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オプティシャン・エニグマ  作者: 塚口悠良
第2話:思いの重み
7/24

2話 ep.1

 Optician”ENIGMA” そこは、顧客が求める視界を、見たいと望むものを見せるメガネ屋。路地裏にひっそりと佇むその店は今、アンティークで静謐な外観とは似つかない怒声が響き渡っていた。

「アンタこの部屋どんだけ放置してたんだよ!」

「いや、物置部屋ですし……」

 本日はトキの出勤初日。店の清掃を任されたトキは、一通り店内を見て回っていた。フロア、加工室、測定室、バックヤード。その奥の物置部屋に入ったところで、トキは耐えかねたように大声を出した。

「客から見えるとこ以外に気ぃつかえねえのかアンタ! 加工室も道具出しっぱなしでごちゃごちゃだったし!」

「それは……またすぐ使うかもって」

「使う時に出せばいいだろ! そもそもすぐ使うほど客来るんすか?」

「いや、まあ……その……急を要する場合も多々あるでしょう? あなたの時みたいに」

 視線をうろうろとさせながら言い訳を続けるメジロを睨み付けながら、トキは先ほど袖を通したばかりのパリッとしたワイシャツのカフスボタンを外す。

「とりあえず掃除します。不要そうなもんは一旦まとめとくんで後で確認してくださいね」

「思ったよりも真面目に掃除してくださるんですね……」

 目を丸くしたメジロに青筋を立てながらトキは口を開く。

「バイトなんでね。給料分は働きますよ。どうせ客が来たって俺にはなんも出来ないし」

 先日なかば騙すような形でメガネを作ることになったトキは、高額な請求のためにバイトをすることを余儀なくされている。大きなため息をついたトキは足の踏み場のない物置部屋を見回してもう一度だけメジロを睨み付けた。


 トキがひたすら掃除を続けて数時間。大分床が見えてきたあたりでドアベルの音が鳴り響いた。本日初めての来客に意識が持って行かれる。今日の成果は上々だろうと決め込み、懐に入れておいた青いレンズのメガネを取り出す。一度大きく深呼吸をして、そのメガネをかけ、物置部屋を出た。

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