4話 ep.4
女の子の手の中でくるくると模様を変える糸が面白くて、じっと見つめていた。すると、女の子がずいっとわたしの目の前に両手で張り詰めさせた糸を差し出した。
「えっ、あの……」
「とって」
「え……?」
女の子の望みが分からなくて、女の子の顔と毛糸を交互に見やる。戸惑ったわたしの表情を見て、女の子はどこかつまらなさそうに眉根を寄せた。
「あやとり、知らないの?」
「ご、ごめんなさい」
「まあいいわ。アタシ、ランっていうの。あなたは?」
「スズ……」
「スズね。いい? 今からアタシが言う場所に指を引っかけて、とるの。出来るでしょう?」
ランは強引に話を進めていく。でも、いつだって優柔不断なわたしにとってはその温度感が丁度良かった。ランの言葉に頷いて、わたしは人生初めてのあやとりを始めた。何度か繰り返しているうちに、ランがやりたいことが分かるようになってきて、ちょっとずつかみ合うようになってきた。それがなんだか楽しくて、人と遊ぶってこんなに楽しかったんだって思い出す。
「上手! 上手じゃないスズ! 良い感じ!」
「あっ、あり、がと……」
「もー! もっと胸張りなさいよー!」
きゃっきゃとはしゃぐランを見ていると胸の奥がむずがゆい感じがして落ち着かなくなる。でも、それすらも心地良いのだから、不思議だ。この時間がずっと続けば良いのに。そんな風に思ったすぐ後、公園にチャイムが鳴り響く。十七時の合図だ。
「あ……」
「もうこんな時間かぁ……帰らなくちゃいけないわね」
「そう……だね……」
「なぁにしょぼくれた顔してるのよ! これ、あげるわ」
そう言ってランはあやとりの糸をわたしに手渡した。
「練習しといて。次はもっと難しい技をやりたいから」
次、という言葉に胸が高鳴るのを感じる。次があるのか。次を期待して良いのか。手渡された毛糸を両手でギュッと抱えて、何度も何度も頷く。
「ランがびっくりするくらい、上手になってくるね」
「あら! 望むところよ!」
そう言って、わたしたちは家に帰った。
「それ以来、ランとは会えてないんです」
「その、ランちゃんと遊んだのはいつ頃?」
「……二年前」
「え⁉」
子どもにとっての二年が、どれだけ長いものか。トキは予想外の期間に驚きの声を漏らす。数ヶ月ならばまだしも、年単位で会えないなんてあり得るのだろうか。
「学校でも、塾でも、ランのことを聞いて回ったの。でも、誰もランのこと知らないみたいで。……同い年で、近くに住んでるって言ってたのに」




