王都侵攻(ハルジオン視点)
パラシアス進行が発覚する少し前。
ミクラナ帝国の第2皇子、第1皇女率いる40万の軍はパラシアスに向けて着々と進軍を進めていた。
「ねぇ、お姉様」
「どうしたのハル?」
「本当にパラシアスなんて国いるの?」
「お父様が欲しがっているのだから、仕方ないじゃない。それに犠牲はほとんど無いわよ」
「それもそうだね。お姉様がいる時点で、負ける事なんて無いよ」
第2皇子 ミクラナ・ハルジオン。
第1皇女 ミクラナ・イリア。
帝国における最大兵力によるパラシアス進行だった。
「イリア様、ハルジオン様。パラシアスの包囲完了致しました!」
僕とお姉様のもとに伝令兵がそう報告してきた。
「予定通りね。ありがとう」
「はっ!」
お姉様が返事をすると伝令兵は、自分の持ち場へと戻って行った。
「確か、今パラシアスにいる王族は5人だったよね」
「ええ、国王1人と王子、王女が2人ずつのはずよ」
「なら、もう勝ち戦だね」
「そうね。じゃあ始めるわよ」
僕が頷くとお姉様は少し前に出た。
「能力発動」
そうして、お姉様は王族5人をターゲットにした能力無効の能力を発動させた。
(能力を能力でかき消す....これでもう1人皇族がいるだけでこっちの勝ち)
お姉様の力は1人だと少し物足りないかもしれないけど、これがもし味方に皇族がいた瞬間、最強の能力に早変わりする。
「みんな、今日もお願いね」
お姉様が兵を鼓舞したならば、次は僕の番だ。
「全軍!出撃!!!」
「「「おーーー!!!」」」
僕の出撃の合図とともに、全軍がパラシアスを攻めに行く。僕とお姉様の仕事は問題がない限り、これで終わりだ。
「今回も楽な勝負だったね」
「これで負ける方が難しいわよ」
「確かに」
そう言って戦場にあるにも関わらず、僕たちは笑っていた。少しすると、西門を初めとして、裏門以外の全てが陥落したと報告があった。
「これで本当に終わりだね」
「ええ、報告にあった鬼がいなくて何よりだわ」
「やっぱり、あれは兵の見間違えだったんじゃないかな?」
僕たちは少し前に、伝説にいた鬼が出たと報告があったが、パラシアスには居ないみたいだった。
(一応警戒していたんだけどなぁ...)
そうして気が抜けた時、伝令兵から耳を疑う報告を聞いた。
「イリア様!ハルジオン様!お急ぎでお伝えする事が」
かなり重要な要件だったのか、かなり焦りの色が見える。
(何か問題が...)
「一旦落ち着いて、ゆっくり話してみて?」
お姉様も伝令兵が慌てている事はわかっていたので、1度落ち着かせて話させる。
「失礼しました。ご報告ですが、裏門より鬼を含んだ4名の逃亡を確認しました。奴らは残虐の森へと向かっているとの事!」
「まさか....!本当に鬼が現れたと言うの!?」
流石に動揺を隠しきれないお姉様は慌てていたが、僕は冷静だった。
「大丈夫だよ、お姉様。鬼は逃げているみたいだし、気にする事はないよ」
「っ、それもそうね。少し冷静じゃなかったわ」
僕の発言にお姉様も理解を示して、少し落ち着いていた。
「それでも一応、討伐隊は編成した方が良いわね」
「それは僕が行くよ。この感じだと僕はいなくても大丈夫そうだし」
それにお姉様は少し渋った様子を見せていた。
「わかったわ...でも危ないと思ったらすぐに逃げるのよ?」
「分かっているよ。僕も死にたくないからね」
お姉様は僕の頬を手で撫でてくれた。
そうして僕は2万の兵と帝国最強と謳われる専属騎士を率いて、鬼の討伐へと向かった。




