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オプティシャン・エニグマ  作者: 塚口悠良
第2話:思いの重み
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2話 ep.5

 ふとサクラは目を覚ました。身体を起こし、目の前に座っているメジロをぼおっと見る。

「お疲れ様です」

「わ……わたし、寝て……?」

「ご安心ください。これもヒアリングの一環ですから」

 メジロはいつの間にか意識を失っていたことに戸惑うサクラをなだめ、レンズケースからピンク色のレンズを取り出す。

「大切な方の心を知りたい、でしょうか」

「……え」

「あなたのことを本当に愛しているのか。それを知りたい、そんな風にお見受けしました」

 口元だけで微笑んだメジロはレンズホルダーに二枚のレンズをはめ込み、サクラに手渡す。

「このレンズは視界に映る人物が自分のことをどう思っているかが分かるものです」

「そんな、ものが……」

「百聞は一見にしかず。うちのスタッフをお貸ししますから、ご覧になってください」

 レンズホルダーを持って測定室を出たサクラはカウンターに立っているトキをレンズ越しに見た。ピンクが掛かった視界とは別にトキの周囲にうっすらと揺らめくオーラのようなものが見える。

「これは……」

「その周囲のゆらめきが大きければ大きいほど、あなたへの気持ちが強いということになります。いかがですか?」

 メジロの言葉にはじかれるようにレンズをどけたサクラはいつもの世界にそんなゆらめきが存在しないことを確認する。手品かなにかかと疑う気持ちがまったくないわけではないが、なぜかサクラは直感的にこれが本物だと信じられてしまった。

「……これで確かめて、彼の気持ちがもう私を向いていないんだとしたら……」

 震える手からレンズがこぼれ落ちてしまわないように、レンズホルダーをメジロに手渡す。

「この子と、二人で生きていきます」

「……詳しいご説明をいたしますのでこちらへどうぞ」

 サクラの言葉には応えず、メジロはフロアのテーブルを指す。対面で座り、価格の書かれた冊子をテーブルに広げる。

「当店のレンズは特別製です。ですので、価格も相応のものになっています」

 サクラに用意したレンズの種類を指し示しながら、メジロは説明を続ける。そこにはレンズ一組二十万円からという記載がある。

「あなたの望みであれば、このレンズに頼らなくとも良いかもしれません。それでも、あなたはこのレンズをお求めになりますか?」

「……きっと、聞けないから。それに、聞いてしまったら、たぶん彼は優しいから、嘘をつかせてしまう。区切りを、つけたいんです」

「かしこまりました。では、ご用意いたします。お好きなフレームをお選びください」

 サクラは小さく頷いて、フロアを物色し始める。サクラの様子を窺いながら、メジロはカウンターまで戻った。

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