第25話 ぽんぽんぺいん
新しいスタートを切ってから、一ヶ月。
ぽんぽこ♡トリオは、対バンライブを重ねていた。
小さなライブハウスから、少し大きめの会場まで。様々なアイドルグループと共演し、経験を積んでいく。
入場のSEが流れ、三人がステージに上がる。
客席から、歓声が上がった。以前より、明らかに多い。
片桐さんの歌声が、会場を包み込む。ふたばの笑顔が、観客を癒す。理沙のダンスが、圧倒的な存在感を放つ。
三人の動きは、日に日に洗練されていった。息が合い、ズレがなくなり、一つのチームとして完成度が上がっていく。
僕は、袖からその姿を見守っていた。胸の中で、ぽんぽこぽんと心臓がリズムよく鳴り続けている。
ライブが終わって、楽屋に戻る。
「お疲れ様!」
ふたばが、水筒を開けながら笑った。
「今日も、すごく盛り上がったね」
「うん。お客さん、みんな笑顔だった」
片桐さんが、汗を拭きながら微笑んだ。
理沙が、スマホを見ながら言った。
「SNSでも、好評みたいだよ。『ぽんぽこ♡トリオ、可愛すぎる』って」
その言葉に、三人が嬉しそうに笑った。
僕も、ノートを開いて次のスケジュールを確認する。対バンライブは、まだまだ続く。
「新曲がまた評判良いんだよね」
片桐さんが嬉しそうに言った。
「良いですよね。ぽんぽんぺいん!」
対バンライブが多くなる中で、出演の尺も貰えるようになったため、急遽新曲を作って貰っていた。
片桐さんはスマホを取り出し、ぽんぽんぺいんを流しだした。
リズミカルで優しいメロディー。少しだけ切ないけれど、温かい曲調。
そして、歌詞がまた良い。
ぽんぽんぽん ぽんぽんぺいん
お腹が痛くなったら
私が さすってあげる
優しく ぽんぽんって
ぽんぽんぽん ぽんぽんぺいん
心が痛くなったら
そばに いてあげるから
一人じゃないよ ぽんぽんって
「私たちらしい曲だよね」
ふたばが、目を輝かせた。
「可愛いけど、ちょっと泣けるね」
理沙が、静かに頷いた。
片桐さんは、少しだけ目を潤ませていた。
「……いい曲」
その日の夜、狸狸亭の二階。
次の対バンライブに向けて、『ぽんぽんぺいん』の振りを改めて確認していた。
ポコレンジャーズの里見さんが、細かく指示を出す。
「サビのお腹をさする動き、もっと優しく。観客一人ひとりに語りかけるように」
里見さんの指示に、三人が頷く。
この曲は、すでに何度もライブで披露していた。SNSでも「ぽんぽんぺいん、神曲」「優しすぎて泣いた」と評判になっている。
でも、だからこそ、もっと良くしたい。もっと観客に届けたい。
片桐さんが、歌い始める。
ぽんぽんぽん ぽんぽんぺいん
お腹が痛くなったら
私が さすってあげる
優しく ぽんぽんって
その歌声は、前よりも優しくなっていた。言葉の一つ一つに、想いを込めている。
ふたばが、笑顔で踊る。その動きは、練習を重ねるごとに自然になっていた。
理沙が、しっかりと支える。三人のバランスを取りながら、優しく踊る。
サビで、三人がお腹をさする。その動きは、本当に優しく、温かかった。
曲が終わって、三人が息を整える。
「……完璧だね」
里見さんが、満足そうに頷いた。
「この曲、ファンの心に響いてるよ。もっともっと大事に育てていこう」
その言葉に、三人が笑顔を見せた。
僕も、ノートにメモを取りながら、胸が熱くなった。
(この曲は、もうぽんぽこ♡トリオの代表曲だ)
そう確信していた。
次の対バンライブ。
