりルビナ王女といる期間の長いシャーレさんが止めないということは、止まらないということだろう。


 諦めて眺めていると、自分一人ではどうしようもないとユグラスが俺に泣きついてきた。


「頼む!リーヴァからも何か言ってくれ!」

「悪い、俺はルビナ王女の専属騎士だから」

「あ、私もカヒーナ様の専属騎士なので」


 アルデミスはなにか言われると察知したのか、先に断りを入れていた。


「シャーレさん!シャーレさんなら!」


 最後の希望と言わんばかりにシャーレさんに振り向くのだが、シャーレさんは笑顔を浮かべていた。


「私はルビナ様の従者ですので...それにユグラスさんの策は役に立つと思いますよ」


 さっき盛大に引っかかった事もあるのだろう。少し棘を感じる言葉を投げているシャーレさんは、ユグラスを軍師にするのは賛成らしい。


「諦めろ。お前の策、期待してるぞ」


 俺は笑いを堪えていたのだが、普通に声が漏れてしまっていた。


「あー!もー!お前が全部壊滅してこいよ!」

「投げやりすぎるぞ、軍師殿....フッ」

「くそぉ...もうどうなっても知らないからな!」


 そしてユグラスは諦めたようにルビナ王女とカヒーナ様の前で膝をついた。


「このユグラス、アンス国奪還のため知力を振り絞らせて頂きます!」


 少しヤケクソ気味になっていたユグラスだが、しっかりとやってくれるらしい。


「ええ、任せるわねユグラス」

「期待しているわよ」


 その晩、ユグラスは寝ずに奪還作戦を考え続けていた。


「なぁリーヴァ」

「どうした?」


 いつも通り朝から修行をしようとしていた時、ユグラスから呼び止められた。


「お前が殿をやるとして、何回だったら城門の前まで行ける?」


 城門の前、それも殿....


「兵の数は?」

「500」


 俺はそれに頭を悩ませた。俺自身が、兵を持ったことがないから、どのような動きをするか検討がつかない。


 それでも被害を出さずに抑え切るというのであれば...


「2回...なら行けるはずだ」

「わかった」

「何かいい作戦でも思いついたのか?」


「....なんとも言えないけど、昔やってた事を規模大きくするって感じだな。通用すればいいんだけど」


 ユグラスがまともにこんな事を考えるとは思っていなかった俺は、盟友の成長を感じつつ、「頑張れ」と声をかけた。


「じゃあ、ユグラスの考えた策を聞きましょうか」


 修行を終えて少しした時のこと、俺たちは要塞の一室に集まり作戦会議をしていた。


 ルビナ王女から指名をされたユグラスはおもむろにアンス国周辺の地図を広げた。


「まず、第1目標はアンス国の奪還」


 それに俺たちは頷き、それを確認したユグラスは言葉を続けた。


「しかし、兵力が10倍ほどある。先にこれを減らして行きましょう」


 そして、ユグラスが指を刺したのはアンス国王都から程遠くない場所にある峡谷だった。


「リーヴァを殿にしてこの峡谷におびき寄せます。そして退路を断ちます」

「それはどうやって?」

「先に崖の上に切り倒した木を置いておき、リーヴァを倒そうとして出てくるであろう軍が峡谷に入ったタイミングで、上から落とします」


「なるほど、それなら地の利を活かした戦い方で人数不利を覆せますね」

「だけど、それで削れるのはどのくらいかしら」


 ユグラスはカヒーナ様の問いに少し渋っていたが、指を1本立てた。


「多くて1万だと思われます」


 5万のうち1万...多いがそれだけではまだ勝負にならない。


「残りは4万...相手に王族が居るとなると厳しいものがありますね」


 王族相手に戦うのならば、俺かアルデミスさんのどちらかは必須。しかし、アルデミスさんだと視覚がないことによる問題がある可能性を捨てきれない。


 聴覚だけではどうにもならない、それは俺との戦いで分かっていること。


「このリーヴァの動きを何度か見れば、予測が出来て、対策して来るでしょう。1万でやられたなら王都の守備があるとしても、2万は兵を出すと思われます。そこを刈り取りましょう」


 確かにそれが出来れば、敵は残すところ2万の軍。

 だがこれには大きな問題がある。


「人員が足りなく無いか?」


 2万の兵を5000で倒す。しかも奇策も何も無くだ。


「いや、相手はリーヴァを倒そうとして追いかけてくるんだぞ?それなら読みやすい」


 そしてユグラスは俺の退路にコマを置いた。


「ここに投石器を作って迎え撃つ!」


 投石器、その名の通り石を投げる機械の事だが、確かにそれなら...


「退路も塞ぎやすい上に広範囲への攻撃が可能...良い策ですね」


 アルデミスからの評価もあり、ここまでの作戦は実行に移す流れになった。


「そしてここまですれば、信用のない第三王子の軍は崩壊する。ここで総攻撃だ」


 最初の方ならまだしも、兵が半数を切ればもはや戦う意志を消えるというもの。


「これで行きましょう!」

「ええ、私もユグラスさんの作戦に賛成よ」


 ルビナ王女、カヒーナ様による同意の上、俺たちの作戦は決定した。


「悪いなリーヴァ、お前には負担をかける」


 その夜、俺が師匠の剣の手入れをしているとユグラスからそんな事を言われた。


「何気にしてんだ、お前らしくないぞ」

「いや、一応な。本当なら俺も戦って前線で指揮するべきなんだろうけど...」


 俺が否定しようとしたが、それよりも早く同室のアルデミスさんがそれに返した。


「いえ、軍師ならば後ろで待機し、臨機応変な対応をすればよろしいかと。前線に出れる軍師は確かに脅威ですが、やられた時は士気に関わります」


 アルデミスさんの言う通り、軍師が前に出るならば、その時よりに判断が出来、最善の策を打てるかもしれない。


 だが、それよりもデメリットがある。


「そうだぞ、ユグラス。お前だと足でまといだ」

「お前...言葉を選べよ」

「王都から逃亡した時ルビナ王女に助けられたマヌケはどこのどいつだ?」


 その言葉はユグラスには致命傷だったみたいで、大きくため息をついていた。


「確かに、それをやっていい立場じゃないな」

「ま、気にすんなって事だ。後、俺がいない間ルビナ王女は任せるぞ」


 今回俺はルビナ王女の近くにいない。なら、信頼出来るユグラスとシャーレさんに頼むしかない。


「私もいますので、ご安心を」

「そうですね、アルデミスさんがいるなら心強い」


 そうだ、今はアルデミスさんも居るんだ。


 決戦に向けて俺は気合いを入れていった。

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