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オプティシャン・エニグマ  作者: 塚口悠良
第3話:記録と記憶
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3話 ep.3

 メジロから受け取った試験枠を掛け、周囲をぐるりと見回した老爺は大きく目を見開いて動きを止める。

「いかがですか。よく見えるのでは?」

「そ、う……だな」

「それが、我々メガネ屋の言う”見えている”ということです」

 老爺は己の生活に支障がないと思っていた視界をくっきりと鮮明に見せられ困惑していた。若い頃に見ていた景色は確かにこうだった気がする。そんな風に納得せざるを得ない。メジロの顔を見た老爺は先の説明を促すように試験枠を外し、メジロに手渡した。

「お探し物があるとか。ウサギの置物でしたかね」

「ああ。孫からのプレゼントだ」

「その探し物にも、助力できる品がございます。まずは試していただいて、ご納得いただければご購入、という形で構いません。うちの商品、試して行きませんか?」

 メジロの提案に頷いた老爺は、案内される通り測定室へ入っていった。


 カルテを作るため、タブレットを老爺に渡し、数秒様子を見る。淀みなく操作を始める老爺を見て、メジロは一度測定室を後にした。

「トキくん、今日は測定室のそばで見ていてください」

「え、なんで」

「測定は私がやりますが、内容は分かっていた方がご案内しやすいでしょう」

 突然の指示に戸惑ったトキだったが、最近はお客さんが来たらまず声を掛ける役をこなしていることもあり、素直に従うことにした。測定室の入り口付近でフレームを磨きながらメジロの測定の様子を見始める。

「カルテのご記入ありがとうございます。それでは、内容確認いたしますね」

 メジロは老爺が答えた内容にざっと目を通し、項目を口頭で確認していく。

「ヒイラギ様、まずは見え方について、確認させていただきます」

 そうしてメジロはヒイラギに遠くの見え方、手元の見え方、像にブレがないかなどの自覚症状を尋ねる。数値として出ている情報と本人の認識をすりあわせ、アプローチを考えるためだ。ヒイラギは普段の生活で大きく困ったことはなかったが、先ほどの試験枠でよりよく見える状態を知った。そこからメガネが必要であることを知ってもらう必要がある。

「手元はよく見えていますよね。新聞や読書の時、特にお困りではないと思います」

「ああ。わしは老眼ではないからな」

「……そうですねぇ」

 ヒイラギの言葉に笑みを浮かべたメジロはもう一度先ほど掛けてもらった試験枠を手にした。

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