第33話 JIFの余波
JIFから一週間後。
狸狸亭の二階で、僕は三人とミーティングをしていた。
「SNSのフォロワー、すごい増えてるね」
ふたばが、スマホを見ながら目を輝かせた。
「本当だ……」
片桐さんも、驚いた顔でスマホを確認する。
「コメントも、すごく増えてる」
理沙が、画面をスクロールしながら言った。
「JIFで見ました!めちゃくちゃ良かった!」
「ぽんぽんぺいん泣いた」
「また見に行くね!」
「次のライブはいつ?」
コメント欄には、応援のメッセージが溢れていた。
「……成功したんだね」
片桐さんが、小さく呟いた。
「私たちの歌、ちゃんとみんなに届いたんだね」
その言葉に、三人が頷いた。
ミーティングが終わって、狸狸亭のカウンターで烏龍茶を飲んでいると、マスターが話しかけてきた。
「JIF最高だったな」
「ありがとうございます!」
「他のグループと比べても、盛り上がりは負けてなかったな!」
マスターは、グラスを拭きながら続けた。
「三人とも、いい顔しとったな」
「ありがとうございます」
「でもな、清水」
マスターが、少しだけ真剣な顔をした。
「ここからが本番や」
「……どういう意味ですか?」
「JIFに出たことで、注目された。でも、それを維持するのは、もっと大変や」
マスターの言葉が、胸に刺さった。
「これからどうするか。ちゃんと考えなあかんで」
「……はい」
僕は、頷いた。
その夜、スマホを見ていると、腹鼓ブラザーズのリーダーからメッセージが来た。
「おめでとう!JIF、最高やったで!」
「ありがとうございます」
僕が返信すると、すぐに返事が来た。
「次のライブ、一緒にやらへん?うちらの対バンに、ぽんぽこ呼びたいねん」
「本当ですか!?」
「ああ。お前らなら、もっと大きい会場でも大丈夫や。考えといてな」
その言葉に、僕の胸が高鳴った。
(もっと、大きいステージ……)
JIFのステージを経験した三人なら、きっとできる。
僕は、スマホを置いて、窓の外を見た。
街灯が、静かに道を照らしている。
翌日、練習の後。
「ねえ、聞いた?」
ふたばが、嬉しそうに言った。
「腹鼓ブラザーズさんから、対バンのお誘い!」
「うん。清水くんから聞いた」
片桐さんが、笑顔で頷いた。
「楽しみだね」
理沙も、静かに笑っていた。
「大きい会場でライブできるなんて」
三人は、嬉しそうだった。
僕も、その様子を見て安心した。
(……良かった)
三人は、まだ前に進みたいと思っている。
それなら、僕もマネージャーとして、全力でサポートしよう。
その夜、帰り道。
空を見上げると、雲の切れ間から月が顔を覗かせていた。
JIFの成功。
増えたフォロワー。
次の対バンライブ。
全部、順調に進んでいる。
でも――
胸の奥に、小さな不安があった。
(このまま、ずっと続けられるんだろうか)
ぽんぽこぽん。
心臓が、静かに鳴った。
僕は、その不安を振り払うように、頭を振った。
(大丈夫。三人がいる限り、僕も一緒に進める)
そう、自分に言い聞かせた。
夜風が、頬を撫でていった。
冷たい空気が、胸の奥まで染み込んでくるようだった。




