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無能力の王女の専属騎士は最強の鬼人  作者: もぶだんご


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見定める時間(リーヴァ視点)

「わかった、なら俺とお前が勝負して勝つことができたら王女を殺すのはやめてやる」


 シャーレは少しも悩むこともなく決意を示す。


「いいでしょう。少なくとも相打ちにでもなればルビナ様は殺されませんし」


 そういって、勝負を受ける気満々だが、最初から相打ちを狙うとは忠誠心が高すぎる。


 だけどそれを言う時点で三流以下だ。だがここでも俺は驚くことが起きる。


「ダメ....シャーレ死なないで....私の事はいいからっ逃げて!」


「ルビナ様、大丈夫です」


 その発言に俺は目を丸くした。


 自分の命よりも従者の命を優先しようとしている王女、普通ならあり得ない事。そしてこの二人をみていると感じてしまうことがあった。


(あの時と同じ....)


 そんな妄想をしてしまうが、すぐにないと思考を切り替える。だが少しこいつらと話してみたくなったので、殺す前に話す時間でも作ろう。


「さて、移動するぞ。家の中を荒らされるのは嫌なんでな」


「わかりました」


 こんなにすんなりいくとは思っていなかったが、意外と素直についてきてくれ、家の近くにある開けた土地に出る。


「王女にはここで見学でもしてもらうとして、武器はそれでいいのか?」


 さっき山賊に手も足も出ていなかったから、もっと得意な武器でもあるのかと慈悲をかけたつもりだがシャーレの顔は変わらない。


「これで大丈夫です。始めましょう」


 俺とシャーレはお互い距離を取り剣を構えた。


「始まりの合図はそちらからでいいぞ」


 そういって合図をするというアドバンテージをシャーレ渡す。


 何のハンデもなければすぐ終わってしまうのは明確だからだ。


「余裕ですね。ですがそれはありがたい申し出なので受け取らせていただきます。」


 始まりの合図ができるという事は先手を取れるという事だけじゃなく、相手の集中が切れたタイミングで始めることもできる。


 ただただ有利でしかないため普通は第三者が行うもの。


 二人の間に沈黙が訪れる。


 それを不安そうに見る視線は今のシャーレには届かない。


 風が吹き二人の間に葉っぱが浮かぶ、その葉っぱが落ちる瞬間。


「始まりです!」


 そういった開戦の合図と共にシャーレは飛び込んできた。


(思ったよりも速い!)


 だが、シャーレが最初にした攻撃は突きだった。その行動には、ため息をこぼすことしかできなかった、突きを見て横によけると同時に剣を振り上げる。


 簡単に横を取れてしまった...もう少し剣の技を見せてほしかったが、従者に求めるものではないな。


 殺すつもりはないのでゆっくりと剣を下す。多少の怪我はするだろうが死なないだろう。


「かかりましたね」


 ゆっくりとはいえ、下ろした剣より早くシャーレが横なぎをしてくる。少し動揺してしまったが、問題はない範囲だったので、俺は横なぎに対し身をかがめることで対応する。かがんだ瞬間、足払いをすることで攻撃をよけると同時に相手の防御も崩す。


「くっ」と声を漏らしながら倒れるシャーレに俺は追い討ちをかける。


「ほら、避けないと死ぬぞ」


 そういって倒れたシャーレの顔面に剣を突き立てようとするが、それをシャーレは横に回転しそれを避ける。膝立ちし息を切らしているシャーレに俺は笑いかけた。


「どうした、そんなに息を切らして。もう終わりか?」


「これからが本番です!」


 そういって立ち上がったシャーレはこちらに向かってくる。シャーレとの剣の打ち合いが少し続いたため、飽きてきた俺は勝負を決めに行った。


 シャーレが力を込めた上からの一刀。それを俺は弾き返し、剣を吹き飛ばす。


「これで終わりだな」


「くっ....」


 そういいシャーレの喉元に剣を向ける。ここからが本番だ。


「もしお前があの王女を殺すならお前は生かしてやる。さぁどうする?」


(さぁ、本心を答えてみろ。あの王女への忠誠その化けの皮を剥いでやる)


 だが俺の思っていた答えを聞く前に邪魔が入った。


「シャーレを殺さないで!」


 その声が聞こえた先にいたのはこちらを目掛けて走ってきた王女。流石に予想外なことが起こったため、俺は反応が遅れた。


(今あの王女に出来るのは体当たりか王族の能力による攻撃......)


