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無能力の王女の専属騎士は最強の鬼人  作者: もぶだんご


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最強の代償(リーヴァ視点)

「全員!ハルジオン様を守り、撤退せよ!」


 さっき腕を切り落としたマルコがそう叫んだが、引いてくれるなら有難い。


(もう、限界だ....)


 能力を維持し続けるため、俺は動かずミクラナ帝国の軍が後退するまで、立ち続けた。


 その後、激しい痛みが全身を駆け巡り、俺は気を失った。


 あれからどれくらい経っただろうか。言う事の聞かなかった筈の体が少しずつ、いや、手だけを動かせるようになっていた。


 そして俺は意識を取り戻し、ゆっくりと目を開けると泣きながら俺の手を握るルビナ王女の姿があった。


「ル...ビナ...王...女」

「ああ...リーヴァ...リーヴァ!!」


 ルビナ王女は泣きながらも俺に抱きついてきた。


「ごめんなさい、ごめんなさい...何も出来ないのに助けになんて行ったから...」


 ルビナ王女は自分が来たから俺が倒れてしまったと思っているようだった。


「それは...違います.....私が弱かったから....」

「そんなはずない!」


 収拾がつかないそう思った時、部屋のドアが空いた。


「リーヴァさん目を覚ましたんですね」

「お前、無茶するなよな」


 2人とも俺の事を心配して待っててくれたようだった。


 それにしても、あの程度でこうなるとは思ってなかった。


(せめてマルコだけは倒しておきたかった)


 多分あれだけじゃ死ぬことはないだろう。だとしたら脅威とまでは行かなくても、厄介な相手ではある。


「リーヴァさん、あれはなんだったんですか?」


 シャーレさんはルビナ王女を慰めながら、今回の件について話したが....


「あれは...師匠から教えてもらったものです」


 少しずつ体の感覚も戻ってきた俺は、体を起こして自分の体を見た。


(ボロボロだな)


 皇族相手とはいえ、かなりのダメージを受けてしまった。あいつらはパラシアスの王族よりも強かった。


「教えてもらう?能力をですか?」

「正確にはあれは能力では無かったのです。師匠はあれを常時発動いや...それが普通だったです」


 師匠はあの状態を維持し続けていた。今思えば、それは本物の鬼だったからなのかもしれない。


「つまり、鬼の身体能力と同等の力を引き出せるという事ですか?」

「その通りです」

「だとしたら、なんでリーヴァは倒れたの?」


 ルビナ王女は能力にデメリットがあるなんて聞いたことが無いのだろう。だけど一つだけわかりやすいものがある。


「ルビナ王女も経験されたでしょう。あのレイピアで」


 ルビナ王女はそれを理解したようだが、俺に責めるような目を向けてきた。


「反動があるって分かってて使ったの?」

「あの状況なら、あれしか思いつきませんでした」


 皇族相手に、しかもルビナ王女を守りつつ2万の兵にも気を配る。

 今の俺にはそんな事は不可能だった。


「なぁリーヴァ、あの状況で1人だったらどうするつもりだったんだ?」


 ユグラスは気になっていたようだ。それもそうだ、傍から見れば劣勢もいい所だったのだから。


「逃げるつもりではあった」


 実際地形などを利用すれば、ここの地理を理解していないミクラナ帝国の軍くらいなら巻けていた。

 だから、そのための一手を打とうとはしていた。


「だとしたら、余計なことをしてしまいましたね」

「いえ、それは違います」

「でも....」


 シャーレさんもだが、ルビナ王女は自分の選択を後悔していたようだった。


「きっと、あれだけの被害を出したミクラナ帝国は、ルビナ王女を王族だと認定したでしょう。たとえ自国じゃなくても敵国からそう思われるならば、ルビナ王女はパラシアス最後の王族....と...して」


 そこで俺はある事に気づいた。


「.....ルビナ王女、第三王子はどこに」


 王国にいたのか....いや、王都が進行された時に宮殿に向かった金色の髪はいなかった。


 それになりより、なんであそこまで攻められて気づかない。


「確か、最初の戦いで私より先に何処かに....」


 そして、俺達はひとつの結論に辿り着いた。


「....やられましたね」

「多分ですが....」

「嘘だろ、王子が裏切ったって....だとしたら何のために...」


 理由....あの傲慢な王族が自国を裏切る...なんのためだ。


「....ルビナ王女、私は1度王都に潜入してまいります」


 1度王都に戻り情報を...


「ダメよ!そんな体で....」


 ルビナ王女は俺の状態を見ているが、大きな傷は背中のみ。


「大丈夫です。1日もあれば回復します」

「でも....いや、邪魔はしないわ」


 そうして俺の王都潜入が決まったのだが、ルビナ王女はただ認めるだけではなかった。


「シャーレ」

「はい」

「貴方もリーヴァについていって」

「分かりました」


 だが、ここでシャーレさんも居なくなっては...


「それではここの防衛が甘くなってしまいます」

「大丈夫だリーヴァ!俺が命をかけて守ってやる」

「っ、だが....いや、分かった」


 ユグラスのそしてルビナ王女の目を見て俺は、断れない事は分かったので、出来るだけ早く帰還する事を考えた。


「それと、リーヴァのその能力俺にも教えてくれよ。そしたら反動があっても戦えるだろ?」


 確かにユグラスが使えるようになればいいのだが...


「それは無理だ」

「リーヴァさんには教えられないのですか?」


 師匠だから教えられると思っているようだけど、これは違う。


 そもそも俺が能力を使えるようになったのも奇跡みたいなものだから。


「この能力を使うことは出来ると思いますが、維持することが出来ないと思われます。それに何より」


 俺は1呼吸を置いて最大のデメリットを伝える。


「適性がなければ死にます」


 その瞬間全員が固まる結果になった。


「だ、だとしても、その適性さえあれば大丈夫なんだよな?」

「確かにそうだが、その適性の調べ方はないんだ」


 落胆したユグラスだが、シャーレさんは納得がいっていないようだった。


「じゃあ、リーヴァさんはどうやって適性があると分かったんですか?」


 俺はその言葉に昔の事を思い出した。


「あの王族を殺せるならと死ぬつもりで能力を発動させました」


 師匠にも言われはした。能力を使わずとも、王族に勝つことが出来るかもしれないと。


「リーヴァ.....」

「....申し訳ありません」


 ルビナ王女の表情に影が出来てしまったのを見てしまった俺は、バツが悪くなってしまった。


「いえ、分かっていたわ。父上達を前にした貴方を1度見ているから」


 そういえば、あの時も...狂気に染っていた。


「それが分かったとして、リーヴァさんは王都で何をするつもりですか?」


 この会話の雰囲気がマズいと思ったシャーレさんは、この後のことに話題を逸らした。俺らはそれを理解して、この話を辞めた。


「まずは王都がどうなっているか、そして第三王子について、最後にミクラナ帝国の目的を探ります」


 攻め落とされた王都がどうなっているか分かったものでは無い。虐殺などはないと信じたいが、いい状況では無いことだけは分かる。


(第三王子がいるからと言って、戦争を仕掛けるか?)


 何かあったわけでもないならば、突然すぎる侵略戦争。


「確かに帝国が何故パラシアスを攻めたのか、理由が分かっていませんね」

「ええ、私も何か問題があったとは聞いた事がないわ」


 そうして2日後、俺とシャーレさんは再び王都へと向かった。


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