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オプティシャン・エニグマ  作者: 塚口悠良
第2話:思いの重み
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2話 ep.6

 サクラがフレームを選んでいる間にカウンターに戻ったメジロは、真剣な表情でサクラを見つめるトキに声をかける。

「どうかしましたか?」

「……いや、店に入ってきたときと、顔つきが全然違うなって」

「そうですね。覚悟が決まったようですから」

「覚悟、か……」

 メジロが手早く伝票の用意をしていると、フロアでサクラが顔を上げた。それに合わせてメジロはトレーを持ちフロアに戻る。カウンターからメジロを見送ったトキはそっとメガネを外し、サクラを見た。

『この子のためにも、本当のことを知らなくちゃ』

 毅然とした表情と違わないその心に眉根を寄せトキはメガネをかけ直した。


 サクラが決めたフレームを受け取り、メジロは今後の流れについて話を進める。メガネを作っている間は店内で待つことにしたサクラは椅子に深く腰掛けて息をついた。加工室に入ったメジロはすぐさま作業に移る。レンズを削り、手際よくメガネを作りあげ、仕上げた。出来上がったメガネをトレーに乗せ、サクラのもとへ向かう。

「では、こちらお掛けください」

 出来上がったメガネは、ブラウンカラーのオーバルフレームにレンズのうすピンク色がコントラストを作っていた。苦悩に沈んでいたサクラの表情も、レンズの色で彩られどことなく明るく見える。メジロが会計を伝えると、悩みながらもカードを取り出し、分割払いを申し出たサクラは、それでも背筋を伸ばして座っていた。


 支払いを終えたサクラは、どこか晴れやかな表情で店を去った。店外まで見送ったメジロは椅子の位置を元に戻しているトキを見やる。

「おや、ありがとうございます」

「……いえ」

「何か引っかかることが?」

 浮かない顔をしたトキにメジロが尋ねると、トキは目を伏せたままに口を開く。

「かけない方が、いいのかなって」

「……苦しんでいたんでしょう?」

「でも、この力に頼って生きてきたんだって、まざまざと感じて」

 メガネをかけた状態では、人とまともに会話もできない。そう悩むトキにメジロは笑みを浮かべる。

「悩み続けるといいですよ。あなたの特性です。生かすも殺すもあなた次第。選ぶ権利はあなただけにあるのだから」

 メジロの言葉にグッと拳を握ったトキは、なにも言わずに物置部屋の掃除に戻った。

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