会場は、前回より少しだけ大きいライブハウスだった。客席には、ぽんぽこ♡トリオのファンが増えてきている。
「次は、ぽんぽこ♡トリオです!」
MCの声に、三人がステージに上がる。
歓声が、会場を包んだ。
「こんにちは!ぽんぽこ♡トリオです!」
片桐さんが、笑顔で挨拶する。
「聞いてください。『ぽんぽんぺいん』!」
理沙の言葉に、客席から「待ってました!」という声が飛んだ。
イントロが流れ始める。
客席が、ペンライトを揺らし始めた。もうこの曲を知っている人が、たくさんいる。
片桐さんが、優しく歌い始める。
ぽんぽんぽん ぽんぽんぺいん
お腹が痛くなったら
私が さすってあげる
優しく ぽんぽんって
その歌声に、客席が静まった。
みんな、じっと聞いている。一緒に口ずさんでいる人もいる。
ふたばと理沙が、優しく踊る。サビで、お腹をさする動き。
客席の前列にいた女性が、ハンカチで目を押さえた。隣にいた友人も、涙を拭いている。
ぽんぽんぽん ぽんぽんぺいん
心が痛くなったら
そばに いてあげるから
一人じゃないよ ぽんぽんって
片桐さんの歌声が、会場全体を包み込む。
ふたばの笑顔が、観客を癒す。
理沙のダンスが、優しく支える。
曲が終わって、一瞬の沈黙。
そして、割れるような拍手。
「最高……!」
「何度聞いても泣ける……!」
「ぽんぽこ♡トリオ、大好き……!」
客席が、歓声に包まれた。
片桐さんが、涙を浮かべながら笑った。
ふたばも、理沙も、笑顔を見せた。
僕は、袖から拍手を送った。
胸の中で、ぽんぽこぽんと心臓が鳴り続けていた。
ライブが終わって、楽屋。
「すごかった……!」
ふたばが、興奮した様子で言った。
「みんな、一緒に歌ってくれてたよ……!」
「うん。この曲、本当にファンの心に届いてるね」
片桐さんが、少しだけ目を潤ませた。
理沙が、スマホを見ながら言った。
「今日のライブ動画、もう上がってる。『ぽんぽんぺいん、何度聞いても泣ける』ってコメントがたくさん」
その言葉に、三人が嬉しそうに笑った。
僕も、笑顔で頷いた。
「この曲、ぽんぽこ♡トリオの代表曲になりましたね」
片桐さんが、僕を見た。
「うん。清水くんが見守ってくれてるから、頑張れる」
その言葉に、僕の胸が温かくなった。
腹鼓ブラザーズのリーダーが、楽屋に顔を出した。
「おう、お疲れさん。評判良かったな」
「はい!ありがとうございます!」
三人が、声を揃えた。
「この調子で頑張れよ。お前らなら、もっと上に行ける」
リーダーは、満足そうに笑った。
「次は、JIFを目指すんやろ?」
「JIF……?」
ふたばが、首をかしげた。
「ジャパンアイドルフェスティバルや。地下アイドル界の登竜門や。そこに出られたら、本物や」
その言葉に、三人の目が輝いた。
「……JIF」
片桐さんが、小さく呟いた。
「出たい……」
「出よう!」
ふたばが、拳を握った。
「頑張りましょう」
理沙が、静かに頷いた。
僕も、ノートにメモを取った。
次の目標――JIF。
その夜、帰り道。
月が、静かに光っていた。
対バンライブを重ねて、ぽんぽこ♡トリオは確実に成長している。
新曲『ぽんぽんぺいん』は、もう代表曲として定着していた。
そして、次の目標は――
JIF。ジャパンアイドルフェスティバル。
地下アイドル界の登竜門。
そこに出場することが、次の目標だった。
ぽんぽこぽん。
心臓が、重く鳴った。
胸の中で、何かが静かに燃え続けていた。
それは、希望の炎だった。
僕たちは、また一歩、前に進んでいた。




