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オプティシャン・エニグマ  作者: 塚口悠良
第3話:記録と記憶
13/24

3話 ep.1

 Optician”ENIGMA” そこは、顧客が求める視界を、見たいと望むものを見せるメガネ屋。今日も今日とて閑古鳥が鳴いている店内。トキがディスプレイのフレームを整えていると、ドアベルが来客を知らせる。視線をドアの方に向けると、そこには一人の老爺が立っていた。老爺は視線を巡らせ、トキの姿を見つけるや否や即座に進み出て、口を開いた。

「ワッフルは知らんか?」

 突然問いかけられた言葉を咀嚼できず固まったトキに老爺はもう一度言葉を発する。

「ワッフルを見んかったか」

「わ、わっふる……は、見てない、ですね」

「ふむ……ここにあるような気がしたんだがなぁ……」

 トキの返答に眉を下げた老爺はぐるりと店内を見回す。

「置物は置いていないのか?」

「お、置物ですか……?」

 老爺の欲している物が全く分からず、トキは咄嗟にかけているメガネを外そうかとテンプルに手をかけたが、すんでのところで思いとどまる。分からないからと自分の能力に頼っていては、何も変わらない。改めて老爺の顔をしっかりと見つめて疑問を口にする。

「ここはメガネ屋ですが、お探しのものはどんなものでしょう」

「ワッフルというウサギがおるのだが、そのウサギを孫は一等好いておってな」

「ん、あぁ……はい……?」

 会話のキャッチボールが上手くいかなさすぎて目眩がしそうだったけれど、めげずに会話を続ける。

「そのワッフルというウサギのグッズをお探し……なんですか?」

「ワッフルの粘土細工を孫からもらってなぁ。でもそれが急になくなってしまったんじゃ」

 どれだけ話を聞いてもメガネに関する話題が出てこないことに焦りを覚えるトキは再度この店のことを伝えてみることにする。

「この店は、メガネを取り扱っている店なんですが、探し物はメガネ関連の置物ですか?」

「ん? メガネ? いや、ワッフルの置物は孫が粘土で作ったもんだ」

「……ハンドメイドということですか?」

「ああ。そうだな」

 予想外の返答にがっくりと肩を落としたトキは、どう話をして帰ってもらおうかを考え始める。迷い込んできたにしても手作りの粘土細工ならば店に置いているはずもない。老爺の意図は未だ読めないままだ。

「気が付いたらここにいたものだから、もしかしたらここにあるのかもしれないと思ったんだがなぁ……」

 眉尻を下げた老爺に心を痛めつつトキは背後のカウンターに視線をやる。すると、丁度加工室から出てきたメジロが歩み寄って来ている最中であった。

「お客様、なにか見え方でお困りのことはございませんか?」

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