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実らぬ恋の皮算用  作者: はらっぱ


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14/23

第14話 SNSのざわつき

打ち上げの翌朝、僕のスマホが震えた。

見慣れたグループLINE――狸腹鼓保存会のメンバーたちからだ。


木村先輩「おい清水、見たか?」

佐伯「マジでバズってるな!」

浜田「Xのトレンド入りそう!」


何の話だろう。

まだ目が覚めきっていない頭で、Xを開く。

検索窓に「ぽんぽこトリオ」と打ち込むと昨夜のライブの写真、動画、感想ツイートが次々と流れてくる。


「昨日のライブ行ってきた!ぽんぽこ♡トリオめっちゃ可愛かった!!!」

「耳と尻尾のクオリティやばい。揺れるのリアルすぎ」

「ふたばちゃんの笑顔に癒された...推せる...なんだあの小動物感たまらないな…」

「理沙ちゃんのクールな目線で殺された(物理)」

「真帆ちゃん、声も動きも完璧。これは伸びる」


心臓が跳ねる。

嬉しい。

純粋に、嬉しかった。

片桐さんたちの頑張りが、こうして届いている。


昼休みにぽんぽこトリオと検索すると、ライブの切り抜きが、まとめアカに拾われていた。


【新人】狸コンセプトのアイドルが可愛い件【ぽんぽこ♡トリオ】


再生数:14,289


ふたばのステップでちょっと転びかけて笑う瞬間。

理沙がさりげなく支えて、二人の尻尾が揺れる。

片桐さんが、客席に向かって微笑む。


まだ1日も経ってないのに…

胸の奥が、じん、と熱くなった。


「お、清水じゃん。何見てんの?」


同じ学部の男子が覗き込む。


「これこれ。なんかXでめっちゃ流れてくるんだけど。

 新人アイドル?大学近くのライブハウスらしいよ」


「へ、へぇ……そうなんだ」


「しかも、理沙ちゃんってうちの大学らしいぞ」


声がうまく出なかった。

嬉しさと照れと、ちょっとしたくすぐったさ。


「ていうか清水、こういうの見るんだ?」

「まあ……ちょっと、ね」

「今度ライブ行ってみようぜ」

「あぁ、そうだな」


夕方、狸狸亭


提灯の灯りは、いつもより明るく見えた。


「ねえ見た!?SNS!めっちゃバズってるよ!」

ふたばが机に飛びつく。


「“ファンアート描きました”ってタグまでついてた」

理沙がスマホを見せる。

そこには、柔らかいタッチで描かれた三人。

耳も尻尾もふわふわに描かれている。


片桐さんは、嬉しそうに頬をゆるめていた。


「……ねえ聡くん」


呼ばれて振り向くと、


片桐さんは、ほんの少しだけ声を落として言った。


「嬉しいね」


「うん」


「でも、なんか不思議。“夢が叶っていく”って、こういう感覚なんだね」


それは、嬉しさでも、不安でもなくて。


たぶん、覚悟の予感だ。


僕は少し笑った。


「ぽんぽこ♡トリオは、これからまだまだ伸びますよ」


片桐さんも笑った。


ふたばが両手を上げて叫ぶ。


「われら、ぽんぽこの波に乗る〜!!」


理沙が真顔で言った。


「流されないように、ちゃんと漕ぎましょうね」


「はーい」

ふたばが背筋を伸ばし返事をすると、その場にいた皆がどっと笑った。


今日の狸狸亭は、いつにも増して温かく感じた。

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