4話 ep.2
お気に入りのフレームを見つけてご機嫌な少女ははっと我に返る。急に動きを止め視線を落とした少女にトキは首を傾げて尋ねる。
「どうかした?」
「ぁ……の……ごめんなさい」
絞り出された謝罪に面食らい少女の顔を見つめると、よりいっそう縮こまってしまう。ぎゅっとつむった目を開いて顔を勢いよく上げた少女はトキをしっかり見つめて口を開いた。
「お金、もってなくて……なのに、お店入って来ちゃった……ごめんなさい……」
「ああ、そんなことか。大丈夫。俺が入って良いよって言ったんだから」
「で、でも……」
「ゆっくりしていっていいよ。どうせいつでも暇だから。うちは」
トキの言葉にようやく全身の力を抜いた少女はかけていたフレームをそっと外した。
「これ、すごく可愛い。でも、わたし、目はいいから、かけられない、です」
「そっか。もう少しお姉さんになったらサングラスとかもいいかもしれないね。ほら、俺も色つきのメガネかけてるんだけど」
肩を落とした少女に自分がかけているメガネを指しながら話をする。
「おしゃれだったり、光を遮って目を守るためだったり、目が悪くなくても好きなフレームをかけられる方法はあるから」
「お兄さんは、何用のメガネなの?」
「俺は……練習用、かな?」
「なんの?」
「うーん……お仕事のための?」
自分のメガネの用途は上手く説明出来ず口ごもる。不思議そうに首を傾げた少女だったが、それ以上は言及することなく頷いた。
「メガネ屋さんだもんね。メガネかける練習ってことだね」
「そ、そうそう。ここ、座ってて。飲み物持ってくるよ。どれがいい?」
少女を席に案内し、ドリンクのメニュー表を見せる。上から下まで視線を巡らせた少女がリンゴジュースを指さす。
「はい、リンゴジュースですね。少々お待ちください」
会釈をし、ドリンクを用意しにバックヤードへ戻る。ドリンクサーバーのボタンを押して、出来上がるまでの間にメジロに声をかける。
「メジロさん」
「いいですよ」
名前を呼んだだけで帰ってきた了承の返答にトキは目を丸くする。驚いた顔を見せたトキを愉快げに見つめたメジロはにっこり笑って口を開く。
「最後まで、お話を聞いてきてください」
「分かりました」
出来上がったリンゴジュースをトレイに乗せ、トキは背筋を伸ばして少女のもとへ向かったのだった。