 俺が王女の方を見た瞬間、さっきまで剣を向けていたシャーレが動いた。俺の足を掴み王女の方に行けないように...剣を向けられていたのだから、殺気で動けなくなってもおかしくないのに...


「はなせっ!」


 俺がそういい、足を掴んだ手を払いのけるべく足をふるいシャーレをどかす。


 一瞬、時間を取られた。


 王女の攻撃が来る!俺はバックステップを踏み距離をとるが……王女の方を見ると王女は俺の方に走ったわけではなかった。


 俺は固まってしまい目線だけが走るほうを見ていた。


「シャーレ!!」


「ルビナ様!来てはいけません!」


 王女がシャーレの方に走っている....何故だ、王族なんだから自分の身を第一に考え、従者の安否などどうでもいいはず。


 そんなことを考えているうちに王女はシャーレの元にたどり着き、抱き着いていた。


「シャーレ...だめ、あなたが死んだら私は....」


「ですがルビナ様。あなたの安全が私の一番なのです」


 その様子を見た俺は剣を下ろしながら、一人考えていた。


(こいつらはやはり.....)


「勝負はついた。シャーレとやら、お前の負けでいいな」


 王女を抱えながらこちらを恨み目で見てくるシャーレだが、武器すらもない抵抗もできないだろう。


「私の負けは認めますが....どうかルビナ様の命だけはお助け下さい」


 頭を地につけて自分の命よりも主を優先するシャーレをみて、俺は聞きたいことが増えた。だがそれよりも驚くことがある。シャーレは気づいていないのだろうか。


「何をしている。王女よ」


 それは俺とシャーレの間に立ち両手を広げるルビナ王女だ。その問いに王女は震えた声だが、それでも力強く答える。


「私の命に代えてもシャーレは殺させません.....!」


「おもしろい、そいつは生かしてる。もともと殺す気もなかった」


 少し安心したように息をつく王女だが、それに異を唱えたのはシャーレだ。


「ダメですルビナ様!あなただけでもお逃げください!!」


「少し黙れ。今お前の主は自分の命をかけて、お前を救おうとしているんだ。黙ってみていろ」


 そういいながら、俺は王女に近づき剣を振り上げる。その剣が振り下ろされる瞬間、シャーレの絶叫が聞こえ、王女はシャーレの方に微笑み何かを言っているように見えた。


 俺はそれを見ながら確信を得たためその刃を止める。そして剣を収めた。


 それを見た二人は何が起きるのか分からず放心していた。しかし、それも少しの間の事、すぐにシャーレは王女を抱きしめて泣いていた。


「ルビナ様ぁ、ご無事でよかった......なぜあのようなことをしたのですか。私の事など」


「あなたは私のことを大事にしてくれましたから、恩を返したかったんです。そしてシャーレには生きて欲しかった」


 シャーレが言い終わる前に王女は自分の思いを伝えた。それを聞いた俺は二人に吐き捨てるように言葉を投げる。


「ほんと、調子の狂う奴らだ。」


 それを聞いたからかシャーレは俺に質問をぶつけてきた。


「なぜ、あなたは殺すのをやめたのですか?」


 俺はため息をつきながら振り返り考えていた事を伝えた。


「さっきも言ったがシャーレさんを殺すつもりはなかった。王女を殺さなかった理由は気まぐれ...いや、聞きたいことがあったからだな」


 シャーレは警戒を強め、王女を強く抱きしめている。


「もし、聞きたいことを聞き終わったら、どうするつもりですか?」


 何度目か分からない敵対する者の目だが、俺は冷静に答える。


「それは王女次第だ。後、勝負に勝ったのだから言うことは聞いてもらうぞ」


 それに対してシャーレは下唇をかみしめながら自分の無力を痛感するように、頷いた。


「とりあえず、三日間はここで暮らしてもらうのと俺の質問に正直に答える事。それを破らない限り、危害は加えない。でもそれを守らないなら...」


 シャーレと王女に剣を向け「分かるな?」という意味を含ませる。それにシャーレは頷いた。


「俺は今から近くの村に行ってくる。家にあるものは食料でも何でも使っていい。」


 そういい捨て、俺は準備のため家に向かった。


(パラシアス・ルビナか....覚えておこう)

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